院内感染対策として様々な抗菌性繊維材料が用いられており,抗菌性と安全性を両立させた抗菌性繊維材料が望まれている.今回,我々は口腔殺菌薬として使用されている塩化セチルピリジニウムと,無機系抗菌物質である亜鉛をカルボキシメチルセルロースに化学結合させたカルボキシメチルセルロース-セチルピリジニウム/亜鉛(CMC-CP/Zn)繊維布を開発し,その抗菌活性をCMC-CP繊維布,CMC-Zn繊維布を対照に
Staphylococcus aureus ATCC25923,
Staphylococcus epidermidis ATCC12228,
Enterococcus faecalis ATCC33186,
Escherichia coli ATCC25922,
Serratia marcescens ATCC8100,及び
Pseudomonas aeruginosa ATCC33348について検討した.その結果,グラム陽性の
S. aureus,
S. epidermidis,
E. faecalisに対し,CMC-CP/Zn繊維布では,作用1分間で接種菌量から生菌数1.3 log (cfu/布)以下まで減少し,CMC-CP繊維布と同様に強い短時間殺菌効果が認められた.また,グラム陰性の
E. coli,
S. marcescens及び
P. aeruginosaに対するCMC-CP/Zn繊維布の短時間殺菌効果では,グラム陽性菌と比較して弱いものの,作用10~30分間で接種菌量から生菌数1.3 log (cfu/布)以下まで減少した.
薬剤耐性菌を含む臨床分離株7菌種53菌株に対するCMC-CP/Zn繊維布の抗菌性は,標準株とほぼ同等の強い抗菌効果が認められた.
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