心電図
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29 巻, 2 号
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Editorial
第25回 日本心電学会学術集会 シンポジウムより
心房細動の病態と治療の進歩
  • 小松 隆, 中村 元行, 奥村 謙
    2009 年 29 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/13
    ジャーナル フリー
    発作性心房細動(AF)に対する多剤抗不整脈薬療法の予防効果をエナラプリル(5mg/日)ならびにプラバスタチン(10mg/日)併用の有無で比較した.対象は12ヵ月以上の追跡調査が可能であった発作性AF319例(男性221例,女性98例,年齢68±10歳)であり,プラバスタチン併用(-)ならびにエナラプリル併用(-)群(I群,n=191),プラバスタチン併用(-)ならびにエナラプリル併用(+)群(II群,n=81),プラバスタチン併用(+)ならびにエナラプリル併用(-)群(III群,n=29),プラバスタチン併用(+)ならびにエナラプリル併用(+)群(IV群,n=18)の4群に振り分け,レトロスペクチブに観察期間50±34ヵ月における患者背景因子,再発回数,経時的洞調律維持率を比較した.患者背景因子においては,IV群と他群における年齢,基礎心疾患,病歴期間に有意差を認めなかった.抗不整脈薬療法後の再発回数は,I群が1.6±2.0回,II群が2.4±1.9回,III群が1.4±1.8回,IV群が0.6±0.9回であり,IV群が他群に比し有意に低値であった(p<0.05).観察期間12ヵ月,36ヵ月,60ヵ月,90ヵ月,120ヵ月目の各群における洞調律維持率はI群が88%,83%,78%,75%,73%,II群が96%,88%,79%,77%,75%,III群が100%,97%,91%,91%,86%,IV群が100%,100%,100%,94%,94%であり,観察期間120ヵ月目の時点でI群に比しIV群で有意に高率であった(p<0.05).発作性AFに対するエナラプリルとプラバスタチンの両剤併用療法は,慢性化阻止効果のみならず再発予防効果も期待され,upstream治療としての有効性が示唆された.
  • 村上 慎吾, 辻前 賢司, 鈴木 慎悟, 倉智 嘉久
    2009 年 29 巻 2 号 p. 126-132
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/13
    ジャーナル フリー
    心房細動(AF)に対する抗不整脈薬の有効な薬物像を探るためにヒト心房活動電位モデルを用い,遅延整流K+電流の速い成分(IKr)の遮断薬と非常に速い活性化過程をもつ遅延整流K+電流(IKur)の遮断薬の遮断様式が,どのように心房の活動電位延長作用に対して影響をもつかを考察した.まず最初に,三つの薬物(ドフェチリド,キニジン,ベスナリノン)の特徴的なIKr遮断様式がもつ心房活動電位延長作用の刺激頻度依存性について,Courtemancheらによるヒト心房活動電位モデルを用いて検討を行なった.オリジナルのモデルの遅延整流K+電流の遅い成分(IKs)に遅い活性化成分を導入すると,ドフェチリド,キニジンの逆頻度依存性が再現された.また,ベスナリノンは明確な逆頻度依存性を示さず,実験結果と一致した.慢性AFモデルを使ったIKur遮断特性の検討では,電位時間依存性の場合に遮断進行が速いほど活動電位延長作用が強くなり,活動電位延長作用は遮断様式に依存した.実験での薬物効果の確認では短いテストパルスが必要とわかり,薬物作用の検討にモデルの使用が有効であることが示された.
  • 土谷 健
    2009 年 29 巻 2 号 p. 133-140
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/13
    ジャーナル フリー
    【目的】左房不整脈基質の有無と拡大肺静脈隔離術(CPVI)の成績との比較検討.【対象と方法】対象は発作性心房細動(PAF)29例,持続性AF(PeAF)4例の計33例(年齢60±10歳).EnSite version 6.0Jを用いて,洞調律(SR)時にcontact bipolar記録法により左房voltage mapを行い,低電位領域(LVZ,<0.5mV)を同定.AF(n=26)またはSR中(n=7)にCPVI施行し,必要に応じ線状通電やCFAE通電を追加(LA通電).【結果】23例では左房にLVZを認めなかったが(Group 1),10例では中隔(7例),前壁(4例),後壁(4例)にLVZを認めた(Group 2).PAF/PeAF例はGroup 1で21/2例,Group 2で8/2例.AF中に通電したGroup 1の20例中17例ではCPVI単独で,2例ではLA通電,1例では中隔への通電でAF停止し,AF中に通電したGroup2のうち6例中2例ではCPVI単独により,2例ではLA通電によりAF停止.2例はAF停止せず.平均4.3ヵ月の経過でGroup 1と2の1例と2例で再発.【結語】PAF,PeAFに関係なく左房本体にLVZが認められれば主に肺静脈がAF持続に関与するため,no low voltage no LA body AFといえる.左房本体にLVZが認められればCPVIでは不十分な例がある.
原著
  • 立田 顕久, 山田 辰一, 小原 義宏, 市川 篤, 林 哲朗, 川島 真, 萩原 誠久
    2009 年 29 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/13
    ジャーナル フリー
    【目的】自覚症状出現時に発作前後の心電図を記録するループ式イベント型心電計の有用性と問題点について検討した.【対象および方法】2004年1月~2006年9月までに当院を受診し,ループ式イベント型心電計(CARD GUARD社製)を装着した142例.記録中の自覚症状の出現率,自覚症状と心電図変化,イベントボタンを押す前後での心電図変化の有無について検討した.【結果】検査時に自覚症状が出現し,心電図記録ができたのは420イベントであった.内訳は動悸59.3%,胸痛19.0%,息切れ7.4%,めまい9.0%,その他5.2%であった.記録された心電図のうち,59.5%でイベントボタンを押す前からの記録が自覚症状時の心電図評価に有用であった.【結語】イベントボタンを押す前からの記録が診断上意義を有した例が59.5%あり,ループ式イベント心電計は症状出現時の心電図評価法として有用と思われた.
Editorial Comment
原著
  • 藤原 昌彦, 仲村 尚崇, 中司 元, 辛島 詠士, 樋詰 貴登士, 平松 伸一, 小田代 敬太, 丸山 徹, 赤司 浩一
    2009 年 29 巻 2 号 p. 148-154
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/13
    ジャーナル フリー
    Brugada症候群は就労世代の男性の突然死を引き起こす可能性があるため,循環器領域のみならず産業衛生や予防医学の面からも大きな問題となっている.近年携帯型のイベントレコーダーが普及しつつあるが,Brugada症候群の管理面における有用性は明らかでない.今回無症候性でBrugada型心電図を呈する男性8名(平均年齢52.4±8.7歳)を対象に,イベントレコーダー(EP-202)で胸部V2誘導と高位肋間での心電図を記録し,使用法を説明した後,定時的に胸部V2誘導心電図の自己記録を行った.イベントレコーダーで記録された高位肋間でのSTレベルは通常の胸部V2誘導より有意に増高し,(0.163±0.083 vs. 0.119±0.065 mV, p<0.006),胸部V2誘導でのSTレベルは明らかな日内変動を認めなかった(p>0.235).ただし20時と就寝前の比較では,その間に夕食を取った5例で就寝前にSTレベルが有意に増高していた(0.170±0.045 vs. 0.110±0.041 mV, p=0.004).以上の結果より,イベントレコーダーは被験者が正確に定時的な胸部での心電図記録を行うことにより,Brugada症候群のリスク管理に一定の役割を果たしうると考えられた.
Editorial Comment
症例
  • 齋藤 章宏, 金古 善明, 中島 忠, 太田 昌樹, 入江 忠信, 加藤 寿光, 飯島 貴史, 秋山 昌洋, 間仁田 守, 伊藤 敏夫, 谷 ...
    2009 年 29 巻 2 号 p. 156-161
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/05/13
    ジャーナル フリー
    先天性QT延長症候群(LQTS)では,QTcが長いほど予後不良といわれる.【症例1】28歳,男性.2006年5月の朝,会話中に心室細動(VF)を発症した.QTc445msecであったが,イソプロテレノール負荷試験にてQTU延長を認め,LQTSと診断した.【症例2】36歳,女性.2006年1月の昼頃,軽労働中にVFを発症した.QTc448msecであったが,イソプロテレノール負荷にてQT延長を認め,LQTSと診断した.【症例3】15歳,女性.2006年,長距離走中に心肺停止した.QTc 410msecと正常であったが,エピネフリン負荷でQTc 667msecと延長し,LQTSと診断した.3例とも,今回のVF発作が初発症状で器質的心疾患,Brugada症候群を含む特発性VFは否定的であった.3症例全てに植込み型除細動器の植込みを,症例1,3にβ遮断薬を投与した.【結語】QTcがボーダーライン上のLQTSにもVFは発症する.
Editorial Comment
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