心電図
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36 巻, 4 号
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Editorial
原 著
  • —持続性心房細動に対する使用成績調査—
    鵜久森 直美, 岩倉 美佳, 辻 智弘, 原 満良, 宮崎 公孝, 小川 聡
    2016 年 36 巻 4 号 p. 269-295
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/02/11
    ジャーナル フリー
    ベプリジル塩酸塩水和物錠(ベプリコール(R)錠;以下,本剤)の市販後の持続性心房細動(AF)に対する使用成績調査を,2009年5月から2012年6月までの期間において実施した.7日以上持続する持続性AFを有し,他の抗不整脈薬が使用できない,もしくは無効であり,本剤が初回投与である患者を対象に,プロスペクティブな中央登録方式にて,観察期間12週の使用成績調査,さらに12週時点で本剤が継続投与されていた症例については総観察期間52週の追跡調査を実施し,97施設の医療機関から501例を回収した.集計除外症例を除いた安全性集計症例496例,有効性集計症例450例について,安全性および有効性の検討を行った.安全性集計症例全体での本剤平均投与期間(観察期間)は267.5±128.5日であった.本調査期間中の副作用発現症例率は安全性集計症例において19.6%(97例/496例)で,主な副作用は,心電図QT延長(57件,11.5%),肝機能異常(8件,1.6%),徐脈(5件,1.0%),肝障害•腎機能障害•倦怠感•血圧低下(各3件,0.6%)などであった.Torsade de pointesが2件(0.4%)発現したが,いずれも軽快あるいは回復した.間質性肺疾患が1件(0.2%)発現し,回復したものの後遺症が認められた.その他の重篤な心臓系の副作用として,心房粗動•心停止•洞不全症候群•洞停止が各1件(0.2%)認められたが,いずれも軽快あるいは回復した.また,心不全(心不全の増悪)が2件(0.4%)発現したが,いずれも非重篤で回復した.有効性については,本剤投与後52週までに,一度でも洞調律化した場合を有効と規定した.有効性集計症例における有効率は59.6%(268例/450例)であった.また,有効例における洞調律維持率は66.8%(179例/268例)であった.以上,本調査結果からは,有効性上の懸念点は認められなかった.安全性に関しては,新たな懸念点は認められなかったが,重篤な副作用を回避するためには,承認された用法•用量および添付文書中の使用上の注意を遵守することの重要性が再確認された.
これだけは知っておきたい!
忘れえぬ心電図
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研究会レポート
追 悼
第24回頻拍症カンファランス「心臓と自律神経」より
  • 井上 博
    2016 年 36 巻 4 号 p. 315-327
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/02/11
    ジャーナル フリー
    交感神経と副交感神経は心機能や血圧の調節に密接に関与している.交感神経興奮は不応期短縮,伝導性亢進から様々な頻脈性不整脈を発生する.この関連を支持する所見には,運動や精神的緊張による不整脈誘発,心臓性急死や心室細動の日内変動,星状神経節摘除術による難治性心室性不整脈の抑制などがある.副交感神経(迷走神経)の興奮は多くの場合,頻脈性不整脈抑制に働き,心拍変動,圧受容体反射機能などにより迷走神経緊張度が高いと評価された例では生命予後がよい.しかし例外があり,交感神経•迷走神経興奮はいずれも心房細動(AF)発生を促し,Brugada症候群やJ波症候群では迷走神経緊張が心室細動発生に関係する.近年では,肺静脈隔離術に加えてganglionated plexusにアブレーションを行うと,AF再発が抑制されることが明らかになった.さらに,腎交感神経アブレーションが治療抵抗性AFの再発や心室頻拍ストームを抑制することも明らかになってきた.
  • 金澤 英明
    2016 年 36 巻 4 号 p. 328-333
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/02/11
    ジャーナル フリー
    心臓交感神経は,心筋における神経成長因子やセマフォリン3aの発現によって,その神経分布が規定されていることが明らかとなっている.これらの因子の発現パターンは病的状態または遺伝的要因によって変化し,それに伴って心臓交感神経の分布が変化し,不整脈や突然死の原因となることが示唆されている.また,心筋細胞と心臓交感神経の間には,さまざまな神経体液性因子を介したクロストークが存在することが明らかとなり,心不全や不整脈の病態生理にかかわる交感神経線維の軸索伸張,除神経,機能変化(交感神経から副交感神経)といった現象も分子生物学的に解明されつつあり,心臓交感神経自体の解剖学的,機能的変化による病態修飾が存在すると考えられている.さらに,多臓器連関という概念から,自律神経系に介入する新しい治療戦略も展開され,その多面的効果が期待されている.
  • 山下 武志
    2016 年 36 巻 4 号 p. 334-343
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/02/11
    ジャーナル フリー
    心房細動により生じる自律神経リモデリングは,実験動物およびヒトにおいて報告されているが,その報告は電気的リモデリングや器質的リモデリングに比べると圧倒的に少ない.そこで,心臓外科手術において摘出される左心耳標本を用いて,交感•副交感神経の分布を描写し,その密度に関与する臨床指標の同定とその基礎的なメカニズムについて考察した.自律神経密度は患者個体により大きく異なっており,臨床指標との関連を見出しにくいものの,心房線維化の進行した症例では副交感神経のdenervationが認められやすかった.一方,交感神経および副交感神経の密度は,心房に含まれる神経栄養因子の蛋白発現に依存し,その発現によって個体による多様性が生じていると考えられた.副交感神経の神経栄養因子であるBDNFは幼弱な筋線維芽細胞に発現する一方で,交感神経の神経栄養因子であるNGF,LIFはマクロファージに発現していた.このような観察は,末梢神経一般に見られるWallerian degenerationに酷似しており,病態に伴う神経障害とその再生という概念が適応できるものと考えられる.
  • 小林 義典, 森田 典成, 飯田 剛幸, 上野 亮
    2016 年 36 巻 4 号 p. 344-353
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/02/11
    ジャーナル フリー
    心房細動(AF)の発生には自律神経が深く関与している.心臓の調律や収縮を支配する自律神経には,主に心房近傍に局在する自律神経叢(Ganglionated plexi : GP)(内因性自律神経系)と,脳幹部中枢,頸部迷走神経幹や傍脊髄交感神経幹などの外因性自律神経系が存在し,これらが複雑な情報伝達ネットワークを形成している.このため,外因性自律神経系を修飾することにより,AFの発生を抑制する可能性があり,現在は腎交感神経アブレーションやペースメーカー•システムを用いた低出力頸部迷走神経刺激法が注目されている.ただ,これら治療法の臨床的効果については十分なデータの蓄積がなく,今後の課題である.GPアブレーションに関しては,AFに対する標準的治療法である肺静脈隔離術(PVI)に追加することで,AFの再発をPVI単独に比べてより低く抑えることができるとの報告がある.特に発作性AFでは無作為割り付け試験の報告があり,AFアブレーションの追加的手技の一つとして確立されている.GPアブレーションは,高出力高頻度ペーシングを用いてGP反応が認められた領域にアブレーションを行う選択的GPアブレーションと,GPが存在するであろう領域を治療する解剖学的GPアブレーションがある.どちらの治療効果が優れているかは明らかではない.本稿ではAF治療における侵襲的自律神経修飾法について解説する.
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