手術部位感染率の病院間比較は効果的な感染対策であるが,その成否は患者重症度調整にかかっている.本研究の目的は,感染率の病院間比較手法について検証することである.
本研究の解析対象は,APPY, BILI, CHOL, COLN, GAST, RECの6術式である.患者重症度調整変数として,(1) NNISリスク・インデックスを構成する変数,および,(2)サーベイランス対象の全変数,を投入した多変量ロジスティック回帰分析を実施した.モデルのパフォーマンス評価にはc-indexを用いた.また,共変量に,手術時間と内視鏡有無の2変数を投入・除外したモデルを構築し,各モデルにおいて算出される標準化感染比(SIR)の変化を検証した.
解析対象は37病院における37,251症例である.SSI発生に関するオッズ比は術式間およびリスク要因間で大きく異なっていた.APPYを除いて,サーベイランス対象の全変数を用いたモデルはc-indexが有意に高かった(p<0.001).SIRは,構築モデルによって大きく異なり,その結果,病院パフォーマンスの解釈が相反する事象が観察された.
従来のNNISリスク・インデックスによる層別解析よりも,SSIサーベイランスの全収集変数を用いた多変量ロジスティック回帰分析によるモデル解析の方がパフォーマンスの高い結果が得られた.
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