心電図
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35 巻, 4 号
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Editorial
総説
  • 村上 慎吾, 稲野辺 厚, 倉智 嘉久
    2016 年 35 巻 4 号 p. 245-257
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    アセチルコリンは,心臓のアセチルコリン感受性カリウム電流(IK.ACh)を増加させる.この増加されたIK.AChの電流量は,数秒で緩やかに減少する.この現象は短期脱感作(short-term desensitization)とよばれ,その実験的特性はすでに明らかにされているものの,その分子基盤や生理的役割は十分検討されてこなかった.そこで,IK.AChの活性化過程の数学的モデルを構築し,短期脱感作を定量的に再現する必要条件を探索した.その結果,2つの条件の重要性が判明した.一つ目は,アセチルコリンに対して異なる親和性をもつ2つのムスカリン受容体(M2受容体)の存在である.この2成分のM2受容体は,幅広いアセチルコリン濃度下でのIK.AChの応答の再現に必須であった.二つ目は,G蛋白質のβγサブユニットに対して異なる親和性をもつ2つのKAChチャネルである.この2成分のKAChチャネルは,短期脱感作の経時変化の特徴である電流量減少の再現に必要であった.これらの条件を合わせると,(1)0.01μMから100μMという幅広いアセチルコリン濃度下での電流量の経時変化,(2)アセチルコリン前灌流の効果,(3)短期脱感作からの回復という実験的に観察されるIK.AChの特性が,定量的に再現できた.さらに,短期脱感作の心臓における役割を検討するために,洞房結節の活動電位モデルに本IK.AChモデルを導入し,アセチルコリンの添加効果を調べた.すると,過度な迷走神経刺激による自発的心臓興奮の停止および復活という一過性の現象が観察された.これは,vagal escapeとよばれる組織レベルの生理現象に該当すると考えられた.以上の結果から,洞結節細胞レベルで観察されるIK.AChの短期脱感作が,組織レベルで観察されるvagal escapeの分子基盤である可能性が示唆された.
症例
  • 水野 聖子, 松永 正紀, 望月 優作, 柳沼 和恵, 井口 恵介, 白木 克典, 仲野 友康
    2016 年 35 巻 4 号 p. 258-263
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,女性.既往歴に特記事項なし.妊娠15週頃から動悸の自覚があり,自己検脈では120~130/分の頻脈であった.採血では甲状腺機能は正常範囲,心エコーで器質的異常を認めなかったため,100/分程の洞性頻脈として経過観察となった.その後,妊娠29週に170/分台の頻脈が持続し,当科紹介となった.心電図上,心拍数160~180/分のlong RP’tachycardiaを認めた.アデノシン三リン酸10~20mg急速静注により数拍は洞調律となるものの,warm-up現象を呈してすぐに再発した.プロプラノロール2mg静注により130/分まで徐拍化したが,増量によるさらなる上乗せ効果はなかった.ピルシカイニド追加でも停止は得られず,ベラパミルも無効であった.アブレーションや早期の帝王切開も念頭に,少量のβ遮断薬メトプロロール40mg/日内服を開始したところ,徐々に脈拍コントロール良好となり,20mg/日までの量で管理可能であった.妊娠前の健診時心電図は心拍数50/分台の洞調律であったが,妊娠17週の心電図ではP波形が異なり,心房頻拍を呈していたと考えられた.出産後は,自然に洞調律となった.妊娠に伴う異所性自動能亢進による心房頻拍に対して,少量のβ遮断薬が有効であった.
これだけは知っておきたい!
忘れえぬ心電図
学会レポート
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