【目的】発作性心房細動 (発作性AF) に対する予防効果をアンジオテンシン変換酵素阻害薬 (エナラプリル; 5mg/日) と他剤との併用の有無で比較し, さらに併用療法における有効例の臨床像ならびに構造的リモデリング進展の予防効果も検討した.【方法】対象は有症候性発作性AF 334例 (男性228例, 女性106例, 年齢69±12歳) であり, エナラプリル併用群 (A群) ならびに非併用群 (B群) に振り分けて比較した.第一選択薬としてジソピラミド (300mg/日) , アプリンジン (60mg/日) , シベンゾリン (300mg/日) を, AF再発例に第二選択薬としてピルジカイニド (150mg/日) , フレカイニド (150mg/日) , ベプリジル (150mg/日) を, AF再々発例に第三選択薬としてアミオダロン (200mg/日) あるいは他剤1群抗不整脈薬を投与した.本研究の平均観察期間は60±35カ月であった.【結果】 (1) 抗不整脈薬別の再発予防効果: 第一選択薬群ならびに第二選択薬群では, いずれの薬剤でも両群に有意差を認めなかった, 一方, 第三選択薬群では, アミオダロン内服後の観察期間12カ月ならびに24ヵ月目の非再発率がA群80%, 64% (n=25) , B群45%, 30% (n=33) で, B群に比しA群で有意に高率であった (p<0.05) . (2) 有効例の臨床像: AFの病歴期間が3ヵ月未満例 (A群; n=35, B群; n=69) における観察期間48カ月目の慢性化阻止率はA群97%, B群83%で, B群に比しA群で有意に高率であった (P<0, 05) .基礎心疾患を有する例 (A群; n=38, B群; n=64) における観察期間60カ月目の慢性化阻止率はA群94%, B群74%で, B群に比しA群が有意に高率であった (P<0.05) , 高血圧を合併した例 (A群; n=42, B群; n=61) における観察期間24カ月目の慢性化阻止率はA群96%, B群83%で, B群に比しA群が有意に高率であった (p<0.05) . (3) 構造的リモデリング進展の予防効果: 複数の1群抗不整脈薬とAFが再発したため投与したアミオダロンとの併用例 (A群; n=25, B群; n=33) における治療開始前後 (平均観察期間38±22カ月) の左房径は, A群ではそれぞれ39, 1±5.Omm, 41.0±5.Ommで有意な変化を認めなかったが, B群では35, 2±6.2mm, 40.2±63mmで, 治療開始前に比し治療開始後においては有意に高値であった (p<0.01) .【結語】発作性AFにおけるRAAS阻害薬の併用療法によりAFの慢性化阻止効果が示され, 特に病歴期間の短い例 (3カ月以内) , 基礎心疾患例ならびに高血圧合併例にその有効性が期待される.また, アミオダロンとの併用療法により, AFの再発予防効果のみならず心房筋における構造的リモデリング進展の予防効果も期待される.
抄録全体を表示