心電図
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33 巻, 4 号
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Editorial
原著
  • 園田 和正, 奥村 恭男, 渡辺 一郎, 永嶋 孝一, 小船 雅義, 真野 博明, 古川 力丈, 佐々木 直子, 大久保 公恵, 中井 俊子 ...
    2014 年 33 巻 4 号 p. 291-299
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    【背景】近年,左心耳(LAA)は心房細動(AF)の持続に関連していると報告されている.一方,高速フーリエ(FFT)解析によるdominant frequency(DF)の高い部位は,AFの電気的基質として知られている.そこで今回われわれは,左房(LA)本体,LAAの容積とDFが,AFアブレーション(ABL)後のAF誘発性に関連するか否か検討した.【方法および結果】AF-ABLを施行した46例(発作性:27例,持続性:19例)に術前の心臓CTとAF中のFFT解析を施行し,LAとLAAの容積およびDF値を測定した.肺静脈隔離(PVI)のみでAFが誘発されなくなった27例をPVI反応群とし,残りの19例をPVI不応群とした.また,PVI不応群では,LAへのcomplex fractionated atrial electrogram(CFAE)や線状ABLを追加し,AFが誘発されなくなった7例をLA-ABL反応群,AFが誘発されなくなるまでに至らなかった12例をLA-ABL不応群とした.LA容積はPVI反応群に比し,PVI不応群で有意に大きく(98.8±7.1mm3 vs. 121.8±7.2mm3, p=0.0285),LAA容積も同様の傾向を呈した(12.3±1.0mm3 vs. 14.4±1.0mm3, p=0.1399).LA,LAAのDF値はともに,PVI反応群に比較し,PVI不応群で有意に高値であった(LA-DF 6.1±0.2Hz vs. 6.8±0.2Hz, p=0.0429;LAA-DF 6.0±0.2Hz vs. 6.7±0.2Hz, p=0.0164).PVI不応群のサブ解析では,LA-ABL反応群,LA-ABL不応群でLA容積には有意差を認めなかったが(126.7±12.4mm3 vs.111.9±10.5mm3, p=0.3770),LAA容積はLA-ABL反応群が有意に大きかった(17.1±1.4mm3 vs.11.6±1.2mm3, p=0.0102).DF値に関しては有意差はなかったが,LA-ABL反応群,LA-ABL不応群で段階的に高い傾向を呈した(LA-DF 6.6±0.5Hz vs.7.0±0.4Hz, p=0.4955 ; LAA-DF 6.3±0.4Hz vs. 7.0±0.3Hz, p=0.2122).【結語】PVI後AFの誘発されない患者は,LA容積が小さく,LA,LAAのDF値が低値を呈した.PVI後AFが誘発される患者においても,LAA容積が大きく,LA,LAAのDF値が比較的低い場合,LA本体へのCFAEや線状ABLが有効な症例がある可能性が示唆された.
  • 尾藤 史康, 戸叶 隆司, 木津 京子, 島袋 全洋, 久保田 真司, 奥田 典, 中野 岳彦, 小松 さやか, 小松 かおる, 山瀬 美紀 ...
    2014 年 33 巻 4 号 p. 300-307
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    ペースメーカー植込み時の心内電位波高は,術中のペーシングシステムアナライザー(PSA)と術直後各社プログラマーによる測定でしばしば大きな差異を経験する.このような現象に対し,われわれは,以下のような検討を行った.対象は,ペースメーカー新規植込みもしくは交換を受けた80例(平均77.6±9.8歳,男性38例)である.使用ペースメーカーはSorin, Medtronic, Boston Scientific, St. Jude MedicalおよびBiotronik社製で,術中PSA,術直後各社プログラマーにて心内電位波高を測定し,比較・検討を行った.また,疑似心内電位を測定する実験も併せて行った.心内電位波高測定値は,心内R波高に差を認めない一方,心内P波高では術中PSAによる測定値に対し術直後プログラマーによる測定値が有意に高く(p<0.01),メーカー別の比較ではSorin社製およびBiotronik社製で有意に高かった(p<0.01).これらは交換例22例に限定した場合も同様な傾向で,実験でもPSAで心内P波高が実際に低く測定された.ペースメーカー植込み時の心内電位波高測定において,特に心内P波高は術中PSAと術直後各社プログラマーでの測定で差異を認める可能性があることを理解しつつ,PSAおよびプログラマーを使用すべきと考えられた.
心電図講義
第21回 頻拍症カンファランス AVNRTを見直す
  • 深谷 眞彦
    2014 年 33 巻 4 号 p. 337-352
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    発作性上室頻拍で最も多い房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)は,薬物治療の時代には,房室結節内の二重伝導路を興奮旋回する頻拍と一般的には理解されていた.その後,高周波カテーテルアブレーション(RFCA)時代になって,房室結節周囲の心房筋を含む遅伝導路と速伝導路間の興奮旋回路がわかってきた.通常型(Slow-Fast型)は,冠静脈洞と三尖弁輪間を房室結節方向に走行する遅伝導路への通電で根治できる.非通常型としてFast-Slow型,Slow-Slow型があるが,多重伝導路を含めるとAVNRTには多くの種類やvariationがあって多様である.頻拍性不整脈は,解剖学的知見や診断機器の進歩とも相まって,3次元的な不整脈像として実際的に把握されようとしている.しかし,AVNRTの興奮旋回路の実像は今でもわかりにくい.房室結節領域の複雑な解剖学的構造などから,各AVNRTの興奮旋回路や回路構成成分の詳細には,今も問題点が少なくない.RFCA治療成績をより完全にするためにも,古くからの問題に取り組み,さらに知見を広げることは必要と考える.
  • 井上 紳, 小川 玄洋, 酒井 哲郎, 小林 洋一, 松山 高明
    2014 年 33 巻 4 号 p. 353-361
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)の治療には,遅伝導路(slow pathway)に対するカテーテルアブレーションが極めて良好な成績を上げている.また,その解剖学的基質として,compact nodeから三尖弁上に伸びる房室結節組織の後方伸展〔posterior(inferior) nodal extension〕が注目されている.しかし,遅伝導路に対する電気生理学的アプローチの指標となるJackman電位やHaissaguerre電位の成因は明らかでない.これらの複合電位の発生機序の解剖学的背景について,Koch三角内における冠静脈洞と三尖弁輪前庭部心筋の走行を再構築することで明らかにする.また,AVNRTはslow-fast,fast-slow,slow-slow,left variantの4型に分けられるが,その発生機序について房室結節の心房筋接合部や移行細胞層など興奮旋回にかかわる心筋構築を明らかにし,AVNRT症例を提示して発症要因を検討する.房室結節組織は房室弁輪前庭部心房筋および移行細胞層と直接接合するが,冠静脈洞筋束とは直接接合しない.AVNRT症例では,房室結節組織と三尖弁輪前庭部心筋との接合を認めることは困難である.Koch三角内の神経支配も概説し,カテーテルアブレーション施行部位との関連を説明する.
  • 里見 和浩, 大友 潔
    2014 年 33 巻 4 号 p. 362-372
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)のメカニズムは,房室結節二重伝導路間のリエントリーと理解され,遅伝導路に対するアブレーションが極めて有効である.一方,そのリエントリー回路の解剖学的広がりは,いまだ不明な点が多く,心房筋をその回路に含むかどうかさえ,議論の対象になっている.房室結節から離れた遅伝導路の焼灼で頻拍が誘発不能になること,長い連結期で頻拍がリセット可能であることから,心房を含んだ大きな回路であることが想定される.一方,上位共通路の存在は心房筋を回路に含まない根拠になりうる.さらに本稿ではAVNRTの電気生理学的基質において,いまだ明らかになっていない3つの課題である,(1)下位共通路の存在とlower turn around site,(2)上位共通路(upper common pathway)の特徴,(3)Leftward posterior nodal extensionの役割につき,自験例に基づいて報告した.
  • 藤木 明
    2014 年 33 巻 4 号 p. 373-386
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)には典型的なslow-fast型以外に非典型とされる様々なタイプがあり,その多様性が指摘されている.房室伝導を構成するcompact nodeとposterior nodal extensionの性質が,不整脈の発生に関与する.周囲の心房筋とtransitional cellを介した接合は,anisotropyの強い心房筋の影響を受けやすい.心房筋との接合部は典型的なfast pathwayとslow pathway以外に,intermediate pathwayとよべる接合が両者の間に存在している.それらpathwayの組み合わせにより多様なAVNRT回路が成立するのであろう.それぞれの回路ごとにアブレーションに対する反応が異なるため,正確な診断が重要となる.また,心房筋との接合状態は房室伝導のconcealed conductionにも関与し,心房細動時の心室応答を規定する要因となる.社会の高齢化とともに,今後さらに多様なAVNRTに遭遇する機会が増えるものと考えられる.
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