心電図
Online ISSN : 1884-2437
Print ISSN : 0285-1660
ISSN-L : 0285-1660
33 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
Editorial
第29回日本心電学会学術集会 特別講演
第29回日本心電学会学術集会 学術諮問委員会提言シンポジウム 抗血栓治療薬の現状と未来
  • 小谷 英太郎, 新 博次, 奥村 謙, 井上 博, 山下 武志
    2013 年 33 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    我が国の心房細動治療(薬物)ガイドライン(2008年改訂版)では,非弁膜症性心房細動例の脳梗塞発症予防のため,ワルファリン療法における至適INRは70歳未満で2.0~3.0,70歳以上では1.6~2.6を推奨している.しかし,J-RHYTHM Registryの登録時にワルファリン服用中であった6,932例のINRは,1.6未満が25.4%,1.6~2.59が66.0%,2.0~2.99が35.4%で,70歳未満の例においても70歳以上の例と同様に1.6~2.6が高率であった.我が国の基幹病院においては,年齢にかかわらずINR1.6~2.6を目標に治療が行われている現状が見てとれた.2年間の追跡期間に血栓性イベント(症候性脳梗塞,全身性塞栓症)が140例,入院を要する出血性イベントが157例発生した.観察期間終了時(イベント発症例ではイベント直近)のINRレベル別に1.6未満,1.6~2.0未満,2.0~2.6未満,2.6以上の4群に分けると,血栓性イベントは3.8%,1.1%,0.6%,1.3%(p<0.001),出血性イベントは1.2%,1.1%,1.9%,8.2%(p<0.001),両イベント発症率の合計はINR1.6~2.6で低率で,70歳未満の例においても同様の分布であった.これらの結果より,若年者や一次予防例も含めて,出血性イベントを最小限に抑えつつ血栓性イベントを予防できる適切なINRは,1.6~2.6が妥当と考えられた.
  • 赤尾 昌治, 小川 尚, 益永 信豊, 山下 侑吾, 濱谷 康弘, 高林 健介, 鵜木 崇, 石井 充, 井口 守丈, 中島 康代, 小坂田 ...
    2013 年 33 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    【背景】我が国の心房細動(AF)患者数は増加傾向にあり,有病率は0.6~0.8%程度といわれる.われわれは人口28万人余を擁する京都市伏見区にて,AF患者の全例登録を目指す伏見心房細動患者登録研究を2011年3月より開始し,2012年8月末現在,すでに人口の1%を超える3,277例を登録した.AF患者の心原性脳塞栓予防を目的とした抗凝固療法には,長い間ワルファリンが使われてきたが,新規抗凝固薬が登場して治療法の変革が期待されている.【結果】登録時データを解析したところ,抗凝固薬は1,668例(50.9%)に,ワルファリンは1,596例(48.7%)に投与されていた.新規抗凝固薬のダビガトランは,大半の症例が本剤発売前に登録されたため,72例(2.2%)にとどまった.抗血小板薬は983例(30.0%)に処方され,うちアスピリンが849例(25.9%)であった.ワルファリン処方率は,CHADS2スコアの上昇とともに増える傾向が見られたが,スコア0点でも30.8%に投与されており,スコア4点以上でも59.0%にとどまっていた.アスピリンはどのスコア階層においても20~30%に処方されていた.ワルファリン処方率は年齢とともに上昇するが,80歳を超えるとむしろ低下し,また発作性に比べて永続性症例で処方率は高かった(発作性34.2%,永続性62.0%).CHADS2スコア構成要素のうちでは,心不全と脳卒中が存在するとワルファリン処方率が高く,逆に高年齢,高血圧,糖尿病で低い傾向が見られた.【結論】実臨床の現場において,AF患者に対するワルファリン処方率は低く,適正に使用されているとはいいがたい.今後,新規抗凝固薬の登場による処方動向の変化を追跡していきたい.
  • 小松 隆, 佐藤 嘉洋, 小澤 真人, 椚田 房紀, 芳沢 礼佑, 中村 元行
    2013 年 33 巻 1 号 p. 40-48
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    【目的と方法】1995年6月~2008年8月までに,抗凝固療法未施行の非弁膜症性発作性心房細動332例(男性224例,年齢65±13歳,平均観察期間53±35ヵ月)を対象に,CHADS2スコアならびにCHA2DS2-VAScスコアに準じた虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症を後ろ向きに調査した.【成績】(1)平均CHADS2スコアは1.2±1.2点,平均CHA2DS2-VAScスコアは2.0±1.6点であった.CHADS2スコア1点以下の低リスク群は69%,CHA2DS2-VAScスコア1点以下の低リスク群は40%の割合であった.(2)虚血性脳卒中および全身性塞栓症の年間発症率は,それぞれCHADS2スコア0点群が0.2%,1点群が0.9%,2点群が2.8%,3点群が9.4%,4点以上群が10.9%,CHA2DS2-VAScスコア0点群が0%,1点群が0.6%,2点群が1.0%,3点群が2.0%,4点群が5.5%,5点群が9.1%,6点以上群が13.7%であり,いずれのスコアも高値な群ほど高率となった.(3)多変量ロジスティック回帰分析によれば,CHADS2スコア〔odds ratio(OR)4.7,p<0.001〕ならびにCHA2DS2-VAScスコア(OR 4.2,p<0.001)は,いずれも虚血性脳卒中および全身性塞栓症の独立した予測因子となった.(4)虚血性脳卒中および全身性塞栓症に対する予測能を受信者動作特性曲線(ROC)で検討すると,ROC下面積はそれぞれCHADS2スコア0.865(p<0.001), CHA2DS2-VAScスコア0.899(p<0.001)で,CHA2DS2-VAScスコアのほうがより高値であるものの有意差を認めなかった.【結論】いずれのスコアも,本邦における虚血性脳卒中および全身性塞栓症のリスク層別化指標として有用である.
  • 家子 正裕, 高橋 伸彦
    2013 年 33 巻 1 号 p. 49-58
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    近年,凝固第Xa因子(Xa)やトロンビンを直接阻害する新規経口抗凝固薬による抗凝固療法が可能になった.新規経口抗凝固薬は頻回なモニタリングが不要ではあるが,緊急時における出血リスク評価や治療効果としての虚血リスク評価が必要となる.出血リスク評価としては,トロンビン阻害薬ではAPTTがその効果を反映するが,試薬感受性が異なり試薬ごとに違った結果をもたらす.また,HTIはトロンビン阻害薬の濃度を良好に反映するが,残存凝固能の指標にはならない.Xa阻害薬ではPTが出血リスク評価として有用だが,試薬ごとの感受性が異なる.Anti-Xa chromogenic assayは阻害薬の濃度を良好に反映するが,患者の残存凝固能を示さない.現状では出血リスク評価として絶対的なものはなく,今後の開発が期待されている.一方,虚血リスク評価としては,D dimerや可溶性フィブリン(SF, FMC)などの血栓マーカーが有用である.特にFMCは局所の血栓形成も反映し,新規経口抗凝固薬の効果確認には極めて有用である.心原性脳塞栓症における新規経口抗凝固薬による抗凝固療法での出血,虚血リスク評価は,今後の開発とそのエビデンスの蓄積が必要である.
  • 奥山 裕司, 南都 伸介, 南口 仁, 南野 哲男, 増田 正晴, 北風 政史, 是恒 之宏, 日吉 康長, 山田 貴久, 長谷川 新治, ...
    2013 年 33 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    【目的】本邦の日常臨床下におけるダビガトラン既存用量使用困難例の割合とその特徴を検討する.【対象と方法】対象は,多施設心房細動レジストリー(6施設による多施設観察研究)に登録された心房細動症例618症例(平均年齢71±10歳,男性429名)とした.ダビガトラン服用時の減量因子とされる(1)70歳以上,(2)クレアチニンクリアランス(Ccr)≦50ml/分,(3)P糖蛋白阻害薬(ベラパミル・アミオダロン)の内服,に関して症例ごとにカウントし,減量因子の個数を算出した.減量因子がない症例を300mg/日群(通常用量群),減量因子がひとつであった症例を220mg/日群(低用量群),減量因子がふたつ以上あった症例をダビガトラン既存用量使用困難群と定義した.【結果】70歳以上の症例は347例(56%),Ccrが50ml/分以下の症例は146例(24%),P糖蛋白阻害薬(ベラパミル・アミオダロン)を併用している症例は147例(24%)であった.検討した減量因子数に基づくと,300mg/日群は33%,220mg/日群は37%,既存用量使用困難群は30%であった.既存用量使用困難群は,既存用量使用可能群(220mgまたは300mg/日)と比べて有意にCHADS2スコアが高かった(2.5±1.2 vs. 2.1±1.1 ; p<0.0001).【結語】本多施設心房細動レジストリー患者群において,ダビガトラン既存用量使用困難例は30%存在することが明らかとなった.なかでも,脳梗塞のリスクが高いとされるCHADS2スコア高リスク群においては過剰投与となるリスクも高く,注意が必要である.
  • 山下 武志
    2013 年 33 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    約50年の歴史をもつワルファリン単独の抗凝固療法は今,新しい時代を迎えつつある.ここ数年の間に抗トロンビン薬,抗Xa薬に関する大規模臨床試験結果が続々と報告され,新しいパラダイムの上で抗凝固療法が可能になるという期待が高まった.この期待は,主にふたつのメリットに集中している.(1)使用利便性:きめ細かな用量調節が不要,毎回の採血モニタリングが不要,食事制限が不要,そして併用薬の注意が最小限となること,(2)頭蓋内出血の減少:脳卒中予防効果は同等であっても,致命的となりやすい頭蓋内出血が減少すること.この時代に生まれたイノベーションは,確かにこれまでの大きな障壁を打ち破り,新規抗凝固薬がワルファリンに取って代わることができる,という希望的憶測を生んだ.しかし,これらの新規抗凝固薬の発売以降を見るとどうだろう.ダビガトラン,リバーロキサバンともに,発売後半年で5名の出血による死亡が報告された.このように副作用が続々と報告されることは,約60年前のワルファリン発売時と同様である.抗凝固薬は細胞を介さず,分子を操作してイベントを予防するという特殊な薬理作用をもっている.「個人差をどうマネジメントするか」という課題は,すべての新規抗凝固薬が負っている宿命であり,育薬のプロセスの中で克服していかなければならないだろう.
症例
  • 渡邉 智彦, 深水 誠二, 赤澤 良太, 名内 雅宏, 西村 卓郎, 北村 健, 岩澤 仁, 島田 博史, 石川 妙, 北條 林太郎, 林 ...
    2013 年 33 巻 1 号 p. 74-81
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    抗不整脈薬抵抗性の症候性心房頻拍(AT)に対するカテーテルアブレーション(CA)目的にて,44歳女性が当院へ紹介入院となった.患者は,15歳時に交通事故による鈍的胸部外傷を受けた.その後三尖弁閉鎖不全症(TR)を併発し,18歳・19歳・26歳で三尖弁置換術(TVR)を計3度受けている.術後数年目から患者はATによる動悸を訴えるようになった.心臓超音波検査と右房造影にて巨大右房が認められた.電気生理学的検査では,プログラム刺激により5種類の形状のATが容易に誘発された.そのうち3種類でマッピングが可能であり,1種類は8の字様のマクロリエントリー,2種類は巣状パターンのミクロリエントリーを示した.それらのATにCAを施行した.その後,前回誘発された頻拍とは異なる頻拍の再発があり,2回目の治療を行った.2種類のATにCAを行い,頻拍は誘発されなくなった.以後,約1.5年にわたり動悸発作なく経過している.これまで鈍的胸部外傷後のTVRの報告はあるが,合併したATに対しCAを行った報告は,われわれの知る限りでは本症例が初めてである.
  • 落合 弥奈, 山川 健, 古川 泰司, 一色 高明
    2013 年 33 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性.数年来,大動脈弁輪拡張症(AAE)を指摘されていた.2010年3月にバルサルバ径60mmと拡大を認め手術適応と判断されたが,動悸症状もあるため,術前にホルター心電図検査を施行したところ,左室流出路起源の持続性心室頻拍が認められた.内服加療ではコントロールできず,アブレーションの適応と考えられた.AAEがあるため経皮的アブレーションのリスクが高いと判断され,AAEに対するBentall手術と同時に高周波アブレーションを施行することとした.術前に施行した12誘導心電図および電気生理学的検査にて,左冠尖起源と予測した.同年8月,Bentall手術を施行,さらに術前の電気生理学的検査をもとにアブレーション範囲を左冠尖と推測し,約3cmにわたりアブレーションを施行した.術後経過は良好で,心室期外収縮は全心拍中0.03%以下に減少した.本症例のように外科的アブレーションを行わざるを得ない場合,術前の詳細な検討が有用である.
モデル解析の視点
feedback
Top