心電図
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33 巻, 5 号
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Editorial
原著
  • 嶋根 章, 岡嶋 克則, 木内 邦彦, 横井 公宣, 寺西 仁, 青木 恒介, 千村 美里, 津端 英雄, 斎田 天, 宮田 大嗣, 高橋 ...
    2014 年 33 巻 5 号 p. 421-428
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    植込み型除細動器(ICD)の心臓突然死予防効果は,多くの大規模臨床試験で実証されてきた.しかしながら,ICDのショック作動は不適切作動でさえも,予後の悪化と関連すると報告されている.ICDのショック作動の予後に対する影響を明らかにするため,器質的心疾患を有するICD症例253例〔男性79%,平均年齢63±11歳,1次予防36%,平均左室駆出率(LVEF)38±14%〕につき検討した.追跡期間(中央値1,428日)中,適切,不適切ショック作動ともに62例(24.5%)の症例で認め,55例が死亡した(心臓死31例).多変量解析で年齢(ハザード比1.044,p=0.007),LVEF(ハザード比0.969,p=0.011),血清クレアチニン値(ハザード比1.867,p<0.001),心房細動あるいは心房頻拍の既往(ハザード比2.093,p=0.012),適切ショック作動(ハザード比2.777,p=0.001)が全死亡の独立した予測因子であった.一方で,不適切ショック作動は全死亡と関連しなかった.ICDのショック作動が直接生命予後に与える影響は,少ないと考えられる.適切ショック作動は,心室不整脈の再発や新規発症を示す,生命予後不良のマーカーと考えられる.
  • 松田 ひろみ, 伊東 春樹, 土田 博子, 高橋 佳苗, 藤井 綾乃, 田邊 紀子, 波多野 由美, 前田 知子, 阪口 恵美, 山本 享子 ...
    2014 年 33 巻 5 号 p. 429-436
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    2011年3月11日に起きた東日本大地震(東京にて震度5強)が心電図にどのような変化を与えたのか,ホルター心電図から検討した.対象は,地震発生時に当院にてホルター心電図を装着していた患者30名.心拍数,ST変化,心拍変動解析による全周波成分(TF),高周波成分(HF),低周波成分・高周波成分比(L/H),超低周波成分(VLF)について,地震発生の前と後5分間,10分間,30分間における各指標の変化の程度や持続時間ならびに年齢・性別による違いについて調査した.結果は,地震によって心拍数は増加し,STは低下した.TFは地震発生前に比し増加,HFは低年齢層では減少したが高年齢層では増加した.また,L/Hは低年齢層では増加したが高年齢層では減少,VLFは全体的に増加する傾向が見られた.高年齢層においてHFが増加し副交感神経活性の上昇が見られたのは,地震によって前失神状態・驚愕反応に近い状態になったためではないかと推測された.
モデル解析の視点
第28回日本心電学会学術集会 学術諮問委員会提言シンポジウムより 心房細動の薬物療法を再考する
  • 高橋 尚彦, 篠原 徹二, 中川 幹子, 原 政英, 犀川 哲典
    2014 年 33 巻 5 号 p. 442-448
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    CASTから得られたエッセンスは,対象不整脈が心房細動(AF)であっても変わらない.国内外のAFガイドラインにも,“基礎心疾患や心機能低下を有する例では,強力なNa+チャネル遮断薬は使用すべきでない”旨が明記されている.本邦におけるAFに対する洞調律維持療法の現状には,様々な問題点がある.まず,I群抗不整脈薬を長期投与していると,患者はやがて高齢になるため,腎機能をはじめ全身の臓器に加齢に伴う機能障害を生じてくるし,当然,副作用も出現しやすくなる.次に,抗不整脈薬による治療を長期間続けていると,その間にリモデリングが進行し,カテーテルアブレーションに踏み切っても高い成功率が得られない場合がある.最後に,期待されていたdronedaronが本邦では開発が断念されたことである.正常心機能例において,“I群抗不整脈薬が無効であればアミオダロンへ切り替え”という考え方は,現実的ではない.症例を交じえつつ,これらの問題点にいかに対処すべきかについて述べる.
  • 草野 研吾
    2014 年 33 巻 5 号 p. 449-457
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    心機能低下に伴う心不全例では,心房細動(AF)は最も合併しやすい不整脈として知られている.こうした症例に対する不整脈治療は,以前はジギタリスを使用した心拍数調節(レートコントロール)が主流であったが,近年の薬物・非薬物治療の進歩によって,AFそのものに対する積極的な治療(リズムコントロール)が可能となってきており,除細動を行って洞調律に戻しそれを維持するリズムコントロール治療と,AFのままで心拍数調節を行うレートコントロール治療と,どちらが臨床的に有益なのかが現在重要な課題のひとつとなっている.ここでは大規模試験の結果を紹介し,心機能低下を合併したAFに対する治療ストラテジーを考察する.
  • 池田 隆徳
    2014 年 33 巻 5 号 p. 458-465
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    日欧米の心臓病関連学会から「心房細動の管理に関するガイドライン」が発刊され,心房細動に対する薬物治療の指針が示されている.現在のガイドラインは実臨床に即した内容となっており,自覚症状の改善と,合併症としての脳塞栓症の予防を回避する方針を明確に打ち出している.現在の心房細動の薬物療法の中心は,いうまでもなく抗血栓凝固療法である.その上でリズムコントロール療法もしくはレートコントロール療法のいずれかを選択する.レートコントロール療法を選択した場合,ジギタリス製剤やCa拮抗薬よりもβ遮断薬を使用する頻度が増えている.その理由は,β遮断薬は心拍数減少効果が他と比べて優れており,それ以外にも心機能の保護効果やリズムコントロール薬としての効果も期待できるからである.ここでは,心房細動の薬物治療において,セカンドラインに位置付けられるレートコントロール療法のあり方について解説する.
  • 庭野 慎一
    2014 年 33 巻 5 号 p. 466-474
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    心房細動(AF)の不整脈基盤が形成されていく過程,すなわち心房筋リモデリングの機序が解明されるに従って,不整脈基盤形成そのものを抑制する治療概念が注目されるようになった.この治療概念はアップストリーム(上流)治療と呼ばれる.アンジオテンシン刺激は,心筋変性や組織線維化を引き起こす心房筋リモデリングの主要な誘発因子であるため,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)やアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)は,アップストリーム治療薬としての効果が大いに期待された.しかし,ARB/ACEIは実験モデルの組織線維化やAF誘発性を抑制したものの,AF抑制を目標とする大規模試験では有意な成果を示すことができなかった.この結果の乖離の機序は明らかではないが,多様な因子で形成される臨床的AFの不整脈基盤は,単純な治療介入によっては抑制しきれないことを示している.しかし,これらの薬物がリモデリングの初期相を抑制する可能性はあり,発症初期のAFなどに効果が期待できるかも知れない.臨床的に心房筋リモデリングを評価する方法の検討も含め,今後解明していくべき課題である.
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