チトクロームP450 (CYP) 2D6はβ遮断薬や抗不整脈薬の代謝に関与するが, 代謝活性の個体差がこれら薬物の効果に影響する薬物代謝酵素として知られる, すなわち生体内CYP2D6活性には遺伝的多型があり, 活性が欠損するヒトをpoor metabolizer (PM) とよぶ.PMの頻度には人種差があり, 白人ではおよそ10%であるのに対し, 中国人や日本人では1%未満と低い.しかし, 中国人や日本人ではPMが少ないにもかかわらず, PMを除いた集団で比較すると生体内CYP2D6活性の平均は中国人や日本人では白人よりも低い.この原因として, 中国人や日本人には活性の低い変異型CYP2D6 (
CYP2D610) が高頻度に存在するのに対し, 白人ではきわめてまれであることが考えられる.肝代謝型β遮断薬のメトプロロールやプロプラノロール薬物動態試験では
CYP2D610のホモのヒトは
CYP2D61のホモのヒトに比べβ遮断薬のクリアランスが低下し, 血中濃度の上昇が認められた.その他, 日本人PMの原因となる変異型CYP2D6や他の変異, またCYP2D6で代謝されるいくつかの循環器治療薬について臨床薬理学の観点から留意すべき点を述べる.
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