日本環境感染学会誌
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24 巻 , 3 号
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原著・短報
  • 川島 正敏, 和田 耕治, 久保 公平, 大角 彰, 吉川 徹, 相澤 好治
    2009 年 24 巻 3 号 p. 155-161
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/10
    ジャーナル フリー
      N95マスク(DS2マスク)の選択にあたってはフィットテストが必要である.しかし,40歳以下の女性についてはフィットする割合が低いことが指摘されており,マスクの構造上の改善の余地がある.多くのN95マスクは,ゴム紐のみで頭に固定されている.本研究では,口元の調節紐および立体接顔クッションを付属したN95マスクを40歳以下の女性が装着し,フィットする割合が向上するかを検討した.
      20名を対象に,調節紐および接顔クッションを付属したN95マスクと,コントロールとしてゴム紐のみで装着するN95マスクを用いた.装着を行ったあと,マスクフィッティングテスターを用いてフィットテストを行い,漏れ率を測定した.
      調節紐および接顔クッションを付属したN95マスクでは,普通呼吸において漏れ率が5.0%未満であった.しかし,ゴム紐のみで装着するN95マスクでは5人の漏れ率が5.0%以上であった.またフィットテストの過程で漏れ率が5.0%以上となったのは,調節紐および接顔クッションを付属したN95マスクでは3人であったが,ゴム紐のみで装着するN95マスクでは,11人であった.
      本研究より,調節紐および接顔クッションを付属することにより,N95マスクのフィットする割合を向上できる可能性があると考えられる.
  • 戸石 悟司, 加部 一彦
    2009 年 24 巻 3 号 p. 162-166
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/10
    ジャーナル フリー
      中心静脈カテーテル関連血流感染症(CR-BSI)は,院内感染症の中でも重要な感染症であり,その対策としてマキシマムバリアプリコーション(MBP)の徹底がCDCより推奨されている.一方,本邦の新生児集中治療室(NICU)においてはこのような対策を行っていない施設が多いにも関わらず,米国の新生児医療施設に比べ院内感染発生率が低い事が知られている.今回,MBPを行っていない当院NICU過去5年間におけるCR-BSIの発生率を調査することで,我が国におけるカテーテル挿入時のマキシマムバリアプリコーションの必要性について考察した.
      2002年から06年までの5年間の経皮的中心静脈カテーテル(PICC)挿入は年間平均55症例,70回.同期間における,のべカテーテル挿入日数は3652日/5年であった.CR-BSIの定義は,国立大学医学部附属病院感染対策協議会によるフローチャートを改変し解析を行った.全米病院感染サーベイランス(NNIS)のデータ1000 g未満の児のCR-BSIが1000 catheter-daysあたり10.6と高値であるのに対し,当院のデータは疑い例を含めても0.81と非常に少なかった.PICC挿入時には,原則として滅菌手袋の着用は行われず,アルコールによる手指消毒のみの操作で,臨床的にCR-BSIが問題となる事はなかった.
      出生直後の新生児には皮膚常在菌叢が定着しておらず,無菌状態に等しい事や新生児は免疫学的にも未成熟である事を念頭に,NICUにおいては感染予防対策としてきめ細やかな管理を行っていることに加えて,児に対するほとんどの処置が閉鎖環境である保育器(クベース)内を中心に行われることがこの結果に関係していると考えられた.我が国よりも院内感染症発生率の高い欧米の基準に基づく感染対策を導入するに際しては,我が国の現状を十分に考察した上で,その必要性に関してはさらにエビデンスの蓄積が必要であると思われた.
  • 中川 博雄, 松田 淳一, 栁原 克紀, 北原 隆志, 佐々木 均
    2009 年 24 巻 3 号 p. 167-169
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/10
    ジャーナル フリー
      最近,本邦にて速乾性擦式消毒薬の0.5 w/v%グルコン酸クロルヘキシジン含有エタノールゲル製剤が発売された.本研究では国内で最も汎用されている0.2 w/v%塩化ベンザルコニウム含有エタノールリキッド製剤との消毒効果および手荒れに対する比較検討を行った.その結果,0.5%CHG-GAは0.2%BAC-LAと比べて,消毒直後の効果は同等であり,3時間後では有意に優れた持続効果が認められた.また,手荒れへの影響は共に認められなかった.以上より0.5%CHG-GAは0.2%BAC-LAよりも持続効果に優れた製剤であることが明らかとなった.
  • 西尾 久明, 末吉 範行, 山元 桂, 古川 晶子, 竹村 美和, 芳尾 邦子, 中村 寛子, 井上 徹也
    2009 年 24 巻 3 号 p. 170-176
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/10
    ジャーナル フリー
      2006年10月から12月までの3ヶ月間に滋賀県感染制御ネットワークに参加の32施設から分離されたEscherichia coli 1,650株,Klebsiella spp. 659株およびProteus mirabilis 241株についてESBLの調査と地域における耐性菌サーベイランスのありかたについて検討するためアンケート調査を行った.Clinical Laboratory Standards Institute (CLSI) Document M100-S16に従いESBLの確認を行ったところ,ESBLはE. coliで55株(3.3%),Klebsiella spp.で8株(1.2%),P. mirabilisで40株(16.6%)が陽性となった.耐性遺伝子型についてE. coliではCTX-M9型が28株(50.9%)と最も多く,P. mirabilisは40株すべてがCTX-M2型であった.RAPD法を用いた分子疫学的解析においてE. coliでは3施設がそれぞれの施設において同一パターンを示し,施設内での拡散が示唆された.P. mirabilisでは5施設から検出された33株が同一パターンを示し,滋賀県下での拡散が示唆された.アンケート調査からは,多くの施設(29施設)において自施設でのESBL耐性菌の状況を把握し,それに基づき感染対策の改善が行われたことが判った.今回の調査により,施設ごとの耐性菌の出現頻度と滋賀県でのESBL拡散の実態が把握でき,各施設における感染対策を見直す契機になったと考えられ,地域における耐性菌サーベイランスの重要性が認められた.今後も,施設内はもとより,地域を含めた感染制御の取り組みが必要と考えられる.
  • 二本柳 伸, 中崎 信彦, 浜田 幸宏, 高橋 由美子, 藤木 くに子, 松原 肇, 平田 泰良, 高山 陽子, 大谷 慎一, 狩野 有作, ...
    2009 年 24 巻 3 号 p. 177-184
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/10
    ジャーナル フリー
      2006年6月23日に当院産科外来を受診した患者5名より採取した頸管内容物から同じ生化学的性状を示すRalstonia pickettiiを分離した.6月26日に感染対策チーム(ICT)が産科外来リンクナースに聞き取り調査を行った結果,産科外来初診室1に設置された1台の局所洗浄装置イルリガトールを患者5名の外陰部洗浄ならびに膣内洗浄に使用していたことが判明した.環境細菌調査の結果,局所洗浄装置イルリガトールの先端ノズルから採取した自家調製0.025 w/v%塩化ベンザルコニウム液より,患者由来5株と同じ生化学的性状を示すR. pickettiiを分離した.患者由来5株ならびに先端ノズル由来1株は,Random amplified polymorphic DNA polymerase chain reaction (RAPD)法による分子疫学解析の結果から同一起源株であることが強く示唆された.したがって,本事例は,局所洗浄装置イルリガトールの先端ノズル内にR. pickettiiが定着し,自家調製0.025%w/v%塩化ベンザルコニウム液を介した伝播事例と推察した.
  • 奥平 正美, 杉浦 洋二, 兵道 美由紀, 内藤 淳, 犬塚 和久, 岡村 武彦
    2009 年 24 巻 3 号 p. 185-188
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/10
    ジャーナル フリー
      耐性菌サーベイランス開始以来,当院初のvancomycin-resistant Enterococcus (VRE)が患者の便から検出された.直ちにInfection Control Team (ICT)活動として,接触者リストを作成し,患者・職員の便培養検査と環境調査を実施した.初期介入として実施したスクリーニング培養はVRE検出患者と同時期に同病棟であった入院患者,医師・職員,環境の合計115検体を対象とし,このうち,2検体からVREを検出した.徹底した環境整備と,濃厚接触時の手技および手洗い・手袋交換のタイミングの確認・指導を行った結果,追加スクリーニング検査ではVREは検出されず,院内感染拡大を阻止することができた.
      迅速なICT介入と手指消毒の徹底と日常業務における接触感染対策の実行が,感染拡大を防止できた要因と考える.
報告
  • 鹿角 昌平, 飛澤 知佳, 田中 健二, 中島 恵利子, 高橋 央, 齋藤 博
    2009 年 24 巻 3 号 p. 189-194
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/10
    ジャーナル フリー
      「新型インフルエンザに対するプレパンデミックワクチンの安全性の研究」への当院職員の参加意思の確認に際して,併せて接種同意・不同意の理由を調査した.全職員の66.6%が接種に同意し,同意理由の上位3項目が「他に適当な予防法がないと思うから」,「今後プレパンデミック・ワクチンを受けられるか分からないから」,「有効な予防法と思うから」であったことから,新型インフルエンザのパンデミックに対する危険性の認識や,その対策としてのプレパンデミックワクチンの有効性への期待は高い水準にあると考えられた.部門別の同意者の割合は医師,看護職員,コメディカルにおいて高く,患者と直接接する機会の多い職種であるためと思われた.部門別の同意理由では医師,看護師,コメディカル,事務部門においては「他に適当な予防法がないと思うから」と「有効な予防法と思うから」を合わせた比率が何れも5割前後であったのに対し,給食部門,その他部門では3~4割と相対的に低く,ワクチンに対する認識の度合いが職種により異なることが示唆された.また,全ての部門で「新型インフルエンザに感染すると思わないから」との不同意理由が見られたことから,今後の院内研修会等において,感染症に対する認識の更なる向上を図る必要性が認められた.
  • 栃倉 尚広, 鏑木 盛雄, 山舘 周恒, 本石 寛行, 林 国樹
    2009 年 24 巻 3 号 p. 195-201
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/10
    ジャーナル フリー
      2005年1月~2008年6月における6ヶ月ごとのカルバペネム使用量,および調査期間中に入院患者から分離された緑膿菌813株について,6ヶ月ごとの感受性動向と交差耐性について検討した.さらに,2007年11月から3ヶ月間に入院患者から分離された緑膿菌38株について,カルバペネム5抗菌薬のMICを測定した.①カルバペネム使用量は2007年7~12月以降,著明な増加がみられた.②2007年1~6月以前では,感性率の経時変化は乏しくAMK, GM, CPFX, LVFX, PIPC, CFPMでは90%以上が感性であり,IPM, MEPMにおいても感性率80%以上を維持していた.これに対し2008年では90%以上の感性率を示した抗菌薬はAMK, GM, PIPCの3抗菌薬に減少し,使用量増加と感性菌減少との関連が示唆された.③2007年7月から1年間に分離されたIPM耐性35株とMEPM耐性27株の比較では,MEPM耐性株の方が,各種抗菌薬の感性率が低かった.④全国サーベイランスと比べ,当院ではMEPM耐性率が23.7%と高かった.カルバペネム5抗菌薬の比較では,DRPMに対する耐性率が22~33%と最も低かった.また,メタロ-β-ラクタマーゼ産生株,多剤耐性緑膿菌は検出されなかった.
      今回の検討では,カルバペネム使用量の増加に伴う感性率の低下が示唆され,特にMEPM耐性株ではセフェム系をはじめとする各種抗菌薬の感性率の低下が認められた.今後も引き続き使用動向調査,サーベイランスを行うとともに,カルバペネムの適正使用に向けた取り組みを行っていく必要があると考えられた.
正誤表
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