不安定狭心症 (UA) 35名, 安定狭心症 (SA) 17名でHolter法による入浴, 食事, 排便, 排尿時のST-T変化出現率を比較した。またシャワー浴試験, 食事試験をUA患者で別途に行い, ST-T変化出現の誘因を検討した。Holter法によるST-T変化陽性率は入浴UA13/22 (59%) , SA1/15 (7) , 食事UA9/24 (38) , SA1/14 (7) , 排便UA5/17 (30) , SA0/11 (0) , 排尿UA7/28 (25) , SA0/11 (0) で, 日常動作によるST-T変化陽性はUAと非常に密接な関係にあった。排便, 排尿によるST-T変化陽性は夜から早朝に多く (各々60%, 75%) , 冠スパズムの関与する異型狭心症の発症時間帯と似ていた。シャワー浴や食事でのST-T変化陽性率は単に湯を浴びることや食事摂取することあるいは軽労作単独ではその率は低く, 湯と軽労作あるいは食事摂取と軽労作など複合行為で陽性率が増大した。しかし, これら試験後のDP (収縮期血圧と心拍数の積) は試験前に比べ有意に上昇することはなかった。従ってUA患者の日常動作 (シャワー浴, 食事, 排便, 排尿) によるST-T変化出現の原因として, 心筋酸素需要増大よりむしろ, ほかの機序 (おそらく冠スパズム) が主役を果していると考えたい。
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