心電図
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34 巻, 2 号
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Editorial
総説
  • 竹内 綾子, 松岡 達
    2014 年 34 巻 2 号 p. 69-81
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    ミトコンドリアは,ATPの主な合成部位であるとともに,Ca2+貯蔵部位としての役割も果たす.また,ミトコンドリアCa2+はミトコンドリアエネルギー代謝を制御すると考えられる.ミトコンドリアCa2+動態は,主にCa2+ユニポータ(MCU)を介した取り込みと,Na+-Ca2+交換輸送体(NCLX)を介した排出のバランスにより決定される.しかし,これらミトコンドリアCa2+輸送担体が,心筋細胞機能発現にどのような役割を果たすかは不明であった.われわれは,自動能をもつマウス心房筋由来株化細胞HL-1を用いて,NCLXの発現減少が活動電位・Ca2+トランジェント発生周期の延長をもたらすことを発見した.細胞生理学実験と数理モデル解析による検討から,NCLXはミトコンドリアから筋小胞体へのCa2+供給を担うこと,それに伴い筋小胞体からのCa2+放出で決定されるHL-1細胞の拍動リズムを制御することが判明した.この結果は,NCLXを介したミトコンドリアCa2+動態が,異常自動能発生や不整脈に関与する可能性を示唆するものである.
Point of View
第30回日本心電学会学術集会 学術諮問委員会提言シンポジウムより 虚血と不整脈
  • 渡辺 一郎
    2014 年 34 巻 2 号 p. 88-97
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    【背景】急性心筋虚血時にST-T波の交互脈(STTA)が発生すると,心室不整脈が高頻度に発生することが知られている.【方法】ブタを用い,8分間の冠動脈左前下行枝閉塞時の虚血心筋より貫壁性に単極電位,双極電位を同時記録し,また,心筋間質K+濃度(K+e),心外膜心筋活動電位を連続して記録した.【結果】STTAには2つの時相が存在した.第1相は冠閉塞後4分04秒±12秒に心内膜側で最初に出現し,K+eは7.1±0.3mM,双極電位より計測した伝導遅延は28±4msecであった.単極電位上のSTTAは双極電位の心拍ごとの変化を伴っていないことより,STTAの成因は再分極の心拍ごとの変化に基づくと考えられた.第2相STTAは通常5分以降に出現した.第2相STTAは常に双極電位の1心拍ごとの形状の変化,あるいは2 : 1伝導途絶を伴っていた.また,第1相STTAと異なり,STTAは心外膜側で顕著であった.さらに,第2相STTAは心室細動(VF)が発生しなかった冠閉塞では30%に出現したのに対し,VFが出現した冠閉塞では56%に出現した.【結語】虚血初期のSTTAは心室筋再分極の心拍ごとの変化に由来し,第2相のSTTAは主に虚血心筋内での心拍ごとの伝導障害に由来すると考えられ,VF発生と関連していた.
  • 小林 建三郎, 池田 隆徳
    2014 年 34 巻 2 号 p. 98-107
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    心臓突然死の基礎心疾患として,虚血性心疾患は代表的疾患である.心臓突然死の多くが心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈によることから,虚血性心疾患に伴う心室不整脈に対するリスク層別化は,心臓突然死予防に重要な役割を果たしている.これまでの臨床研究の結果からは,画像診断で測定される左室駆出率が致死性不整脈出現リスク評価におけるスタンダードな指標となっている.左室駆出率以外にも,心室遅延電位(late potentials:LP),T-wave alternans(TWA),心拍変動解析,Heat rate turbulence(HRT)などの非侵襲的心電学的指標も有用とされている.特に,再分極異常を反映するTWAについては多くのエビデンスが報告され,左室駆出率に次いで有用な指標と考えられている.ひとつの心電学的指標による陽性的中率は高くないが,複数の指標を活用することで予知精度を向上することができる.近年,デジタルホルター心電計の進歩により,その複数の心電学的指標を同時に計測することが可能となり,その有用性を立証する多施設共同研究が本邦で進行している.
  • 佐藤 明
    2014 年 34 巻 2 号 p. 108-117
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    急性冠症候群(ACS),特に急性心筋梗塞(AMI)においては,速やかに適切な治療を必要とする多彩な不整脈が合併する.AMIに合併する心室細動(VF)は,心臓突然死のなかで最も頻度が高い疾患である.近年,coronary care unit(CCU)の普及および早期収容による不整脈の心電図モニタリング,致死的不整脈に対する適切な治療によって,AMIの院内死亡率は減少している.また,心電図における早期再分極がACSの心室頻拍(VT)/VFの発症に寄与していることが報告され,AMI症例にて発症前の12誘導心電図を評価できた連続220症例において,早期再分極の存在がVT/VFの発症の独立した危険因子であった.AMIに対する緊急冠動脈インターベンション(PCI)治療を行う機会が多いインターベンション医は,ACSに伴う不整脈の対処法を習得するとともに,不整脈専門医との密な連携を図り,致死的な不整脈に対して最善の治療を施すべきである.早期の冠血行再建術が普及した時代においても,致死的不整脈の早期発見と早期治療が患者の予後を改善させるためにも重要である.ACS,特にAMIに伴う各種不整脈について臨床的背景,診断および治療について記述した.
  • 佐藤 光希, 渡部 裕, 池主 雅臣, 和泉 大輔, 小澤 拓也, 伊藤 英一, 田辺 恭彦, 相澤 義房, 南野 徹
    2014 年 34 巻 2 号 p. 118-126
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    近年,心室細動(VF)に関連する疾患として,J波症候群という新しい疾患群が提唱された.虚血性心疾患においてもJ波の存在やその変化は,心筋虚血とVF発生との関係を解析するうえで非常に重要である.われわれは,心筋虚血による超急性期のJ波の変化とVF発生の関係を明らかにするため,冠攣縮誘発試験施行例のうち虚血が誘発された67例において,J波とVF発生の関係を検討した.その結果,67例中14例において安静時心電図にJ波が存在していた.冠攣縮誘発による虚血に伴って,安静時心電図のJ波は14例中7例で増悪を示し,そのうち4例でVFに至った.一方で,安静時心電図でJ波が見られなかった53例のうち,4例で虚血に伴って新たなJ波が出現したが,VFは生じなかった.J波に変化がみられなかった49例のうち1例でのみ,VFを生じた.冠攣縮誘発試験前のJ波の存在は,冠攣縮誘発時のVF発生に関係した(OR 20.8,p=0.006).また,冠攣縮誘発時のJ波の増悪・出現もVF発生に関与した(OR 31.4,p=0.002).このことから,J波は冠攣縮誘発時の心筋虚血の超急性期において,VFに関係していることが示された.心筋虚血の超急性期におけるJ波を含めた特異な心電図変化を解析することは,虚血性VFや虚血性心疾患の突然死のリスク階層化にも有用と考えられる.さらに研究を進めていくことで,虚血性VFの機序や病態が解明し,治療に貢献していくことが期待される.
  • 宮内 靖史, 林 明聡, 岩崎 雄樹, 淀川 顕司, 植竹 俊介, 坪井 一平, 林 洋史, 高橋 健太, 小林 義典, 清水 渉
    2014 年 34 巻 2 号 p. 127-136
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞の急性期から亜急性期には,薬物療法抵抗性の多形性心室頻拍および心室細動が生じ,いわゆるelectrical storm(ES)の状態となることがある.日本医科大学でカテーテル心筋焼灼術を必要としたES症例では,全例で梗塞境界領域のPurkinje線維から発生する期外収縮がトリガーとなっていた.そのうち2例では,Purkinje線維がリエントリーにも関与することが示され,その広範な焼灼によりトリガーのみならずプログラム刺激による誘発が不能となり,基質の修飾法としての有用性が示唆された.また,心筋梗塞に伴う心室頻拍(VT)のなかで,特発性左室頻拍(ILVT)に類似した束枝内Purkinje VTにおいては,前収縮期Purkinje電位と拡張期Purkinje電位が頻拍中に記録される部位での焼灼が有効であり,ILVTと同様のアプローチが有用であった.
  • 中島 育太郎, 野田 崇, 石橋 耕平, 山田 優子, 宮本 康二, 岡村 英夫, 里見 和浩, 相庭 武司, 鎌倉 史郎, 草野 研吾, ...
    2014 年 34 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    欧米を中心に行われた虚血性心疾患を主とする大規模臨床試験では,植込み型除細動器(ICD)が収縮不全心において高い突然死予防効果を示すことが明らかにされている.また,心臓再同期療法(CRT)は慢性心不全患者の症状・生命予後を改善する有効な治療であるが,虚血性心筋症(ICM)患者では非虚血性に比して効果が限局的との報告もある.CRTのICM患者への有効な反応が得られれば,それに付随して抗不整脈作用も期待されるが,ICM患者における致死性不整脈予防効果には一定した見解がない.そこで,ICM患者に対するICDおよびCRTの選択という観点で,両者の位置付けを再考すべく,自施設での症例を対象に症例背景や予後の検討を行った.後ろ向きに検討したところ,左室駆出率が同等という条件下では,心不全がより軽症例・QRS幅の狭い例・突然死2次予防を目的とする例で,CRTよりもICDが選択されていた.平均観察期間871日間で,両群間に生存率や心不全回避率に差を認めなかった.致死性不整脈の発生に関しては,2次予防目的で植込みを行った患者では差が認められなかったが,1次予防目的に限定すると,CRT群で有意に低率であった.ICM患者の約半数でCRTへの有効な反応を示したが,慢性腎臓病,永続性心房細動,非左脚ブロック症例では,あまり効果がみられなかった.したがって,一定の条件を満たせば,ICMにおいてもCRTは有効であり,心不全に対する効果と同様に抗不整脈作用も期待される.
座談会 高齢者が増え続ける今,脳梗塞にいかに立ち向かうか
  • 井上 博
    2014 年 34 巻 2 号 p. 147
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
  • 家子 正裕
    2014 年 34 巻 2 号 p. 149-156
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    ワルファリンは,細胞性凝固反応の開始期,増幅期,増大期に存在する凝固第VII,IV,X因子およびトロンビンの原料となるプロトロンビンの蛋白量を低下させ,強力な抗凝固効果を発揮する.しかし,出血性副作用も多く,プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)を頻回に測定し,用量を調節しなくてはならない.
    ダビガトランは,初期トロンビンおよび増幅期にフィードバックするトロンビンを阻害し,結果的に凝固増幅期を阻害することでトロンビン産生速度を低下させる.活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)で過剰状態をモニタリングできるものの,APTTのトロンビン阻害薬感受性は試薬ごとに大きく異なっているため,標準化が必要である.
    Xa阻害薬は凝固増大期のプロトロンビナーゼ複合体を阻害し,トロンビン生成速度および産生総量を低下させ,抗凝固効果を発揮する.リバーロキサバンおよびエドキサバンでは,過剰状態をPTでモニタリングできるが,PTのXa阻害薬感受性は試薬ごとに異なるため注意を要する.また,アピキサバンはPTに反応しないことから,今後新たなモニタリング検査の開発が望まれる.
    一方,抗血栓効果の確認には,Dダイマーや可溶性フィブリンモノマー複合体などの血栓マーカーが,すべての抗凝固薬で有用である.
  • 池田 隆徳
    2014 年 34 巻 2 号 p. 157-166
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    我が国では,脳卒中のなかで脳塞栓症の占める割合が急激に増加しており,その多くは心房細動に由来することが示されている.心房細動による心原性脳塞栓症の予防は,アスピリンをはじめとする抗血小板薬では効果が乏しく,ガイドラインでも抗凝固薬の使用を積極的に推奨している.心房細動患者において抗凝固薬を使用する場合は,CHADS2スコアあるいはそれに準じたスコアの活用を推奨している.使用する抗凝固薬として,従来使用されていたワルファリンは多くの制限を有していたため,新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant : NOAC)が開発され,その有効性と安全性が臨床試験で立証された.直接トロンビン阻害薬のダビガトランとXa因子阻害薬のリバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバンがこれに含まれる.徐々にではあるが,これらNOACの臨床上の特徴や使い分けについても把握できるようになってきた.今後,心房細動患者におけるNOACを用いた抗血栓凝固療法の適応が,ますます拡大することが予想される.
  • 小田倉 弘典
    2014 年 34 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    かかりつけ医の心房細動診療における予防,診断,治療,リハビリテーションに至る包括的な流れが,新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant : NOAC)の登場で大幅に変化することはない.しかし,適応症例に適切に抗凝固療法が行われていない現状を考えたとき,ワルファリンに比べて頭蓋内出血が少なく,かつ使用が簡便であるという特徴をもつNOACは,今後かかりつけ医の使用する頻度が増えると考えられる.この際,患者の腎機能(クレアチニンクリアランス),コストへの意識,服薬アドヒアランスを的確に把握することが求められる.また,モニタリング指標がないため,出血や脱水症状,貧血,飲み忘れなどについても,日常的に注意することがいっそう必要となる.さらに,NOACの登場により,心房細動のコモンディジーズとしての重要性が増すことが予想される.すなわち,早期発見のために65歳以上のすべての外来患者の脈を取り,また発症自体の予防あるいは脳塞栓予防のため,心房細動以外のリスク因子を包括的に管理する姿勢が,かかりつけ医に求められる.今後,超高齢者,認知症,転倒高リスク例などへのNOACの扱いが課題となるが,NOACの役割はいまだ未知数である.こうした例では,患者およびその家族とのコミュニケーションを介して共通基盤を見い出すことが大切となる.
    ワルファリン時代に比べ,かかりつけ医の信条である問診や身体診察,患者とのコミュニケーションといった武器にさらに磨きをかけ,各々の患者に適切な抗凝固療法を行うことが,NOAC時代におけるかかりつけ医の使命と考える.
  • 橋本 洋一郎
    2014 年 34 巻 2 号 p. 175-186
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    非弁膜症性心房細動における脳卒中予防に関して,ワルファリンの効果は確立しているが,問題点も多かった.その問題点を克服するために,新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant : NOAC)が開発された.すでにNOAC4剤が発売され,非弁膜症性心房細動に伴う心原性脳塞栓症の急性期治療や再発予防も大きく変わってきている.
    非弁膜症性心房細動を原因とする心原性脳塞栓症には,急性期・回復期・維持期のリハビリテーションの継続ととともに,抗凝固療法の継続が必要となる.一度脳梗塞を発症すると脳梗塞発症リスクが高まり(CHADS2スコアが2点増加で倍のリスク),出血リスクも増加(HAS-BLED出血リスクスコアが1点増加)する.生活習慣の改善は勿論のこと,高血圧・糖尿病・脂質異常症などの危険因子の厳格な管理,さらには心不全のコントロールも行いつつ,抗凝固薬の効果を高めて,副作用を軽減する工夫を施す必要がある.NOACは,頭蓋内出血のリスクを半減させるのみならず発症しても軽症例が多く,また再発予防では危険因子治療を含めて多剤併用となるため,我々は薬物相互作用を考慮してNOACを第一選択薬としている.しかし,半減期が短いために服薬アドヒアランス対策が必要である.抗凝固療法では,頭蓋内出血や消化管出血をきたした場合の医療連携も必要である.
    連携を強化するうえでは,ルールを遵守しなければならない.治療の継続を担保するために各NOACの禁忌,慎重投与,薬物相互作用,減量基準を十分に熟知しておく.特に,再発予防では減量基準にない安易な減量は慎むべきである.かかりつけ医,専門医,患者の3者が連携してtriple-winを目指す.
  • 井上 博, 家子 正裕, 池田 隆徳, 小田倉 弘典, 橋本 洋一郎
    2014 年 34 巻 2 号 p. 187-205
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
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