心電図
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9 巻, 3 号
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  • ―Holter心電図での検討―
    藤本 幸弘, 福木 昌治, 北村 秀之, 平井 章三, 山崎 純一, 長谷川 純一, 小竹 寛, 真柴 裕人
    1989 年 9 巻 3 号 p. 277-283
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の心拍数と不整脈について, Holter心電図で詳細に検討した.糖尿病患者と正常者 (各40例) の比較では, 心拍数において, 1日総心拍数, 最大心拍数で差がなかったが, 最小心拍数が糖尿病患者で有意に高かった.不整脈の頻度は, 心室性, 上室性とも糖尿病患者で多い傾向があった.次に, 糖尿病患者100例において, 心拍数異常と不整脈発生に及ぼす各種臨床的要因について検討した.最小心拍数の増加は罹病期間と神経症合併に関連して生じていた.不整脈では, 心室性期外収縮の多発に虚血性心疾患の合併が, 上室性期外収縮のrun, 一過性心房細動の多発には加齢が有意な要因と考えられた.しかし, いずれにも神経症, 細小血管症の関与は少なかった.
  • 石黒 良明, 菱田 仁, 近松 均, 安井 直, 松山 裕宇, 渡辺 佳彦, 水野 康, 北川 信之
    1989 年 9 巻 3 号 p. 284-292
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心臓の三次元起電力ベクトルを推測, 分析することを目的としてフランク誘導法を用いた3チャンネルポルターベクトル心電図システムを試作し, その信頼性につき検討を行った.システムは現行のアナログ方式のホルター心電図システムに改良を加え使用し, 波形処理には16bitパーソナルコンピュータを用いた.通常のベクトル心電図とほぼ一致するベクトル環を得るにはシステムの記録器, 再生器相互のテープヘッドの位置のずれ, およびテープ走行が不安定なために起こると思われるX, Y, Z誘導のチャンネル間の位相のずれと時相のずれのコンピュータによる補正が必要であった.健常者で検討したところ, 本システムでは通常のVCGに比して最大ベクトルの大きさが約80%に減少する傾向が見られた.原因としては周波数特性等が考えられた.本システムは心室頻拍, 心室性期外収縮の発生部位の推定, 心筋虚血による心起電力ベクトルの経時的変化の観察に有用と思われた.
  • 川久保 清, 大城 雅也, 戸田 為久, 中島 敏明, 三輪 篤子, 岡井 容子, 井上 博, 飯塚 昌彦, 杉本 恒明
    1989 年 9 巻 3 号 p. 293-299
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    運動負荷試験中から回復期にかけての心拍数 (横軸) とST下降度 (縦軸) の関係をHR-STループとして表わし, 冠動脈硬化症の重症度を推定することを試みた.対象は, トレッドミル負荷時に有意なST下降のみられた36例 (平均年齢54歳) であり, 有意狭窄無し (0VD) 12例, 1枝狭窄 (1VD) 13例, 2枝以上狭窄 (MVD) 11例であった.HR-STループはV5誘導についてML-8000 (フクダ電子) にて解析し, A型 (反時計方向回転) , C型 (時計方向回転) , B型 (A型とC型の中間) , C型 (C型でST下降の回復遅延を伴うもの) に分けられた.A型は9人の0VDと3人の1VDにみられ, B型は3人の0VDと6人の1VDに, C型は2人の1VDと5人のMVDに, C型は2人の1VDと6人のMVDにみられた.最大ST下降度には0VD, 1VD, MVDの間で差がみられなかった.HR-STループは偽陽性ST下降の鑑別と冠動脈硬化の重症度評価に有用であった.
  • 豊嶋 英明, 橋本 修二, 林 千治, 宮西 邦夫, 岡本 和士, 前田 清, 柳生 聖子, 加藤 孝之
    1989 年 9 巻 3 号 p. 300-306
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    高比重リポ蛋白 (HDL) に含まれるコレステロール (HDLC) , アポリポ蛋白A-I (アポA-I) の心電図虚血性所見への影響を検討するために, 地域住民男369人, 女472人を対象として, HDLC, アポA-Iと総コレステロール (TC) の血清濃度, 血圧, 喫煙の頻度並びに心電図を調べた.
    心電図虚血性所見の有所見者は男22人, 女71人であり, 有所見者では無所見者に比べて, 年齢, 収縮期血圧は有意に高かったが, TC, 喫煙の頻度には有意差がなかった.HDLCは有所見者で低く, アポA-Iは高かったが, いずれも有意ではなかった.一方, HDLC/アポA-Iと補正HDLC比 (HDLCの測定値対アポA-Iからの同期待値の比) は有所見者で有意に低く, 性, 年齢, 収縮期血圧, TCと喫煙の頻度をロジスティックモデルにより補正しても同様であった.これは心筋虚血に対するHDL構成成分の変化の影響を示唆する所見と考えた.
  • 中川 幹子, 犀川 哲典, 伊東 祐信, 伊東 盛夫
    1989 年 9 巻 3 号 p. 307-316
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Holter心電図法を用いて, 心室性期外収縮 (VPC) を頻発する37例に対するmexiletineの短期および長期経口投与の効果を検討した.Holter心電図記録のコンピュータ解析により, VPC頻度を心拍数 (HR) の関数として評価し, HRとともにVPCが増加するもの (促進群, 17例) とそれ以外のもの (非促進群, 20例) の2群に大別した.Mexiletine 300mg/day2週間投与は37例中16例 (43%) に有効 (VPC減少率≧65%) であった.有効率は促進群と非促進群間に有意差を認めなかった.促進群では有効例は無効例に比し, 治療前の1日平均HRとVPC頻度が有意に小であった.両群において, mexiletineのVPCに対する抑制効果は, VPC発現時のHRが低い場合よりも高い場合に著明であった.Mexiletineを長期間 (15~44ヵ月, 平均29ヵ月) 継続投与した10例中9例に有効であった.
  • ―僧帽弁狭窄症における検討―
    雪吹 周生
    1989 年 9 巻 3 号 p. 317-322
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    僧帽弁狭窄症にて心房細動を非侵襲的に予知しうるか否かを12誘導心電図, 心エコー図を用いて検討した.僧帽弁狭窄症例48例 (洞調律: MSSR群11例, 一過性心房細動: MSIAF群4例, 慢性心房細動: MSAF群33例) と器質的心疾患のない群63例 (洞調律: MSR群31例, 慢性心房細動: NAF群32例) でMモード心エコー図より左房径, 洞調律の例では12誘導心電図第II誘導でのPQ間隔 (PQ) , V1誘導でのterminal force (PTf) , P波持続時間 (Pv1) を計測した.左房径はNSR群, NAF群, MSSR群, MSIAF群, MSAF群の順で増大した.PTfの陰性度およびPv1はNSR群, MSSR群, MSIAF群の順で増大した.僧帽弁狭窄症ではMモード心エコー図上の左房径が41mm以上, 12誘導心電図でPTf-0.120以下, Pv10.12以上の所見を示す場合には心房細動発症の可能性があると考えられた.
  • 田村 真, 相沢 義房, 佐藤 政仁, 鈴木 薫, 相沢 雅美, 船崎 俊一, 宮島 静一, 江部 克也, 庭野 慎一, 石黒 淳司, 池主 ...
    1989 年 9 巻 3 号 p. 323-329
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    難治性持続型心室頻拍10例に対するアプリンジンの効果について電気生理学的検査 (以下EPS) により検討した.コントロール状態において, EPSにより全例単型性の持続型心室頻拍が誘発可能であった.アプリンジン40mg/日~80mg/日を7例で単独に, 3例で他剤との併用下に投与した.10例中7例でアプリンジン投与中, 心室頻拍の自然発作がみられ, うち1例は心室細動にいたった.残り3例にEPSを施行し, 2例で心室頻拍が誘発され, うち1例はイソプロテレノール投与により誘発可能であった.1例はイソプロテレノール投与によっても誘発されず, 有効と判定した (有効率10%) .アプリンジン投与前後での再発または誘発心室頻拍のレートの平均は投与前179.4/分, 投与後176.5/分と有意な変化はなかった.心室細動をきたした症例はプロカインアミド, ジソピラマイドとの併用投与例であり, アプリンジンをclass Iaの薬剤と併用する場合増悪効果に注意する必要がある.
  • 浜本 卓之, 伴 隆志, 小島 康生, 伊達 敏明, 高橋 徹郎, 楠川 禮造
    1989 年 9 巻 3 号 p. 330-335
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    モルモット右室乳頭筋の活動電位に対するMexiletineおよびE-0747の頻度依存性効果を, 微小ガラス電極法を用いて記録し, modulated receptor仮説に基づき検討した.刺激頻度は0.1~4 Hzで, Mexiletineでは2Hz以上で, E-0747では高頻度刺激にて増強するVmaxの有意な抑制を認めた.Nicorandilの併用にてAPDを50~70%短縮させると, E-0747ではVmaxにほとんど変化を見なかったが, Mexiletineでは2Hz以上でVmaxの抑制効果は軽減し, 4Hzでは対照群の65%から81%へと有意な上昇を認めた.また5分間休止によるresting blockは2剤とも約10%であった.以上よりMexiletineはinactivated stateに, E-0747はactivated stateに, より強い親和性を持ちチャネルと結合しblockを生ずることが示唆された.さらに2剤の物理化学的な特徴からも作用機序を考え, 臨床的有用性の検討を行なった.
  • 松本 一年, 太田 壽城, 波多野 潔, 杉原 弘晃, 横井 正史, 魚住 善一郎, 岡本 登, 水野 嘉子, 岩塚 徹, 外山 淳治, 山 ...
    1989 年 9 巻 3 号 p. 336-341
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    運動中の心電図を記録解析するために, ICメモリーを用いた軽量小型のスポーツ用心電図記録器 (略称ハートメモ) を開発し, 臨床例に応用した.
    ハートメモは小型軽量 (大きさ124mm×70mm×22mm, 重量200g) で, 256キロビットのICメモリーを6個使用し, 種々のフィルター (ACハムノイズ除去フィルター, 筋電図除去フィルター, ドリフト補正フィルター) や, 独自のデータ圧縮法 (SAPA変法) を用いた.その結果, 筋電図によるノイズや, 運動中のドリフトが少なく, 不整脈, ST-T変化の判定にも充分耐え得る心電図が連続で36分間記録できた.小型軽量であるため運動に対する制約も少なく, ダイナミックな運動時の心電図記録には特に有用と思われた.また, イベントモードの多様性, ST変化に対する信頼性から, 臨床上, 胸痛発作例や, 心筋梗塞後のリハビリテーションにも応用可能と考えられた.
  • 中西 正, 西村 真人, 宮武 智恵美, 窪田 小弓, 木谷 恵子, 平林 正己
    1989 年 9 巻 3 号 p. 342-349
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    脳血管障害時の心電図変化に関する報告は多いが, 24時間中の全心拍についての洞周期の変動に関する詳細な報告はない.著者らは脳血管障害にて入院した15例を対象に, Holter心電計を用い, 60分間毎の洞周期の平均値と標準偏差を24時間にわたって求め, 脳血管障害の洞周期に及ぼす影響を調べ, 自律神経系との関連について若干の検討を行った.その結果, 脳血管障害の発症により洞周期は短縮し, 日内変動は消失, 洞周期の標準偏差は小さくなった.本現象は意識障害の程度が大きい程著明で, 症状の増悪とともに顕著となり, 改善とともに軽度となった.これらの原因として, 尿中norepinephrine排泄量が多いことからも交感神経系の関与が示唆された.洞周期ならびにその日内変動と標準偏差 (洞周期のバラツキ) を検討することは, 脳血管障害の重症度の判定および経過観察の上で重要な情報をもたらすと考えられる.
  • 田辺 章弘, 毛利 太一, 大賀 雅信, 高本 哲郎, 椿 孝二, 古賀 義則, 戸嶋 裕徳
    1989 年 9 巻 3 号 p. 350-355
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    心房細動例において変行伝導を伴った上室性不整脈と心室性不整脈との鑑別は電気生理学的検査によっても困難な場合が少なくない.今回, 我々は洞調律時の電気生理学的検査と心電図から幅広いQRSが上室性と診断可能であった例において心房細動時のRR間隔の時系列を用いた新しい解析を行い, その有用性について検討した.この解析方法はコンピューターにより1心拍毎のRR間隔の推移を二次元平面上の点の集団として表示し, 四象限表示を用いることで同一平面上にQRSの区分を可能にしたものである.心房細動の不規則なRR間隔から房室伝導不応期の臨界線を推定でき, この臨界線から変行伝導を伴う上室性不整脈と心室性不整脈との鑑別が可能と考えられた.本解析法は従来のローレンツプロット法とは異なり, 心房細動例における変行伝導の診断のみならず連続する心室性不整脈をも視覚的に認識できるため, 今後幅広い臨床応用が可能と考えられた.
  • ―ホルター心電図法による検討―
    西崎 光弘
    1989 年 9 巻 3 号 p. 356-365
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    安定狭心症または心筋梗塞症患者計80例にホルター心電図および冠動脈造影を施行し, 心電図記録上, 無症候性ST下降の臨床病態を検討した.その結果, 有意のST下降発作, 特に無症候性ST下降発作は心筋梗塞群より安定狭心症群に高率に認められた (p<0.05) .安定狭心症群においては, 無症候性ST下降発作は罹患冠動脈数の増加に伴って高い頻度を示し (p<0.05) , その1日平均ST下降回数は1枝病変群に比し多枝病変群で有意の高値を認めた.全症例における無症候性ST下降発作はすべてのST下降発作の72%に認め, 最大ST下降度 (p<0.01) , 持続時間 (p<0.05) , 心拍数 (p<0.01) いずれもが症候性ST下降発作より低値を示した.またこの関係は症候性および無症候性ST下降の両発作を有した同一患者群においても認められた.これらの成績から, 無症候性ST下降発作は症候性と比し心筋虚血および心筋酸素需要の程度が軽い病態であることが推測された.さらに, 安定狭心症群においては無症候性ST下降発作の頻度は冠動脈病変の重症度を良く反映していた.
  • ―冠動脈内心電図 (ic ECG) による検討―
    本江 純子, 斎藤 頴, 日比谷 和平, 森内 正人, 鎌田 智彦, 安藤 輝彦, 辻 正純, 渡辺 一郎, 田村 裕男, 小沢 友紀雄, ...
    1989 年 9 巻 3 号 p. 366-373
    発行日: 1989/05/31
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    PTCA施行時におけるR波の変動をic ECGより検討する.対象・方法: PTCA施行時にic ECGを記録し得た陳旧性心筋梗塞のない虚血性心疾患患者25例を対象とし, ic ECGにおいてPTCA中のST上昇とともにR波高を記録した.結果: (1) Inflation後, R波は30秒後まで経時的に減高した. (2) Inflation直後より著明なST上昇を生じた例では, R波が急激に減高した (12例) .このうち30秒以上のinflationを行った例ではR波が漸減漸増の2相性変化を呈し, 実験結果に一致した. (3) Inflation後もR波高の変化に乏しい例 (13例) ではST上昇も軽度であったが, その中でも遅れてST上昇が出現した例では, その時期に一致してR波が減高した.考案・結語: PTCA施行時における急性心筋虚血ごく早期にはR波は一時的に減高するが, 虚血の進行状態によりその程度は必ずしも同一ではないため, R波高を評価する際にはST偏位の程度と併せて考慮する必要があるものと考えられた.
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