心室細動 (VF) はスパイラル型リエントリーの興奮波面の分裂により生ずるとされるが, その発生基質に関する臨床的検討は少ない.本研究では3代で9人もの若年性突然死を認める特発性VFの一家系においてVFの発生基質を心室再分極の不均一性と動的不安定性の両面から検討した.【方法】対象は特発性VF3例, 心電図胸部6誘導においてQRSの始まりからT波の頂点までの時間 (QTp) , T波の終末までの時間 (QTe) , T波の頂点から終末までの時間 (Tp-e=QTe-QTp) を測定し6誘導の平均値を求めた.QTeの最大値と最小値の差をQTe dispersionとして求めた, 右室中隔より単相性活動電位 (MAP) を記録し, 330msから750msまで6.段階の刺激間隔 (CL) で定常状態における90%再分極時の単相性活動電位持続時間 (MAPD
90) を測定した.早期刺激 (S1-S2) 法により先行拡張期間隔に対するMAPD
90の回復過程を求めた (S1-S1=600ms) .基礎心疾患のない8例 (28±6歳) を対照とした.【結果】QT
cP時間は対照群で310±19ms, VF群で308~324msと両群間で差を認めなかったが, QT
ce時間は対照群で408±21ms, VF群で426~473msとVF群で延長傾向を認めた.QT
ce dispersionは対照群で17±7msであったのに対しVF群では40~82msと著明に増加していた.T
cp-eは対照群で98±12ms, VF群119~149msとVF群で著明に延長していた.VF群のMAPD
90はいずれのCLにおいても対照群に比し延長傾向を示した, CL600msにおけるMAPD
90は対照群で258±21ms, VF群で262~274msであった, MAPD
90の回復曲線の最大傾きは対照群で0.82±0.38であったのに対し, VF群では1.83~2, 00と急峻な値を示した, 【結語】心室再分極の不均一性の増大と動的不安定性を基質とする家族性特発性VFが存在することが示唆された.
抄録全体を表示