ヒトにおいてP波の体表面電位図の検討を行った。対象は正常群22例, 右房負荷群12例, 左房負荷群9例の計43例である。電位図上, すべての例で心房の脱分極相では一対の極大と極小が存在した。正常群では極大は最初, 胸骨付近に出現し, その周囲に滞まり, その後左鎖骨中線の左側へ移動しP波の終了まで左胸部~背部に留まった。極大が左鎖骨中線の右に留まる時間を前胸部極大持続時間 (A) , 左側および背部に留まる時間を左極大持続時間 (B) , 極大が左鎖骨中線を越える時期を極大移行期 (C) と仮に名付け, これらのパラメーターについて分析を行った。正常群の (A) は32±11msec, (mean+S.D.) , (B) は38±6msec, (C) は51±12msecであった。右房負荷群では (A) の延長, (B) の短縮, (C) の遅延が認められ, 左房負荷群では (B) が正常に比べ長かった。これらの所見は統計学的に有意であった。したがって前胸部極大は右房興奮優勢を, 左極大は左房興奮優勢の時期を反映していると思われた。
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