心電図
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7 巻, Suppl2 号
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  • 倉智 嘉久, 中島 敏明, 杉本 恒明
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 3-8
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    アセチルコリン (ACh) 及びアデノシン (Ado) による心臓K+チャネル活性化の分子機構について, モルモット単一心房筋細胞を用い検討した.パッチ電極によるwhole cell clamp及びpatch clamp法を用いた.我々の検討により次の事が明らかになった. (1) AChとAdoは全く異なった膜受容体 (muscarinic ACh-R, P1-purinergic R) を介して, 同一の特異的なK+チャネルを活性化する. (2) GTP-binding protein (Ni或いはNo) が膜受容体とK+チャネルを共役している. (3) このK+チャネルの活性化には細胞内second messengerは関与していない.
  • 羽渕 義純, 野田 剛毅, 西村 昌雄, 渡部 良夫
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 9-15
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ウサギ洞結節の緩徐な内向き電流 (isi) の不活性化からの回復過程を二連パルス (P1, P2) を用いた電圧固定実験で検討した.標本のK+電流はnystatinによるCs+負荷で抑制した.50msec幅のP1の場合, P2に際してのisiは-40mVの膜電位で時定数84±25msecの速い回復を示し, P1幅を延長させると, P2に際してのisiの回復は時定数2sec程度の遅い回復相が加わることにより遅延した.次に-10mVと+20mVの二つのP1電位を比較すると, P2でのisiは速い回復相においてはP1-10mVの方が強く不活性化され, 逆に遅い回復相ではP1+20mVの方が不活性化は強かった.50msec幅のP1を用いて作製した不活性化曲線はisiの電流電圧曲線と同様なU字形を示し, 300msec幅P1を与えて500msec後に求めた不活性化曲線はf曲線に類似した.isiの速い回復はCa2+依存性の, 遅い回復は電位依存性の不活性化からの回復をそれぞれ表し, Ca2+依存性不活性化には定常状態のCa2+流入も関与していることが示唆された.
  • 高柳 寛
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 16-20
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    洞房結節は自動能をもった多数のペースメーカー細胞が電気的に結合されて一つの調律を形成しているが, 自動能をもった組織に閾下通電を行なうとその時相により周期長は修飾される.この原理にもとついて, 洞房結節片標本の中央部をouabainで灌流し, 両端のペースメーカー間のdissociationの状態からwashout後の同期に至る過程を詳細に検討した.その経過は1) 両者は完全に独立→2) 周期長は異なるが二つの自動能が影響し合う→3) 周期長は一致するが大きな遅れがある→4) 遅れの短縮という四期に分類された.特に2) の時期は両者の興奮が, 閾下通電と同じ効果で互いの周期長に影響し合い, 同期直前に最大となる大きな“ゆれ”として認められた.この現象は, 他の培養心筋やコンピューターシュミレーションでも再現されており, 二つの周期長の近い自動能組織間に共通してみられるものと考えられた.
  • 小竹 寛, 長谷川 純一, 真柴 裕人
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 21-24
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    第I群抗不整脈薬のCaチャネルに対する電気的抑制効果を調べるため, aprindine (A) , cibenzoline (C) , disopyramide (D) , lidocaine (L) , mexiletine (M) および711389-S (S) のウサギ洞結節膜電位・膜電流に及ぼす作用を検討した.A, C, D, L, M, Sの全ての薬剤により陰性変時作用, 活動電位最大立ち上り速度の低下が認められた.また膜電位固定実験により, 遅い内向き電流 (Isi) ・カリウム電流 (Ik) ・過分極で活性化される電流 (Ih) の減少及びIsiの不活性化過程からの回復の遅延が認められた.このようなslow response fiberにおける電気的抑制効果はIa・Ib群とは関連なく, A>S>C=D>M≧Lの順に強く, 分子量の比較的大きいslow kinetic drugの方がfast drugに比べ強い傾向にあることが示唆された.
  • 木谷 文博, 清水 昭彦, 深谷 真彦, 橋場 邦武
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 25-29
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    洞不全症候群 (SSS) 症例の中には, 心房ペーシング後に心室の補充収縮は出現するが, 洞性または逆行性P波の出現が遅れ, 最初のP波までの時間が20秒以上にも及ぶ例がある.本研究では, このような高度心房停止を認めた症例の電気生理学的所見について報告した.対象はSSS130例で, Rubenstein分類ではI群26例, II群44例, III群60例であった.心房ペーシング後の最大心房停止時間 (max AS) が20秒以上となったのは1群中には1例もなく, II群中の5例およびIII群中の2例の計7例 (5.4%) で, 最長は42.46秒であった.これらの7例においてmax ASが得られたペーシング頻度は130~210/分で, ペーシング後の第1拍目のP-P間隔がmax ASとなったのが5例, 第2拍目以降となったのが2例であった.高度心房停止の成立には, 洞結節自動能の抑制のみならず, ペーシング後の疲労現象によると思われる高度洞房ブロックと, 室房ブロックの存在が必要と思われた.
  • 中谷 晴昭, 當瀬 規嗣, 菅野 盛夫
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 30-36
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    再灌流不整脈の発現機序を明らかにするため, 摘出心筋において過酸化脂質を産生させた際の電気生理学的変化を検討し, 虚血時不整脈発現因子とされるlysophosphatidylcholine (LPC) および長鎖acyl camitine (AC) 等の両親媒性脂質による電気生理学的異常と比較した.摘出イヌPurkinje線維およびモルモット乳頭筋においてhydroperoxidesにより過酸化脂質を産生させると, LPCやACを灌流した際と同様に, 静止膜電位が減少し, 活動電位高, 最大立上り速度が減少した.乳頭筋においては静止張力, 発生張力の増加と共に遅延後脱分極, triggered activityの発現が認められた.この様に, 心筋細胞膜脂質の過酸化は, 両親媒性脂質増加時と非常に類似した電気生理学的異常および収縮異常を惹起し, 再灌流不整脈および再灌流時心機能障害の一要因になり得る可能性が示唆された.
  • 鍵谷 俊文, 内田 修次, 水島 淳, 吉田 博, 井上 通敏
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 37-42
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心筋収縮に対するムスカリン様アセチルコリン受容体 (mAChR) のアゴニストによる抑制効果は, 一過性でありshort-term desensitizationとして知られている.この機序を解明するために, モルモット心室筋をカルバコールにて10分間灌流し, [3H] QNBを用いたradioligand assayによりmAChRの変化を検討した.
    short-term desensitization時には, [3H] QNBの心室筋膜分画への結合には変化がなく, mAChRの数には変化がないと考えられた.しかし, [3H] QNB結合のカルバコールによる阻害曲線はshort-term desensitizationにより右方に偏位し, アゴニストに対する親和性の低下が認められた.阻害曲線の解析から, この親和性の低下はアゴニスト結合状態のサブクラスの変換によりもたらされていると考えられた.
    したがって, アゴニスト刺激によるmAChRのshort-term desensitization時には, 受容体数の減少ではなく, アゴニストに対する親和性の低下が起きていると考えられた.
  • 宮崎 利久, 小川 聡, 細川 美千代, 酒井 隆, 桜井 謙治, 中村 芳郎
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 43-51
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    冠動脈閉塞後の心室自動能の経時的変化と再灌流による変化を閉胸犬モデルを用いて検討した.迷走神経刺激による洞調律抑制時の心室補充収縮の出現間隔 (VEI) は冠動脈閉塞後徐々に短縮し, 4時間には平均0.71秒と洞周期近くまで短縮した.3~8時間には自動能の昂進 (enhanced automaticity) によって, 心室性期外収縮あるいは比較的周期の長い心室頻拍 (VT) が出現した.左室型の9種類のVT中4種類は梗塞領域内, 5種類は梗塞巣に隣接する非梗塞部心筋から発生していた.VTはVerapamil, Diltiazem, Propranololによって抑制されたがLidocaineでは変化しなかった.4時間の時点での再灌流によりVEIはさらに有意に短縮した.再灌流に伴う心室自動能の昂進はVerapamilによって予防された.以上の成績から, 急性心筋梗塞早期および再灌流時の心室自動能昂進にはこうした異常環境下で活性化されるCaイオン電流が重要な役割を演じている可能性が示唆された.
  • 秋山 健太郎, 橋本 敬太郎
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 52-56
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ジギタリス中毒による不整脈発生機序として, 振動性後電位によるtriggered activityが注目される.この現象は, 微小電極法を用いた実験では証明されているが丸ごとの心臓を用いた動物実験での検討は充分でないので, その作製を試みた.その結果, 少量のウワバイン静注と連続心室刺激により心室性期外収縮が誘発されることが証明され, 刺激間隔が短いほど心室性期外収縮の連結時間が短くなることが観察された.さらにこの頻回刺激により誘発された心室性期外収縮に対して抗不整脈薬を投与したところリドカイン (3mg/kg) は有効であったがベラバミル (0.2mg/kg) には心室性期外収縮数をわずかに減少させる作用しか認められなかった.
  • 大塚 邦明, 小沢 利男
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 57-67
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Torsade de pointes (TdP) の発現に上位交感神経中枢の一つである視床下部が関与しているか否か実験的に検討した.STD: Wistar雄性ラットはouabainによるTdP発現に再現性があり実験系としてすぐれていた.抗NGF抗体を投与することによりimmunosympathectomyを行ったラットではTdPの発現が著明に抑制された.一方, 左迷走神経を切断し慢性飼育したラットではTdPの発現閾値は変化しなかった.視床下部上位での脳髄切断によりTdPの発現閾値の変化はみられなかったが, 視床下部下位での切断では心拍数の著しい亢進とともにTdP発現閾値の著明な低下が観察された.またpropranolol前処置によりこの閾値の低下は抑制された.視床下部に存在する上位交感神経中枢の興奮に伴い著しい交感神経系の緊張がもたらされてTdPの閾値が低下したと推測される.
  • 木村 龍範, 今西 愿, 有田 真
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 68-71
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒト心房筋には正常Tyrode液下で自動性放電を示すものが約42%存在する.これらは周期長 (CL) によりType I (CL≧1.5秒) とType II (CL<1.5秒) に大別できる.Type Iはouabain (1μM) の添加や低Na+液による潅流で, 〔Ca2+iを増加させるとType II自動能に変化した (Type II') .Type I自動能はcaffeine (5~15mM) 添加により亢進したが, Type II, Type II'自動能は強く抑制された.また, 筋小胞体 (SR) からのCa2+放出を抑制するryanodine (1μM) は, Type II, Type II'自動能のみを強く抑制し, Type I自動能には影響しなかった.以上より, Type I自動能の歩調取り電位にはslow inward currentが, また, Type II, Type II'自動能の発生にはSRからの周期的Ca2+放出がそれぞれ強く関与していると推定される.一方, 術前の右房拡張の程度と摘出心房筋の示す自動能のCLとの間には有意な相関があり, 拡張の強い症例では術前digitalis剤投与がなくてもType II自動能を示した.また, 術前digitalis剤投与群での自動能は全てType IIを示した.
  • 岡田 了三, 岩 喬, 橋場 邦武
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 72-77
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    第1例, 19歳男, 1年10ヵ月に及ぶ持続性左房頻拍症の左心耳およびその付根付近の外科的切除標本.第2例, 19歳女, 白血病, 1年間の持続性左房性頻拍症の剖検心.第1例の全標本, 第2例の洞結節, 心房, 房室伝導系の連続切片を作製し, 10~20枚に1枚ずつヘマトキシリンーエオジンおよびワイゲルトーワンギーソン染色を施して光学顕微鏡的に検索した.
    2例とも左心耳付根上内側に小細胞集団を発見した.大きさは洞結節の数分の1で, 移行 (T) 細胞に似た小型細胞より成り, 比較的太い動脈枝, 神経成分を含む.左側洞結節の痕跡とも考えられる異所性自働中枢とみなされた.第2例では冠状静脈洞開口部付近にも小結節様構造物を認めた.
  • 諸江 一男, 広木 忠行, 佐々木 靖, 福田 圭介, 荒川 規矩男
    1987 年 7 巻 Suppl2 号 p. 78-84
    発行日: 1987/10/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    電気的房室接合部破壊術による完全房室ブロック作製後の異所性自動能について検討した.経動脈性電気的房室接合部破壊術により房室ブロックを作製した雑種成犬26頭の通電出力と急性期および慢性期における右室ペーシング後の補充調律の回復時間, ブロック作製後6日間の補充調律頻度の変化を比較検討した.通電出力の大小により補充調律のQRS幅は左右されるが, その周期は影響を受けなかった.通電量が大きく, 且つ補充調律が遅いほど自動能の抑制が強かった.また, 硫酸アトロピン投与により異所性自動能が抑制されたことは, アトロピンが補充調律部位への進入ブロックを改善したためと考えられる.房室ブロック作製後6日間連続ホルター記録より補充調律頻度が徐々に減少した原因として, 下位のペースメーカー部位への移動および異所性ペースメーカーの固有頻度の減少が推測される.
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