陰性U波 (NU) の意義ならびに出現機序を考察するため, 左室容量負荷疾患である大動脈弁閉鎖不全症 (AR) 32例, 僧帽弁閉鎖不全症 (MR) 31例を対象としてNUの出現頻度, 心電図所見, 心エコー図所見を比較検討した。また心房細動例にて先行RR間隔とNUとの関連性を調べた。
NUの出現頻度はAR群68.7%, MR群6.4%で, この差はその他の心電図所見, 心エコー図所見より冠循環を含めた血行動態の相違に基づく心構築上の変化によるものと考えられた。先行RR間隔の延長に伴い, AR合併例ではQauは正相関, NUは増強し逆相関を示したが, 非弁膜疾患ではいずれも一定の傾向を示さず, 収縮期血圧よりも拡張期動態の関与が大なることが示唆された。
以上の結果よりNUは単なる心拡大では出現せず, 虚血性心疾患にみられるNU同様, 心内, 中層の虚血に基づくものと考えられ, Purkinje系の中枢側と末梢側で傷害に程度の差が生ずると仮定すれば, Purkinje再分極説で説明しうる。
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