日本環境感染学会誌
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25 巻 , 1 号
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原著論文
  • 上野 正浩, 清水 雄大, 板子 和恵, 清水 紀臣, 合田 史, 内山 俊正
    2010 年 25 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
      2009年2月1日より始まった当院の入院患者及び病院職員におけるノロウイルスに起因する感染性胃腸炎の集団発生に対して,病院感染制御チームは事態収拾のための対応及び実地疫学調査を開始した.集団発生探知前では病棟職員に感染防御策(標準予防策及び接触感染予防策)が一部充分ではなくまたノロウイルスに有効な次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が施行されていなかった.症例対照研究からは,単変量解析及び多重ロジスティック回帰分析のいずれも「車椅子専用トイレ使用の有無」のみが統計学的有意を示した(多重ロジスティック回帰分析:オッズ比5.302,95%信頼区間1.376-20.433, p=0.015).院内での入院患者の急激な下痢や嘔吐等,急性胃腸炎症状を呈する患者発生を探知した際には,まず季節性や地域流行情報等からのノロウイルス等の感染性胃腸炎の可能性の考慮,そして患者や汚物に対しての感染源及び感染経路対策の実施,感染性胃腸炎の発症者と非発症者の早期選別と利用するトイレ及び使用する車椅子等の物品の早期の厳格な区別,発症者用のトイレや車椅子,患者と接触した物品等の頻回な病院職員や清掃業者による消毒,等がノロウイルスの集団発生予防対策に有効であると考えられた.
  • 森本 洋
    2010 年 25 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
      レジオネラ属菌の培養検査を行う場合,検査対象試料によっては,さまざまな雑菌が混在しているため,酸,熱による前処理や選択分離培地の使用が必要となる.しかしながら,これら前処理や選択分離培地を使用しても,それら雑菌の発育を抑制できない場合が往々にしてある.多くのレジオネラ属菌検査マニュアルには,「レジオネラ属菌分離集落の特徴として,大小不同の灰白色湿潤集落で特有の淡い酸臭がある」と記載されているが,実際の検査においては,このような集落が多数存在し,雑菌との分別が困難な場合が多い.そこで本研究では,より正確で簡便な集落観察方法を検討したので報告する.
      分離培地上の発育集落に斜光を当て,実体顕微鏡で観察すると,レジオネラ属菌は,特徴的な外観構造(カットグラス様,モザイク様)を呈した.この観察法を用いると,レジオネラ属菌と雑菌を効率良く分別,釣菌することができ,菌数測定も簡便に,極めて正確に行えることが明らかとなった.
      本研究では,環境試料からL. pneumophilaの13血清群およびその他17種類のレジオネラ属菌が,この観察法で効率良く検出された.また,レジオネラ肺炎の患者から最も高率に検出されているL. pneumophila血清群1においても,この特徴が観察されたことから,本観察法は,定期的な環境水の自主検査および感染源や汚染源を調査するにあたり有効な検査法の一つであると思われた.
  • 石原 慎之, 西村 信弘, 陶山 登之, 山本 英, 玉木 宏樹, 上村 智哉, 礒部 威, 稲垣 文子, 岩本 喜久生, 直良 浩司
    2010 年 25 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
      グリコペプチド系抗菌薬バンコマイシン塩酸塩(VCM),テイコプラニン(TEIC)およびアミノグリコシド系抗菌薬アルベカシン硫酸塩(ABK)はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の治療において効果的な抗菌薬である.抗MRSA薬は治療濃度域が狭いため,治療薬物血中濃度モニタリング(TDM)の実施ならびにPharmacokinetics-Pharmacodynamics (PK-PD)理論に基づいた投与設計を行うことが重要である.そこで,当院では2005年から抗MRSA薬適正使用を目的として薬剤師によるTDM実施および投与設計への介入を開始した.2004年(介入前),2005年および2006年(介入後)において,抗MRSA薬が投与された157名の患者について投与方法および臨床効果の解析を行った.
      薬剤師の介入により抗MRSA薬使用患者のTDM実施率は2%(2004年)から55%(2006年)へ増加した.それに伴いVCMの平均投与期間の短縮,TEICのローディングドーズ実施率の増加,ABKの投与間隔の延長と1回用量の増大が観察された.抗MRSA薬が使用された全患者のうち,TDM実施患者の有効率は93.0%であり,TDM未実施患者(68.4%)より高かった.以上の結果から,抗MRSA薬のTDMの実施ならびにPK-PDに基づいた投与設計に薬剤師が能動的に介入することで,抗MRSA薬の投与方法の適正化を推進し,効果的な抗菌化学療法を実現しうることが示唆された.
  • 上條 泰弘, 篠原 章能, 田内 克典, 小池 秀夫
    2010 年 25 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
      当院では緑膿菌のカルバペネム系抗菌薬耐性率が上昇している.カルバペネム系抗菌薬の使用量の増加が,カルバペネム系抗菌薬の緑膿菌耐性率の上昇につながっている可能性を考え,2006年1月より特定抗菌薬使用届出規定を導入,同年8月より届出の義務化を行った.特定抗菌薬使用届出規定の導入が,特定抗菌薬の使用量,カルバペネム系抗菌薬の使用量,その結果,影響が考えられる入院患者由来のカルバペネム系抗菌薬の緑膿菌耐性率に及ぼす影響ついて調査を実施した.特定抗菌薬使用届出義務化後,新規に使用する場合での届出提出率は99.6%となり規定の遵守ができた.特定抗菌薬の使用量は,2005年と比べ2006年8月~2007年7月は62.7%減少した.カルバペネム系抗菌薬のantimicrobial use densityは,2005年23.4,2006年8月~2007年7月9.6と59.1%減少した.入院患者由来の緑膿菌の耐性率を調査するため,入院5日目以降に採取された検体での耐性率を集計した.imipenemとmeropenemの緑膿菌の耐性率は,それぞれ2005年28%から2008年13%,2005年21%から2008年9%と有意に減少した(p<0.05).特定抗菌薬使用届出規定を導入,継続して運用を行う事で,入院患者由来のカルバペネム系抗菌薬の緑膿菌耐性率低下に結びつける事ができた.
報告
  • 高見 陽子, 栗原 慎太郎, 塚本 美鈴, 安岡 彰
    2010 年 25 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
      当院では2006年12月に病院給食を介したノロウイルスによる食中毒事例が発生した.看護職員の2次感染発生と患者ケア状況との関連について検討した.本事例における患者発生状況は,食中毒が確定例70名,疑い例5名の計75名,食中毒患者からの2次感染は,確定例8名,疑い例22名の計30名で,合計105名であった.疑い例を含む2次感染30名のうち11名が入院患者,19名が学生を含む職員であった.19名の職種別内訳では,11名が看護職員(確定例2名,疑い例9名)で過半数を占めていた.看護職員へのアンケート調査により回答の得られた360名のうち,吐物や下痢便の処理あるいはそれらが付着した環境やリネンなどの処理を実施した看護職員は61名であり,そのうち発症確定例は1名,疑い例は1名のみで,吐物や下痢便の処理といったケア実施の有無や,個人防護具着用の有無と発症との間に関連は見出せなかった.吐物等の処理では飛沫や粉塵の吸入による曝露リスクが高いとされるが,今回の事例ではそのような曝露リスクは観察されなかった.
  • 伊藤 隆光, 福井 康雄, 小野 憲昭, 西川 美千代, 岡田 由香里, 公文 登代, 金山 明子, 小林 寅喆
    2010 年 25 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
      当医療センターが開院した2005年3月から2007年7月までに検出された各種抗菌薬耐性菌の検出状況を入院患者由来株,外来患者由来株に分類し経年的に調査した.
      検出状況は,入院および外来患者由来株ともにpenicillin-resistant Streptococcus pneumoniae (PRSP), penicillin-intermediate Streptococcus pneumoniae (PISP),およびmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)が調査期間を通じ高い割合で検出され,次いでβ-lactamase negative ampicillin resistant (BLNAR) Haemophilus influenzaeが比較的高率に検出された(PRSP, PISP: 62.0~85.7%, MRSA: 30.2~58.6%, BLNAR H. influenzae: 4.9%~35.5%).その他の耐性菌はいずれも5%前後の検出率であった.extended-spectrum β-lactamase (ESBL)産生性のEscherichia coliは全調査期間中4.4%に検出されたが,このうち50%は外来,6.8%は入院時に院外から持ち込まれたものであった.
      以上の結果より,外来患者を含め感受性結果が得られていない時点では,S. aureusではMRSA, S. pneumoniaeではPRSPおよびPISPの可能性が高いことを鑑み,感染予防策や抗菌薬選択を行う必要がある.また各種抗菌薬耐性菌検出状況を把握し,その傾向から早期の対策や初期治療における抗菌薬選択の指標に繋げるために,入院時の抗菌薬耐性菌の持ち込みも含めた検出状況をモニタリングしていくことが重要であると考えられた.
  • 西岡 達也, 岡本 和恵, 井澤 初美, 但馬 重俊, 服部 英喜
    2010 年 25 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
      速乾性手指消毒剤,液体石けん及びスクラブ剤の使用量とmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)の新規検出入院患者数を調査し,速乾性手指消毒剤による手指衛生の遵守率向上に対する活動の評価を行った.結果,病棟及び外来での速乾性手指消毒剤の使用量は経年的に増加し,2007年度の病棟及び外来の使用量は2005年度に対してそれぞれ45.2%,64.5%有意に増加した.MRSAの新規検出入院患者数は,2005年度は10.3件/10,000 patient days, 2006年度及び2007年度はそれぞれ9.8件/10,000 patient days, 8.8件/10,000 patient daysと経年的な減少傾向を示した.これらの結果より,我々の取り組みは,病棟及び外来での速乾性手指消毒剤による手指衛生の遵守率向上に寄与し,入院患者におけるMRSAの新規検出菌数減少に一定の効果を示したと考える.
  • 西田 真由子, 内海 桃絵, 牧本 清子
    2010 年 25 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/05
    ジャーナル フリー
      日本の病院における感染管理体制と尿道留置カテーテル挿入患者に対するケアの実態を明らかにすることを目的として2007年10月~11月に,対象病院の内科系,外科系各一病棟に勤務する感染管理のリンクナース(または主任看護師)を対象に質問紙調査を行った.病院要覧(2003-2004年版)に掲載されている400床以上の全病院および100床以上400床未満のうち4分の1の系統抽出法により抽出された病院を対象とした.回収率40%で,1318通を分析対象とした.感染管理体制については,感染対策チーム(ICT)があるのは82%,感染管理を専任または専従で行う看護師がいるのは36%,リンクナース制度があるのは66%であった.尿道留置カテーテル使用患者は病棟の約15%で,59%は完全閉鎖式カテーテルを導入していた.尿路感染予防ガイドラインの推奨項目が実施されていない割合は,膀胱洗浄を実施する51%,入浴時の蓄尿バッグとドレナージの接続をはずす29%であった.標準予防策が実施できていない割合については,排液時に手袋を着用しないは2%であったが,手袋を患者毎に交換しない34%,尿の回収容器を患者毎に交換しない51%であった.本研究により,日本の医療施設における尿道留置カテーテルケアの実態が明らかになり,ガイドラインで推奨されている尿路感染予防策と標準予防策の更なる啓蒙活動の必要性が示唆された.
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