早期再分極症候群は,近年提唱された新しい疾患概念であり,QRS終末部のJ点上昇(早期再分極ないしはJ波)と心室細動による突然死を特徴とする.また,器質的心異常を伴わず,家族性に発症することが多いことから遺伝性不整脈症候群として考えられており,現在までに5つの原因遺伝子が同定されている.ATP感受性K
+チャネルの遺伝子である
KCNJ8は,最初に同定された原因遺伝子である.興味深いことに,
KCNJ8の変異は現在までに1種類しか同定されておらず,
S422L変異のみが複数の家系で報告されている.この変異は,ATP感受性K
+電流を増加させるGain-of-function変異であり,ATP感受性K
+電流の増加はJ点上昇をきたすことが基礎実験で報告されている.心臓に発現しているL型Ca
2+チャネルサブユニットの遺伝子である
CACNA1C,
CACNB2,
CACNA2D1も,早期再分極症候群の原因遺伝子である.またわれわれは,近年,心臓Na
+チャネル遺伝子
SCN5Aの変異を早期再分極症候群で同定した.それは,Ca
2+チャネル,Na
+チャネル遺伝子ともに電流を低下させるLoss-of-function変異であることが報告されている.これらの遺伝子はBrugada症候群の原因遺伝子でもあり,J波症候群の臨床像のみならず遺伝的背景の相違が注目されている.
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