我が国では病院外心停止傷病者 (以下OHCA) の救急医療に対する科学的検証がなされてこなかった.そこで1998年5月以降, 蘇生目的で搬送されたOHCAを対象にウツタイン様式に準拠して地域網羅的前向き疫学調査を兼ねた客観的検証を実施した.居住人口約880万人, 府域面積1, 892km
2の大阪府において, 2004年4月までの6年間の調査から, 心原性OHCAは人口10万人当たり年間平均29.2の発生数となった.このうち救急隊が接触した時点で心室細動 (VF) を確認する割合は11.0%であった.虚脱を市民に目撃された心原性OHCAの最多発生場所は家であるが, VFを確認する割合は職場が最も高い.最多発生時刻は午前9時と午後7時の2峰性をとる.VFは60~69歳に最も多く, 次いで50~59歳の男性であった.目撃された心原性VFの1年生存が最も良好で, 虚脱から除細動までの時間短縮により1年生存率は改善傾向にあった.一方, 府下高槻市 (居住人口約36万人, 市域面積105km
2) における搬送されたすべてのOHCAの施設別発生頻度を調査したところ, 最も高い施設は鉄道駅構内で, 次いで病院, ゴルフ場, 老人ホーム, 競技場の順となった.救命率改善には救急隊員が実施する隊活動の高度化と相まって, 地域社会の救命への取り組み意識の向上が期待される.
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