近年,さまざまな背景を有する入院患者に対して,誤嚥性肺炎の予防,経口摂取可能な口腔状態の維持などに重点を置いた標準的口腔ケアを実施することが望まれている.しかし,患者の口腔状態を評価する標準的なアセスメント表はなく,各施設が独自の方法で実施しているのが現状である.本稿では,当院における口腔ケアアセスメント表の作成から改良に至るまでの経緯を文献的考察とともに報告する.
当院はICTとNST活動の一環として病棟における口腔ケア回診を開始した.当初は,電子カルテの医師記録に口腔所見と評価や指導内容を回診者の主観で判断しそれぞれの言葉で記録していた.そこでアセスメント表Ver.1を作成し,客観的で統一された記録,評価を試みた.Ver.1の運用から得られたデータでは,口腔ケアを評価するにあたりポイントとなる症状は乾燥と汚染,好発部位は口唇・口蓋・舌,無歯顎に比べて有歯顎の方が汚染が付着停滞しやすいことが推測されたため,Ver.2では入力項目を絞り込み,新たにリスク項目を加え,それらを点数化した.今回,口腔ケア対象患者のリスク評価として客観的指標に基づいたアセスメント表を使用したことにより,的確な現状分析が可能になった.今後も院内外との連携を見据えた視点から,共通のアセスメント表の検討,汎用性の高い口腔ケアプロトコールの導入など,口腔ケアシステムに係る戦略を立てていきたいと考えている.
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