急性心筋梗塞の予後を規定する因子には, 左室駆出率, 梗塞責任冠動脈開存率, 心筋viabilityの有無などがある.非侵襲的な検査法のなかで, 安静時12誘導心電図は最も簡易で繰り返しできる有用な検査法である.この安静時12誘導心電図を用いて心筋梗塞の予後を判定するいくつかの研究が今までに報告されている.そのなかで, 異常Q波および陰性T波は, 経過を追ってその変化を観察できる所見である.異常Q波に関しては, 急性期には異常Q波が出現しない非Q波心筋梗塞のほうがQ波心筋梗塞より長期予後が良好である.そして, Q波心筋梗塞のなかで, Q波が退行する症例のほうがQ波が残存する症例より心機能の改善が良好であると報告されている.しかし, Q波の退行は長期予後を改善する因子ではないという報告もある, また, 陰性T波は, 急性期には早期に出現する症例のほうが心機能や長期予後が良好であるといわれている, そして, この急性期に出現した陰性T波が早期に消失する症例のほうが持続する症例より心機能の改善が良好であるばかりでなく, 長期予後も良好であると報告されている.さらに, 慢性期のQ波の退行は長期予後の規定因子ではないが, 陰性T波の消失の有無は長期予後規定因子の一つであると報告されている.そして, 慢性期のQ波の退行, 陰性T波の消失の所見は心筋viabilityの存在を示唆する所見と考えられている.このように安静時12誘導心電図は, 最も簡易な非侵襲的検査であるばかりでなく, これによって心筋梗塞後の心機能の改善, 長期予後を予測できる有用な検査法でもある.Q波, 陰性T波などの所見は急性期から慢性期まで経過を追って観察することが重要である.
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