心電図
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34 巻, 4 号
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Editorial
第29回日本心電学会学術集会 学術諮問委員会指定トピックスより 心電図ST 上昇を考える:J 波症候群
  • 相庭 武司, 河田 宏, 横山 光樹, 日高 一郎, 高木 洋, 石橋 耕平, 中島 育太郎, 山田 優子, 宮本 康二, 岡村 英夫, 野 ...
    2015 年 34 巻 4 号 p. 345-351
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    これまで良性と考えられてきた早期再分極(J波)だが,一部の症例で突然死との関係やBrugada症候群,QT短縮症候群との合併が注目され,必ずしも予後良好とはいいきれない.その成因は,主に動脈灌流心筋切片(wedge)モデルの実験結果から,心外膜側の活動電位第1相notchに起因する「早期再分極」異常と,臨床の電気生理学的検査から得られた心室内伝導遅延による「脱分極」異常の両方が考えられている.しかし,脱分極と再分極は相反するものではなく,ひとつの心筋細胞の活動電位において表裏一体であり,両者が密接に関係し,特徴的な心電図異常と心室細動発生に至ると考えるべきであろう.遺伝子レベルでも特発性心室細動(早期再分極)やBrugada症候群が,必ずしも単一の遺伝子異常では説明不可能な点もこれを裏付ける考え方である.今後,心電図学のさらなる研究によって,より具体的に良性J波と不整脈の原因となる悪性J波の鑑別が可能となることを期待したい.
  • 渡部 裕, 南野 徹
    2015 年 34 巻 4 号 p. 352-359
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    早期再分極症候群は,近年提唱された新しい疾患概念であり,QRS終末部のJ点上昇(早期再分極ないしはJ波)と心室細動による突然死を特徴とする.また,器質的心異常を伴わず,家族性に発症することが多いことから遺伝性不整脈症候群として考えられており,現在までに5つの原因遺伝子が同定されている.ATP感受性K+チャネルの遺伝子であるKCNJ8は,最初に同定された原因遺伝子である.興味深いことに,KCNJ8の変異は現在までに1種類しか同定されておらず,S422L変異のみが複数の家系で報告されている.この変異は,ATP感受性K+電流を増加させるGain-of-function変異であり,ATP感受性K+電流の増加はJ点上昇をきたすことが基礎実験で報告されている.心臓に発現しているL型Ca2+チャネルサブユニットの遺伝子であるCACNA1CCACNB2CACNA2D1も,早期再分極症候群の原因遺伝子である.またわれわれは,近年,心臓Na+チャネル遺伝子SCN5Aの変異を早期再分極症候群で同定した.それは,Ca2+チャネル,Na+チャネル遺伝子ともに電流を低下させるLoss-of-function変異であることが報告されている.これらの遺伝子はBrugada症候群の原因遺伝子でもあり,J波症候群の臨床像のみならず遺伝的背景の相違が注目されている.
  • 中川 幹子, 江崎 かおり, 江畑 有希, 宮崎 寛子, 手嶋 泰之, 篠原 徹二, 油布 邦夫, 高橋 尚彦, 犀川 哲典
    2015 年 34 巻 4 号 p. 360-367
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    乳頭筋や偽腱索などの心室内構造物は,不整脈の発生と密接な関係があり,これらが心室不整脈に対する高周波カテーテルアブレーションの際に,治療の標的部位となることが報告されている.われわれは,心エコー図検査で左室内に偽腱索や乳頭筋肥大を認めた症例における心電図所見の特徴,特にJ波との関係を検討した.偽腱索を有する群は有さない群に比し,J波の出現頻度が有意に高く,QRS間隔が有意に長かった.偽腱索をその付着部位により4型に分類した結果,特に心室中隔と乳頭筋の間に付着する2つの型では,J波の出現頻度が高率であった.また,健常若年男性を対象にした前向き検討でも同様の結果が得られ,加算平均心電図記録で測定したfiltered-QRS durationも有意に長かった.一方,乳頭筋肥大を有する症例は有さない群に比し,J波の合併率が有意に大きく,QRS間隔,QTcおよびJTc時間が有意に長かった.偽腱索や乳頭筋などの心室内構造物が,J波の出現や不整脈の発生と関連がある可能性が示唆された.
  • 林 秀樹, 内貴 乃生, 宮本 証, 川口 民郎, 杉本 喜久, 伊藤 誠, Joel Q. Xue, 村上 義孝, 堀江 稔
    2015 年 34 巻 4 号 p. 368-376
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    近年,早期再分極が致死性不整脈発生の新たな心電図所見として注目されている.しかし,早期再分極のすべてが致死性不整脈の原因になっているわけではなく,良性と悪性が存在する.両者の鑑別は極めて重要である.われわれは,病院を受診した症例から構成された心電図データベースを用いて,様々なコホートにおいて早期再分極と致死性不整脈の関係を調べた.早期再分極は,思春期に頻度が高いことが認められ,Brugada症候群・QT短縮症候群・デバイス植込みの症例において,早期再分極と致死性不整脈発生の関係が認められた.今後,早期再分極と治療効果の関連を検討する必要があると考えられた.
症例
  • 酒井 徳昭, 松村 雅史
    2015 年 34 巻 4 号 p. 377-381
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは心室期外収縮(premature ventricular contraction:PVC)後の心房ペーシングが自己のR波と重なることで生じる,心室の機能的アンダーセンシングに伴うT波上の心室ペーシング(Spike on T)を経験した.心室イベント後心房不応期(post ventricular atrial refractory period:PVARP)の延長は,逆行性室房伝導によるペースメーカ介在頻拍を防止することができる反面,最大追跡レートを制限してしまう.このため,PVCセンシング後のPVARPを1回のみ延長させる機能がある.このPVC後のPVARP自動延長アルゴリズムは,各メーカーによる機能に大差はない.しかし,延長されたPVARP内でP波をセンシングした後のペースメーカの反応はメーカーによって大きく異なり,その違いが今回のわれわれの経験したSpike on Tの要因の一つであることがわかった.PVC後の心房ペーシングが自己のR波と重なることで生ずるSpike on Tを回避するには,使用するデバイスのPVC反応の違いについて十分理解した上で,プログラムを行う必要性があると考えられた.
  • 横田 良司, 玉田 博之, 杉谷 勇季, 太居 洋平, 石川 千紗都, 上森 宣嗣, 三岡 仁和, 東儀 圭則, 胡内 一郎, 城谷 学
    2015 年 34 巻 4 号 p. 382-389
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.家族歴に特記すべきことなし.50歳の健診で心室期外収縮(PVC)を指摘されたが,症状なく放置.その後3年間に失神を5回,就寝中の尿失禁を2回経験した.失神はすべて座位で生じた.この間,トレッドミル試験で右室流出路起源と考えられるPVCが誘発され,他院でヘッドアップチルト試験により血管弛緩型の反射性失神と診断された.5回目の失神は自然回復せず,救急隊により自動体外式除細動器で心室細動が確認され,除細動された.搬送中の心電図モニターではPVCをきっかけに多形性心室頻拍が繰り返されていた.12誘導心電図はBrugada型ST上昇や早期再分極,J波を示さなかった.ICD植込み9ヵ月後,早朝就寝中に適切作動し除細動された.特発性心室細動で反射性失神と運動により誘発される右室流出路起源PVCを合併し,示唆に富む症例と考えられたため,ここに報告する.
  • 加藤 真史, 内田 文也, 西村 善幸, 後藤 貢士, 内藤 滋人, 西川 英郎
    2015 年 34 巻 4 号 p. 390-401
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/27
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.約10年前に他院で,心房細動(AF)に対する高周波カテーテルアブレーションの既往が2回ある.2010年2月に重症僧帽弁閉鎖不全症とAFによる心不全を発症し当院入院,同年5月に当院心臓血管外科で僧帽弁置換術(機械弁)+メイズ手術(冷凍凝固)が施行された.以後,アミオダロン内服下に洞調律を維持していたが,2011年1月にアミオダロンを中止したところ,2ヵ月後に210bpmの心房頻拍(AT)を発症し,同年4月に高周波カテーテルアブレーションを行った.4本とも遅延した左房-肺静脈間の伝導再開を認めたため,まずは,同側両肺静脈拡大隔離術を実施した.その後,冠静脈洞からの頻回刺激で僧帽弁輪を時計方向に旋回するAT(周期320msec)が容易に誘発され,臨床的にとらえられたATと同一であった.左房心内膜側から左下肺静脈-僧帽弁輪間峡部へのブロックライン作成を試みたが心房内興奮順序に変化なく,AT周期が延長した.心内膜アプローチでは貫壁性アブレーション困難と考え,冠静脈洞側から通電を行ったところ,ATが停止した.最終成功通電部位は左下肺静脈-僧帽弁輪間峡部の心外膜側であり,左下肺静脈-僧帽弁輪間峡部のブロックライン形成に冠静脈洞からのアプローチが有用と考えられた.
モデル解析の視点
追悼
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