心筋梗塞患者と冠動脈形成術を施行した狭心症患者を対象に, 心電図所見による責任冠動脈病変の診断能を検討した.前壁誘導の心電図所見による左冠動脈前下行枝の中枢部病変に対する診断能 (感度, 特異度, 陽性予測値) において, I, aV
LのST上昇はそれぞれ89, 58, 62%, V
1のQS波は62, 83, 72%であった.後壁誘導では, V
1のR/S>1は左冠動脈回旋枝の診断に対して50, 90, 50%であった.下壁誘導では, II, III, aV
FのST上昇かつaVLの陰性T波は右冠動脈の診断に対して90, 83, 95%であった.右室誘導では, 体表面電位図のV
4Rに相当する誘導のST上昇は, 右室梗塞の診断に対し100, 93, 91%であった.診断能には, 第1対角枝の分岐, 後下行枝の優位性, 正常亜型, 自然再開通の有無が関与すると考えられた.また, 高位側壁の誘導としてV
4の1肋間上方, 後壁誘導にはV
6の1肋間下方の誘導点を追加することで, 責任冠動脈病変部位の診断精度の上昇の可能性が示唆された.
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