【背景】近年,左心耳(LAA)は心房細動(AF)の持続に関連していると報告されている.一方,高速フーリエ(FFT)解析によるdominant frequency(DF)の高い部位は,AFの電気的基質として知られている.そこで今回われわれは,左房(LA)本体,LAAの容積とDFが,AFアブレーション(ABL)後のAF誘発性に関連するか否か検討した.【方法および結果】AF-ABLを施行した46例(発作性:27例,持続性:19例)に術前の心臓CTとAF中のFFT解析を施行し,LAとLAAの容積およびDF値を測定した.肺静脈隔離(PVI)のみでAFが誘発されなくなった27例をPVI反応群とし,残りの19例をPVI不応群とした.また,PVI不応群では,LAへのcomplex fractionated atrial electrogram(CFAE)や線状ABLを追加し,AFが誘発されなくなった7例をLA-ABL反応群,AFが誘発されなくなるまでに至らなかった12例をLA-ABL不応群とした.LA容積はPVI反応群に比し,PVI不応群で有意に大きく(98.8±7.1mm
3 vs. 121.8±7.2mm
3, p=0.0285),LAA容積も同様の傾向を呈した(12.3±1.0mm
3 vs. 14.4±1.0mm
3, p=0.1399).LA,LAAのDF値はともに,PVI反応群に比較し,PVI不応群で有意に高値であった(LA-DF 6.1±0.2Hz vs. 6.8±0.2Hz, p=0.0429;LAA-DF 6.0±0.2Hz vs. 6.7±0.2Hz, p=0.0164).PVI不応群のサブ解析では,LA-ABL反応群,LA-ABL不応群でLA容積には有意差を認めなかったが(126.7±12.4mm
3 vs.111.9±10.5mm
3, p=0.3770),LAA容積はLA-ABL反応群が有意に大きかった(17.1±1.4mm
3 vs.11.6±1.2mm
3, p=0.0102).DF値に関しては有意差はなかったが,LA-ABL反応群,LA-ABL不応群で段階的に高い傾向を呈した(LA-DF 6.6±0.5Hz vs.7.0±0.4Hz, p=0.4955 ; LAA-DF 6.3±0.4Hz vs. 7.0±0.3Hz, p=0.2122).【結語】PVI後AFの誘発されない患者は,LA容積が小さく,LA,LAAのDF値が低値を呈した.PVI後AFが誘発される患者においても,LAA容積が大きく,LA,LAAのDF値が比較的低い場合,LA本体へのCFAEや線状ABLが有効な症例がある可能性が示唆された.
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