日本環境感染学会誌
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27 巻 , 1 号
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原著論文
  • 米山 宏, 池上 陽久, 池田 ひろみ
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 27 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
      2009年6月より中小規模二次救急病院(4病棟;病床数180床)にてClostridium difficile Infection(CDI)患者数の増加を認めた.一般的な接触感染対策を行ったが抑制されないため2010年4月からケアバンドルを柱とした全病院的キャンペーンを開始した.院内発症の急性下痢患者はCDI疑い患者として対応し,病院職員は患者接触前後の流水と石けんによる手洗い,および患者接触時の手袋・ガウンの着用を開始した.CDI患者の個室またはコホート隔離を徹底し,CDIおよび疑い患者に使用する体温計,血圧計,パルスオキシメーター,聴診器は個人使用とした.CDI患者の病室は5000 ppmの次亜塩素酸ナトリウムによる消毒を行い,また経管栄養方法についても見直しを行った.計3回の全体研修会を行い全病院職員に教育および周知を行った.その結果,介入前(2009年8月~2010年3月)に比較して介入後(2010年6月~2011年1月)は全病院のCDI感染率の低下を認めた(前2.2,後0.68 cases/1000 patient-days, 95%CI; 0.19-0.49).CDI感染率の低下は4病棟中3病棟にてみられた.ケアバンドルを用いた全病院的キャンペーンは中小規模病院でのCDIのアウトブレイクを抑制するのに有用な方法と考えられる.
  • 今泉 貴広, 田中 久美子, 大川 浩永, 松田 雅光, 島崎 豊, 奥村 明彦
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 27 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
      カンジダ属菌によるカテーテル関連血流感染症は難治性であり,眼内炎などの合併症を発症することが知られている.当院における血液培養陽性例の全例調査から,2008年4月~2010年9月までの間に新たに発症した血管内留置カテーテルにおけるカテーテル関連血流感染症(CR-BSI)に関して,起炎菌の割合,背景因子,合併症へのICT介入についての検討を行った.
      調査期間を通じてCR-BSIは72件あり,このうちカンジダ属菌感染によるもの(カンジダ属菌感染群)が28件,細菌感染によるもの(細菌感染群)が44件であった.それぞれの背景因子を比較したところ,入院期間4週間以上,発症前4週間以内の広域抗菌薬投与,完全静脈栄養の3つの因子が有意にカンジダ属菌感染群で多かった.さらに,カンジダ属菌感染群においては,3つのうち2つ以上の複数の因子を有する患者の割合が有意に高率であった.適切な経験的治療までの日数については,細菌感染群では1.5±0.6日であったのに対し,カンジダ属菌感染群では2.7±0.7日と有意に遅れた.
      また,眼内炎は調査期間内に5件発症したが,治療までの期間は非眼内炎群と眼内炎群間で差はなかった.カンジダ属菌感染におけるICT介入は20/28件(71%)であったが,治療開始までの期間は,介入した場合と非介入の場合の両群間で有意差はなかった.血液培養陽性が判明した直後からICTが早期にかかわるよりも,カンジダ属菌感染のリスクが高い場合はより早期から治療を開始することを検討するべきかもしれない.
  • 守重 比路美, 眞野 容子, 笹岡 秀之, 中村 悌一, 冨田 守, 芝 紀代子, 古谷 信彦
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 27 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
      コンタクトレンズ(CL)ケースおよびCL保存液の汚染状況と,それらに対する微酸性電解水の除菌効果を検討した.健康成人35名の使用済みCLケース35個とケース内CL保存液65検体の汚染状況を調査したところ,CLケース16個(45.7%),CL保存液27検体(41.5%)から17菌種が分離された.このうち最も高頻度に分離されたのはSerratia marcescens (25.9%)でBacillus spp. (14.8%)がこれに次いだ.保存液を全て廃棄した汚染CLケースに微酸性電解水を充満させて一夜放置したところ,18/27検体(66.7%)で汚染菌は完全に殺菌された.また,一部の汚染CL保存液を微酸性電解水にて10倍希釈したところ,Staphylococcus epidermidisを除く2菌種において希釈直後から菌は死滅した.実験的に汚染させたCLケースの乾燥殺菌効果の検討では菌液廃棄直後のケース内に最大107 CFU/mL存在していた菌数は24時間後も80~1.2×104 CFU/mL残存していた.乾燥前に滅菌蒸留水でケースを一度洗浄した場合も同様であった.一方,微酸性電解水による洗浄では乾燥開始直後から全菌種が分離されなかった.今回の検討で,健常者のCL関連製品から医療関連感染の原因菌が高頻度に分離され,これらに対して微酸性電解水は高い殺菌効果を有することが示唆された.
  • 佐藤 俊哉, 中島 由美子, 坂下 路絵
    原稿種別: 原著論文
    2012 年 27 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
      2 月9日の給食のブロッコリーサラダに混入したサルモネラ腸炎菌(O-9型)を約2640人の小中学生と教師が摂取した.発熱,腹痛,嘔吐,下痢,血便などの胃腸炎症状を呈したのは,一次発症者1600人,入院30人,潜伏期間のピークは3日であった.ブロッコリーサラダからでた菌株と一次発症者便からでた菌株及び二次発症者便からでた菌株は,PFGEで同一菌株と同定された.二次発症者の多くは家庭内感染で,発症70人,入院6人,入院ピークは25日頃であった.3つめの波は27~40日頃で長期無症候保菌者と由来不明の幼児に認められた.一部抗菌薬を使用し学校のトイレを中心に環境介入をして,患者数の減少をみた.サルモネラ腸炎集団発生では早期介入と長期視点の観察が必要と思われる.
報告
  • 飯草 正実, 小林 義正, 岡村 彰子, 栗原 佳代子, 永野 栄子, 鈴木 伸志, 春木 宏介
    原稿種別: 報告
    2012 年 27 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
      手指衛生は感染対策の基本であるが,現場での遵守率は低いのが現状である.そこで手指培養を用いて実際の手に付着した雑菌を写真付報告書として,返却し,個々の手指衛生に対する意識改革へ利用した.また,同時にアンケートを実施して手指衛生の現状が適切であるか確認した.
  • 森本 一平, 端野 琢哉, 上地 隆史, 寺沢 匡史, 吉村 真弓
    原稿種別: 報告
    2012 年 27 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
      当院では,2006年1~6月におけるカルバペネム系薬に対する緑膿菌の耐性率がmeropenem(MEPM) 15.4%, imipenem(IPM) 25.7%と,全国サーベイランスと比し高い傾向にあった.その為,2008年より病棟・診療科単位の緑膿菌の耐性率および多剤耐性緑膿菌(MDRP)の発生状況を調査することを目的に施設内アンチバイオグラムを作成した.その結果,ICUにおいてカルバペネム系薬に対する緑膿菌の抗菌薬耐性率が高いことが判明した為,ICUに限り同系抗菌薬の使用制限を指導し,緑膿菌の感受性が良好であったpiperacillin(PIPC)およびtazobactam/piperacillin(TAZ/PIPC)の推奨を行った.あわせて,病院全体に感染経路対策を実施した.その結果,2009年7~12月におけるMEPMおよびIPMの耐性率はそれぞれ6.1%, 7.9%に有意に低下した.一方,PIPCについては使用量増加に伴い緑膿菌の抗菌薬耐性率の上昇する傾向が認められた.抗菌薬の系統にかかわらず過度な使用促進は,耐性率上昇の原因となる可能性が示唆された.施設内アンチバイオグラムを用い,緑膿菌の抗菌薬耐性率の推移を把握するとともに,使用抗菌薬の監視体制を整備し抗菌薬の適正使用の指導と感染経路対策を推進することで,耐性率の改善が得られたので報告する.
  • 横沢 隆行, 方違 大介, 土橋 直子, 一ノ瀬 直樹, 小田 智三, 小林 隆, 青木 茂行, 松井 真理, 荒川 宜親
    原稿種別: 報告
    2012 年 27 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
      人工呼吸器により医療関連感染を起こす主要菌の一つとして知られているアシネトバクター属菌は,近年多剤耐性株が増加しつつあり,特に化学療法を施す患者や感染防御機構が整っていない未熟児に感染した場合,重篤化する危険性が高い.当院NICUにおいて患児4名よりメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)を産生するAcinetobacter baumannii(A. baumannii)が便あるいは気管チューブから検出された.医療関連感染による伝播が疑われたため,Infection Control Team(ICT)により計3回のNICU環境調査が行われたがMBL産生A. baumanniiは検出されなかった.しかし,MBL非産生A. baumanniiが水周りを中心とした環境と患児由来の人工呼吸器接続チューブから検出された.一方,気管チューブよりMBL産生A. baumanniiが分離された患児の吸引痰からはMBL非産生A. baumanniiも検出され,両検出菌のパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)による分析結果から,同一起源である可能性が強く示唆された.耐性菌による医療関連感染が疑われる際には,抗菌薬感受性試験結果が異なる場合であっても,代表的な分離株に対しPFGEを実施し,それらの遺伝的な関連性を確認して対策に生かすことが有用と考えられる.
  • 藤倉 雄二, 切替 照雄, 川名 明彦
    原稿種別: 報告
    2012 年 27 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
      2009年のインフルエンザパンデミックでは,当初感染性・病原性が不明確な中,各医療機関では国の施策をふまえさまざまな感染対策が講じられたが,それらを比較・検討するため本調査を計画した.米国疾病予防管理センター(CDC)より公表された医療機関におけるパンデミック(H1N1) 2009の感染対策に関する暫定ガイドラインを参考にアンケートを作成し,平成22年度厚生労働科学研究費補助金による新興・再興感染症研究事業 新型インフルエンザ等の院内感染制御に関する研究会に所属する施設に対し調査を行った.25施設中17施設より回答が得られ,病床平均は610床(0~1300床)で,ほぼ全て(88%)の施設でインフルエンザ対応の専門部署の設置や情報提供,サーベイランスなどの対策がとられていた.トリアージによる患者の動線分離(82%)や患者に対するマスク着用(94%)もよく実践されていたが,施設毎に実施期間のばらつきがみられた.個人防護具の使用も同様に内容や期間にばらつきがみられたが,サージカルマスクは一貫して用いられていた.全体的にはパンデミック(H1N1) 2009流行初期は厳密な感染対策を採用し,感染性・病原性が明らかになるにつれ季節性インフルエンザに準じた対策に変化する様子がうかがえた.特に各施設が実際に患者を経験した後に現実的な対応に移行したと考えられた.今後の施設内感染対策を考えるうえで,対策の妥当性や効果,情報共有などの問題について継続して検討すべきと考えられた.
  • 遠藤 史郎, 徳田 浩一, 八田 益充, 國島 広之, 猪俣 真也, 石橋 令臣, 新井 和明, 具 芳明, 青柳 哲史, 山田 充啓, 矢 ...
    原稿種別: 報告
    2012 年 27 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
      2011年3月11日の東日本大震災に伴う宮城県名取市館腰避難所においてインフルエンザアウトブレイクが発生した.同避難所では200名の避難者が共同生活を営んでおり,40%が65歳以上の高齢者であった.初発例発生から5日目の4月8日当避難所の巡回診療を行っていた名取市医師会会長よりインフルエンザアウトブレイクに対する介入要請があり,対応策構築のために同避難所へ介入した.介入時既に,non-pharmaceutical interventions: NPIとして,発症者全員の隔離が行われていたが,隔離以外の手指衛生をはじめとするNPIは十分には行われていなかった.一方で,計22名への予防投与が行われていた.したがって,NPIを中心とした基本的対策の強化(ⅰ:マスク着用率の向上,ⅱ:手指衛生の適切な実施の啓発,ⅲ:換気の実施,ⅳ:有症状者の探知および発症者家族のモニタリング強化,ⅴ:発症者の隔離)を現場スタッフと確認し,一方,現場医師と予防投与は基本的対策を徹底したうえで,なお,感染が拡大した場合のみ考慮すべき対策であること,また,その範囲・適応などに関して協議した.4月13日,2度目の介入を行い新規発症者は18日の1人を最後に終息した.避難所におけるインフルエンザアウトブレイクは過去にも報告が少なく,初めての経験であった.予防投与はあくまで補助的な方策であり,アウトブレイクの規模や感染リスクを考慮し,さらにNPIの強化徹底を行った上で行うことが必要であると考えられた.
  • 寺沢 匡史, 森本 一平, 上地 隆史, 吉村 真弓
    原稿種別: 報告
    2012 年 27 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
      2009年2月に東淀川区薬剤師会会員薬局に対して感染対策に関するアンケート調査を行ったところ,感染対策は不足していると感じている施設は多かった.しかし,2009年の新型インフルエンザの流行を経験し,各施設での感染対策に対する意識が変化した可能性が考えられたことから,再度アンケート調査を行った.
      2010年5月に東淀川区薬剤師会会員薬局全55施設にアンケート用紙を郵送し,44施設より回答を得た(回収率80%).アンケートの結果,感染症患者対応時のマスクの着用は積極的に行われるようになり,感染症患者には順番通りではなく,先に薬を渡すなどの対応を実施している施設が増加し,院外薬局での感染対策に対する意識は向上していると思われた.更に,今後は地域での感染拡大を防ぐためには病院と院外薬局だけでなく,さまざまな医療機関と共に定期的な勉強会を開催し,実施可能な感染対策を検討していく必要があると考える.
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