日本環境感染学会誌
Online ISSN : 1883-2407
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25 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著論文
  • 石原 由華, 八木 哲也, 太田 美智男
    2010 年 25 巻 3 号 p. 135-144
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
      JANISサーベランスによればKlebsiella pneumoniaeKlebsiella oxytocaは4:1の割合でよく分離される.今回,3総合病院(総ベッド数2,603)の2008年8月~2009年7月の分離頻度を比較し,A病院の胆汁からK. oxytocaが高頻度に分離されることを見いだした.生化学性状およびantibiogramによる疫学解析によれば,A病院胆汁由来のK. pneumoniae株に少なくとも2つ,K. oxytoca株に4つの小アウトブレイクが見いだされた.各種材料由来の両菌種それぞれ12株についてヒト胆汁に対する耐性を調べたところ,尿由来のK. pneumoniae 1株が耐性であることを除き両菌種の胆汁感受性に差が無かった.これはK. oxytocaが胆汁から高頻度に分離されたことと胆汁耐性とは関係がなく,むしろ院内感染の集積が関係していることを示唆する.
短報
  • 青木 昭子, 満田 年宏, 白井 輝
    2010 年 25 巻 3 号 p. 145-148
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
      2009年秋に当大学の異なるキャンパスで開催された2つの大学祭後のインフルエンザ患者発生について報告する.参加学生数は大学祭A約1,400人,大学祭B約550人.大学祭A後の感染報告数に明らかな変化はなかったが,大学祭B後に参加学部学生の感染報告が著増した.大学祭Aでは大学事務担当が出展団体に開催4日前までに参加学生の氏名と体温等の体調の提出を義務づけ,未提出の場合は参加禁止としたが,大学祭Bでは学生実行委員に開催2週間前からの体温チェックを要請したのみであった.感染報告により複数の学生が症状出現後も登校したことが明らかとなった.対策の遵守率向上がイベント等における集団発症抑止に重要であることが認識された.
  • 西屋 克己, 徳谷 純子, 三笠 桂一
    2010 年 25 巻 3 号 p. 149-151
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
      生後22日の女児の重症新生児結核の感染管理を当院小児科病棟で行った.第1病日,当院感染症センター陰圧個室にクベースを入れ患児を収容し,空気感染対策のもと人工呼吸管理を行った.また,気管吸引は閉鎖式回路を使用し吸引時の結核菌飛散防止に努めた.第3病日,さらなる集中治療のため小児科病棟に転棟となった.小児科病棟には陰圧個室がないため,独立空調病室に簡易陰圧テントを設置し,テント内にクベースを入れ患児を収容した.ケアにあたる看護師は患児専任とし,他の患児との接触はなかった.その後,患児の全身状態良好となったため,第30病日,結核専門病院に転院した.
報告
  • 伊藤 隆光, 福井 康雄, 小野 憲昭, 西川 美千代, 岡田 由香里, 公文 登代, 金山 明子, 小林 寅喆
    2010 年 25 巻 3 号 p. 152-157
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
      急性期病院である当医療センター内2病棟においてmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)によるアウトブレイクが発生した.A病棟は集中治療室,B病棟は熱傷患者が多く入院する病棟と,いずれも感染に対するハイリスク患者が入院する病棟であった.病棟からの情報収集により,感染源・感染経路特定のために環境調査が行われ,その結果,A病棟では人工呼吸器タッチパネル,B病棟ではMRSA検出患者の周囲環境およびシャワー関連器具より患者由来株と同一株を検出した.このため,いずれの病棟も環境と患者間でMRSAの伝播が起きていたことが考えられ,環境整備を中心とした対策が実施された.両病棟とも対策実施後は新規MRSA検出患者の発生は認められず,1ヶ月間の観察期間を経てアウトブレイク終息とした.
      通常,日常的な環境調査は不要とされているが,今回の2病棟における環境調査では,いずれの病棟も患者由来株と同一株が患者周囲環境より検出されたため,早急な環境整備を中心とした対策を立て,アウトブレイク終息に至った.以上のことから,アウトブレイク発生時には,十分な情報収集を行い,速やかに環境調査を実施することによって,極めて狭い範囲でアウトブレイクを阻止することが可能であると考えられた.
  • 添田 博, 金子 亜希子, 犬伏 厚夫, 明石 貴雄, 千葉 勝己, 佐藤 久美, 草間 由美子, 中村 造, 松永 直久, 腰原 公人, ...
    2010 年 25 巻 3 号 p. 158-162
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
      当院では,2007年5月より広域スペクトラムを有する抗菌薬を対象として使用調査制による介入を開始した.今回の検討においては,2007年4月から2009年3月までの2年間を半年ごとの4期に区分し,期間ごとにカルバペネム系抗菌薬およびキノロン系抗菌薬の使用動向ならびに緑膿菌の耐性化率を比較し,使用調査制による効果を検証した.その結果,緑膿菌のIPM/CSに対する耐性化率は29%から21%へと低下し,CPFXに対する耐性化率も20%から15%へと低下した.抗菌薬の使用動向に関しては,カルバペネム系抗菌薬のAntimicrobial use density (AUD)の低下はわずかであったが,平均投与日数は7日から6日に短縮および投与件数は110件から86件に減少がみられた.また,8日以上使用された長期使用率は32%から24%へと減少した.一方,キノロン系抗菌薬に関しては,ほとんど変動がみられなかった.以上より,広域抗菌薬使用に対する使用調査制による介入は,カルバペネム系抗菌薬の使用動向を変化させることで使用量を減少させ,緑膿菌の抗菌薬に対する耐性化を抑制することが示唆された.
  • 山田 和弘, 阪口 勝彦, 藤原 大一朗, 谷 佳津治, 小川 雅史
    2010 年 25 巻 3 号 p. 163-166
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
      病院内で医療スタッフの使用しているパーソナル・ハンディホン・システム(PHS)の細菌汚染についてswab法での拭き取り調査を行った.その結果,PHS 127台から10種類の細菌が検出され,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が104台(81.9%),Corynebacterium spp.が36台(28.3%),メチシリン感受性黄色ブドウ球菌が13台(10.2%),Bacillus spp.が11台(8.7%)検出された.そのほとんどは常在菌であった.また耐性菌のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が2台(1.6%)検出された.MRSAが検出されたPHSは,いずれも耳鼻咽喉科の医師が使用していたPHSであった.その原因として処置後の付着が考えられ,PHSが細菌感染を媒介する可能性が示唆された.対策としては,医療スタッフの手洗いの徹底とPHSの定期的な消毒が必要であると考えられる.
  • 寺沢 匡史, 吉村 真弓, 上地 隆史, 森本 一平
    2010 年 25 巻 3 号 p. 167-171
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
      病院内での感染予防が重要視される一方で,院外薬局の待合で感染症患者とその他の患者が一緒になり,感染症拡大の原因となる可能性がある.そこで院外薬局と連携して感染対策を検討していかなければならないと考え,東淀川区薬剤師会会員薬局に各施設の感染対策の現状を把握するためにアンケート調査を行った.アンケートの内容は当院の院内感染防止委員会で検討した.2009年2月に東淀川区薬剤師会会員薬局全55施設にアンケート用紙を郵送した.回収率は89%であった.感染対策の相談窓口としても院外薬局は重要であり,アンケート結果をふまえ,地域の中で病院と連携した感染対策を検討し,地域での感染拡大の防止に貢献していきたいと考える.
  • 針原 康, 小西 敏郎, 森兼 啓太, 佐和 章弘, 清水 潤三, 山崎 隆志
    2010 年 25 巻 3 号 p. 172-177
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
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