心電図
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9 巻, 2 号
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  • ―Entrainment後の周期およびentrainment中の心房興奮伝播過程―
    井上 博, 杉本 恒明
    1989 年 9 巻 2 号 p. 157-164
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Rosenbluethらの方法を用いて麻酔開胸犬7頭に興奮旋回による心房粗動を作成し, entrainment後の最初の周期およびentrainment中の興奮伝播過程を検討した.粗動周期は平均140msecでentrainmentは左心耳, 右心耳, 低位右房の3ヵ所から行い, ペーシング周期は粗動周期の約94%とした.心房電位は右房4ヵ所, 左房3ヵ所から記録した.Entrainment後の最初の周期は, 記録部位と刺激部位の興奮旋回路に対する相対的な位置関係により, 基本の粗動周期と比較して不変, 延長, 短縮のいずれかとなる.離れた2ヵ所から同一のペーシング周期でentrainmentを行うと, その間に挾まれた複数個所の興奮伝播過程が同一となる.この最後の現象は興奮旋回が粗動の機序であることを支持する所見と考えられる.以上の所見は臨床例でのentrainmentの特徴を考察する上で有用な手がかりを与える.
  • 加藤 林也, 鈴木 正之
    1989 年 9 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    房室回帰頻拍 (AVRT) におけるリエントリー路の形成を検討するため, 副伝導路を有する例において, 心房の不応期 (AERP) と心房echo出現時の房室伝導時間 (AVCT) を検討した.顕在性WPW症候群の6例では, 副伝導路の順伝導が途絶し, AVCT (236.7±29.6msec) がAERP (211.7±24.8msec) より長くなった早期刺激時に心房echoが生じた.房室結節内二重伝導路を有する潜在性WPW症候群4例では, 全例でfast pathwayの不応期に一致して心房echoが生じた.AVCTはfast pathway経由時では208.3±24.7msec, slow pathway経由時では250.0±33.4msec, AERPは226.3±14.9msecであった.潜在性WPW症候群の13例では心房echo出現時のAVCTはAERPと近似していた (220.0±27.8vs226.3±31.6msec) .以上よりAVRTにおけるリエントリー路の形成には副伝導路での一方向性ブロックと, 心房筋の不応期を凌駕する房室伝導遅延が不可欠であることが確認された.
  • 鈴木 文男, 川良 徳弘, 田中 一司, 原田 智雄, 遠藤 岳, 金沢 芳樹, 沖重 薫, 平尾 見三, 比江嶋 一昌
    1989 年 9 巻 2 号 p. 171-179
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    潜在性WPW症候群のKent (K) 束は, 正伝導性にはインパルスを伝導しえないが, 正伝導性にconcealed conduction (CC) が存在するか否かは不明である.今回著者らは, 潜在性WPW症候群12例を対象として, 通常の心室期外刺激 (VE) 法 (通常法) と, 基本刺激として心房心室を同時ペーシングした後VEを与えるVE法 (同時法) を行ない, 各々の症例においてK束の有効不応期 (ERP) の値を比較した.
    K束のERPは, 通常法による場合に比べて, 右房を同時ペーシングする同時法を行なった12例中5例でその短縮をみた.他方, 左房を同時ペーシングする同時法を行なった7例では, 全例でERPの短縮をみた.このK束のERPの短縮の機序としては, 基本ペーシング時における心房側からの潜在性K束へのCCの存在の故に, その不応期が“peel back”されるためということが考えられた.すなわち, K束のERPが短縮したという事実が, CCの存在を証明する証拠であると思われた.
  • 小川 聡, 佐藤 吉弘, 古野 泉, 楊 志成, 佐伯 公子, 中村 芳郎
    1989 年 9 巻 2 号 p. 181-188
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心室頻拍発生に至るリエントリー路の形成過程およびその規定因子を7日目心筋梗塞犬モデルで検討した.冠動脈左前下行枝結紮後7日が経過した犬では, 貫壁性梗塞表面を薄く覆う残存心筋が二次元的リエントリー形成のためのanatomical substrateを構成する.同部には洞調律時よりlate potentialやfragmented activityが記録され, 伝導遅延の存在が示唆された.この残存心筋層の有効不応期は梗塞中心部ほど延長し, 周辺部との間に不応期の不均一性を示した.心室早期刺激を加えると, 不応期不均一性を示す部位に沿って機能性一方向性ブロック領域が形成され, 興奮波はこの領域を迂回して旋回し, ブロック遠位部に遅れて到達した.この遅れがブロック近位部の不応期を上回ると同部の再興奮が生じ, リエントリー路が形成された.リエントリー持続中の種々の頻度の心室刺激によりresetting, concealed perpetuation, termination, reinitiation等が観察された.
  • 奥村 謙, 松山 公士, 泰江 弘文, Albert L. Waldo
    1989 年 9 巻 2 号 p. 189-194
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    反復性心室性頻拍症 (VT) の発症機序を検討するためにVT中に心室ペーシングを行ないエントレインメント現象の観察を行なった.心筋梗塞に合併したVT9例 (I群) と左室起源の特発性VT4例 (II群) を対象とした.VTを誘発, 左室心内膜マッピングを行ない最早期興奮部位 (A) を検出後, VTより5~10拍/分速いレートでペーシングを行なった.I群では12の異なるVTが誘発され, そのうち11のVTでペーシング中に心電図上constant fusion beatsが, さらに8のVTではペーシングレートの増加にてprogressive fusionが観察された.II群では全例でconstant fusion, progressive fusionが観察された.エントレインメント中の伝導時間を解析すると, ペーシング部位よりA点までの伝導は著明に延長しており, その説明としてslow conduction部位を介する伝導が考えられた.I, II群ともにVTの機序はリエントリーで, その回路内にはslow conduction部位が存在することが強く示唆された.
  • ―リエントリー回路の確認は可能か―
    磯部 文隆, 藤田 毅, 小坂井 嘉夫, 大江 透
    1989 年 9 巻 2 号 p. 195-204
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    外科治療の対象となる心室頻拍 (VT) の多くは, リエントリー機序とされる.陳旧性心筋梗塞 (OMI) 11例, 不整脈源性右室異形成 (ARVD) 7例, 特発性心室頻拍 (Idp VT) 2例の手術例において, リエントリー機序を担う興奮旋回回路が確認しえるものかどうか術前術中電気生理学的検査所見から検討した.
    興奮旋回回路として, OMI例の前壁中隔梗塞や広範前壁梗塞例では, 小範囲での興奮旋回の出口である最早期興奮部位から周囲に波紋状に受動的に興奮伝播する興奮伝播様式を, Idp VT例では極小範囲内での興奮旋回が直ちに刺激伝導系を介して他の心筋に速く伝播する興奮伝播様式を示した.一方, 後下壁心筋梗塞例やARVD例では, 一見傷害部位の周囲を旋回する広範囲の興奮旋回様式を示したが, 旋回回路を担うと思われた瘤周囲や心筋に凍結凝固や心室切開を施行したところVTは停止せず, 結局小範囲での興奮旋回が示唆された.
  • 三崎 拓郎, 向井 恵一, 坪田 誠, 松永 康弘, 大竹 裕志, 岩 喬
    1989 年 9 巻 2 号 p. 205-209
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    非虚血性心室性頻拍の4症例で術中心表面マッピングを行ない, 臨床例でマクロリエントリー路の可視化を試みた.心表面マッピングは15チャンネル双極マット電極 (電極間距離1mm) での従来のコンピューター処理に加え, 遅延電位検出のため150~500Hzの直記式で行なった.この結果, 頻拍時拡張期の遅延電位は最早期興奮部位への再入波を形成しておりマクロリエントリー路の関与が推定された.回路の推定存在部位は症例1では左室心尖部, 症例2では右室流入路, 症例3, 4では右室流出路であった.手術はリエントリー回路の出口と考えられる拡張期の最も遅延電位検出部位の遅れる部位で, QRS波の最早期興奮部位を含めて行なった.これにより, 術後はこの回路を介すると考えられた頻拍は消失した.
  • ―Procainamideとの比較―
    佐藤 毅, 太田 晃, 矢崎 吉純, 関谷 宗一郎, 堤 健, 春見 建一
    1989 年 9 巻 2 号 p. 211-219
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    成犬の左心室を用いて, anodal刺激による心室細動閾値とstrength-interval曲線で表される心筋興奮性から, Ca拮抗薬の3薬剤, verapamil, prenylamine, bepridilの抗心室細動効果, およびその作用機序をprocainamideと比較し, これら3薬剤の抗細動作用の特徴を臨床使用量に近い量を用いて検討した.心室細動閾値は, procainamide 10mg/kgで48%, prenylamine 5mg/kgで127%, bepridil 5mg/kgで104%の上昇が生じ (p<0.01) , prenylamine, bepridilはprocainamideを上回る抗心室細動作用を示した.一方, verapamil 0.5mg/kgは心室細動閾値に有意な変化を与えなかった.
    ProcainamideはS-I曲線上, 拡張期閾値, dip閾値不変で, 有効不応期のみを平均30msec延長させた (p<0.01) .Prenylamine, verapamilも同様であった.Bepridilは有効不応期を延長させ, dip閾値を373±267μAから812±257μAへ上昇させた (p<0.01) .Prenylamineの抗細動作用はprocainamideと同様, 心筋の不応期延長によるものと思われ, bepridilの作用機序は不応期延長とdipにおける心筋の興奮性低下によるものと推定された.
  • 松山 裕宇, 菱田 仁, 近松 均, 安井 直, 石黒 良明, 野場 万司, 水野 康, 川口 卓也, 後藤 敏之, 岡島 光治
    1989 年 9 巻 2 号 p. 221-231
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Late potential (LP) は, 致死性心室性不整脈の発生と関係があり従来よりその検出に力が注がれてきた.しかし, LPは本来局所的なものであり体表面からその分布を知り得ればLP検出に適した誘導法が検討でき, 不整脈の発生源となる病変部位を推定できる可能性がある.我々はアナログ型濾波器 (100-250Hz) と加算平均処理装置 (512心拍) を含む独自のシステムを用いてLPの単極誘導記録を試みた.誘導点は, 左室前壁, 下壁, 右室の起電力を反映する計九つの単極誘導である.LPの分布は前胸壁上四つのパターンに分類でき, 各々病変部位に関係し広範囲に出現する症例では予後が悪い傾向にあった.また, LP持続時間も誘導点により異なっており, LPの局所性が体表面に反映されていることが示された.ART社製Model 101PCのLP記録を基準にすると, 我々の方法によるLP判定のsensitivityは90%, specificityは89%であった.
  • 田辺 一明, 泉 司郎, 石川 成範, 石橋 豊, 松野 好男, 本田 正明, 村上 林児, 島田 俊夫, 盛岡 茂文, 森山 勝利
    1989 年 9 巻 2 号 p. 235-242
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Frank誘導ベクトル心電図にコンピュータ処理を加え, ベクトル環の向きによりカラー象限表示するシステム, カラー表示空間マッピング心電図の電位図化を行い実用化した.今回, 本法の有用性を, 陳旧性心筋梗塞例23例 (前壁梗塞例11例, 下壁梗塞例9例, 純後壁梗塞例3例) , 健常例10例について検討した.使用した装置はCERX社製CQ-3011およびNEC社製コンピュータPC-100である.本法による電位図は, 心起電力を単一双極子と仮定するベクトル心電図より得られたもので, 従来の電位図と比較して局所電位の把握には限界があると考えられた.しかし, 体表面電位図化することによりベクトル心電図が空間的に認識しやすい表示法となり, 梗塞部位の診断に加えて前壁梗塞例では異常な負領域の面積により, また下壁および後壁梗塞では異常な負領域の部位と経時的変化により梗塞範囲の推定が可能であった.
  • ―器質的心疾患の有無ならびに加齢の影響を含めて―
    佐藤 美智子, 田辺 晃久
    1989 年 9 巻 2 号 p. 243-252
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    発作性心房細動 (Paf) と上室頻拍 (SVT) の日内発生様式ならびに日内発生様式に対する加齢の影響, 器質的心疾患の有無による差を検討した.対象はPaf37例, SVT67例で, Paf, SVTの発生時間帯をホルター心電図法によりもとめた.発生時間帯は自律神経緊張の日内リズムに関する文献を参考に, 早朝, 日中, 夕夜, 深夜の4時間帯に分けた.65歳以上を老年群, 未満を非老年群とした.Paf例数は非器質的心疾患 (NHD) では夕夜が他の各時間帯に比べ有意に多かった (p<0.05~p<0.01) が器質的心疾患 (OHD) では各時間帯に有意差はなかった.SVT例数はOHD, NHDとも各時間帯間に有意差はなかった.Paf例数は老年群に比べ非老年群が多く (OHD: p<0.05, NHD: p<0.01) , NHD非老年群では夕夜Pafが日中, 深夜Pafに比べ有意に多かった (各p<0.05) .一方, SVT例数は非老年群に比べ老年群が多かった (OHD: p<0.05, NHD: p<0.1) .
    以上よりPafとSVTの日内発生様式は異なるという成績が得られた.また (1) NHD非老年群に夕夜Pafが多かったこと, (2) 夕夜は自律神経緊張の日内リズムで交感神経緊張優位から迷走神経緊張優位への移行期と考えられること, (3) 夕夜Paf例の中に交感神経緊張の生じるトレッドミル運動負荷直後に発作性上室頻拍を生じ迷走神経緊張の生じるバルサルバ手技にてPafへの移行例があったこと, などから本研究はPaf発生に関する動物実験成績の交感神経-迷走神経相互干渉説を支持する一つの臨床データと考えられた.
  • 徳竹 英一, 渡辺 一郎, 小倉 敏嗣, 斉藤 友昭, 梶田 潤一郎, 鎌田 智彦, 日比谷 和平, 高橋 信博, 斉藤 頴, 小沢友 紀雄 ...
    1989 年 9 巻 2 号 p. 253-263
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    虚血心筋の電気生理学的特性に対するbretylium (以下B) 静注 (15mg/kg) およびsotalol (以下S) 静注 (0.5mg/kg) の作用を検討した.犬20頭を用いBあるいはS投与前後でLADを10分間結紮して急性心筋虚血を作成し電気生理学的計測を行なった. (1) 結紮前の左室心筋の伝導時間および虚血心筋内伝導遅延に対しBおよびSは影響を与えなかった. (2) 結紮前の左室心筋の不応期をBおよびSは有意に延長させた. (3) 10分間の冠動脈閉塞により虚血心筋の不応期は有意に短縮したが, BおよびS投与後は虚血心筋の不応期は結紮前に比し, 有意な変化が見られなかった. (4) 虚血部心筋間質K+の上昇の速度は薬剤投与後やや緩徐になったが, 統計学的に有意ではなかった. (5) 房室伝導に対してはB, SともにAH間隔の延長傾向を認めたが有意ではなく, HV間隔は不変であった.以上より心筋梗塞急性期においてBおよびS静注は虚血心筋の不応期を延長させ, 抗不整脈作用を示すことが示唆された.
  • 高橋 正, 大塚 英明, 岡部 正明, 松岡 東明, 庭野 慎一, 宮島 静一, 佐藤 政仁, 相沢 義房, 柴田 昭, 高橋 宏
    1989 年 9 巻 2 号 p. 265-272
    発行日: 1989/03/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    薬剤抵抗性持続型心室頻拍に対し, 電極カテーテルを介した電気焼灼法 (electrical ablation, EA) を行なった症例を経験したので報告する.症例は57歳の男性で, 各種抗不整脈剤に対し抵抗性であった.類似した2種類のVTがみられその一方のみ誘発可能で機序はリエントリーによるものと思われ, その最早期興奮部位は右室流出路であった.一度目のEAはElectro-catheter Josephson 6F (4極) を使用し, 二度目はElectro-catheter Cook 6F (3極) を使用し, 全身麻酔下に直流除細動器より50J, 70Jで計7回行なった.EA直後に一過性の非臨床的心室粗動を認めたが, 一週間後の電気生理検査では持続型VTは誘発されなかった.EA後右脚ブロックとなるも重篤な合併症なく2ヵ月間VTを認めなかったが, その後に再発を認めた.EA後は薬剤の投与で約1年間再発をみないが, 適時検査を考えている.
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