日本環境感染学会誌
Online ISSN : 1883-2407
Print ISSN : 1882-532X
ISSN-L : 1882-532X
29 巻 , 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説 (疫学・統計解析シリーズ)
  • 藤田 烈
    2014 年 29 巻 5 号 p. 313-323
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
      近年,感染制御領域の研究論文に,下記のような生存時間解析の手法を用い,結果を報告する論文が急激に増えている.
    「Survival analysis was performed using the Kaplan-Meier method. The effect of the variables on the risk of LCBI each day was estimated through a Cox model fitting.」
    「Kaplan-Meier survival analysis and proportional hazards (Cox) regression were used to compare study periods on event rates over time.」
      もともと,この領域の研究で取り扱うイベントには,リスク因子への曝露時間に影響を受けるものが多く,時間依存性共変量を取り扱う機会は高かったのだが,最近ではより直接的に生存時間を評価する論文が増えている.これらの論文を批判的に読むためには,解析手法に関する理解が必要になるが,医療現場で働く職員が統計学に関する系統的な学習機会を得ることは容易ではない.本稿では,本学会誌の読者が,学術論文に記述される生存時間解析の方法や結果を正しく理解できることを目的に,必要な統計理論の基礎および結果に記載される図表の解釈に内容を絞り,解説を行う.
  • 福田 治久
    2014 年 29 巻 5 号 p. 324-332
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
      近年,我が国の医療財政は著しく逼迫しており,診療報酬の総体的な抑制は,医療機関経営の財務をも圧迫している.そのため,限られた医療資源の効率的配分の実現が強く求められており,診療報酬制度は効率性を勘案した評価へとパラダイムシフトが起こりつつある.同時に,医療機関内部においても,どの領域のどの活動にどの程度の資源を投じるか?を科学的に意思決定する動きが加速度的に増しているものと思われる.医療経済評価とは,こうした政策レベル・病院経営レベルにおける意思決定を科学的に判断するためのツールである.
      本稿では,医療経済評価の基本的な考え方と,医療経済評価の実施手法について解説する.実施手法は広範囲に及ぶため,医療経済評価の核となる,(1)分析の立場,(2)比較対照,(3)分析手法,(4)分析期間,(5)アウトカム指標,(6)費用の測定,(7)割引,(8)不確実性の取り扱い,の中心事項について紹介する.
原著論文
  • 丹羽 隆, 外海 友規, 鈴木 景子, 渡邉 珠代, 土屋 麻由美, 太田 浩敏, 村上 啓雄
    2014 年 29 巻 5 号 p. 333-339
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
      Defined daily dose (DDD)を用いた抗菌薬使用量の集計はWHOが推奨する方法である.しかしながら,DDDによる集計は総使用量の集計であるため,使用動向の解釈には限界がある.我々は,欧米にて評価が高まりつつあるdays of therapy (DOT)によって当院の2005年1月から2013年6月の注射用抗菌薬の使用量を集計した.セフタジジムはDDD法,DOT法による集計値ともに年々有意に減少したが,DDD/DOT比は変化なかったことから,使用日数もしくは使用人数の減少によって総使用量が減少したと判定できた.メロペネムはDDD法による集計値,およびDDD/DOT比は有意に増加したがDOT法による集計値は有意に変化しなかったことから,1日用量の増加によって総使用量が増加したと判定できた.一方,テイコプラニンはDDD法による集計値は変化なく,DOT法による集計値の有意な減少,DDD/DOT比の有意な増加が見られたことから,1日用量が増加したが使用日数または使用人数の減少により総使用量は変化していないと判定された.以上の結果から,DDD法とDOT法を使用することにより,抗菌薬使用動向をより詳細に分析でき,今後の抗菌薬適正使用の一助となると考えられた.
  • 山崎 博史, 尾家 重治
    2014 年 29 巻 5 号 p. 340-344
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
      人工関節固定などの手術時に感染症予防や治療のために塩酸バンコマイシン(VCM)を骨セメントに混合して使用する.手術室でのVCM入り骨セメントの調製は無菌の操作が要求されるため,手術室に持ちこむVCM注のバイアルはエチレンオキサイドガス(EOG)による滅菌を行っている.EOGは第一群発ガン物質として指定され,残留があると人体へ何らかの影響を及ぼすと考えられる.今回,EOG滅菌したVCM注バイアル内へのEOG混入の有無を調査した.さらに,安全に使用する際のガス抜き期間,および,EOGがVCMに接触することによる力価の低下についても検討した.
      EOG滅菌後エアレーションを17時間(n=3)および41時間(n=3)行った直後のVCM注のバイアル内には平均66.7 ppm, 8.3 ppmのEOGが混入していることが判明した.その後,室内放置でVCM注バイアル内に混入したEOGは減少し,各々14日後,1日後に消失した.また,EOG滅菌することによるVCMの力価(n=5)の低下は見られなかった.人工関節固定などの手術時にEOG滅菌したVCMを安全に使用するためには,EOG滅菌後エアレーションを17時間行ったのちガス抜き期間を室内放置で14日以上は設ける必要があると考えられた.また,早急に使用する場合には滅菌後エアレーションを41時間行ったのちガス抜き期間を室内放置で1日以上設けることが望ましい.
  • 野上 晃子, 赤松 啓一郎, 小島 光恵, 中井 知美, 辻田 愛, 西野 由貴, 神藤 洋次, 柳瀬 安芸, 南方 良章
    2014 年 29 巻 5 号 p. 345-349
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
      医療関連感染は医療従事者が媒介者となることがあり,手や鼻腔,ユニフォームなどに病原微生物が付着していることが知られている.標準予防策では手指の汚染は防げるが,ユニフォームの汚染は防ぎきれない.そこで,ユニフォームの細菌汚染状況について,職種別,部位別に,付着菌量,菌種の調査を行った.和歌山県立医科大学附属病院に勤務する看護師,医師,理学療法士各6名,計18名に対し,洗濯直後のユニフォームを3日間着用して通常業務を行った後,拭き取り培養法により,ユニフォーム付着菌の菌量と菌種を調査した.調査部位は,ユニフォームの13ヶ所,各々100 cm2とした.職種間では,理学療法士が5.95 CFUと検出菌量が最も多く,医師3.24 CFU,看護師1.83 CFUと続いたが,統計学的には有意差は認めなかった(p=0.165).部位別では,両袖,後面の裾で,他の部位に比べ有意に菌量が多かった(p=0.0010).付着菌種では,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が最も多かったが,黄色ブドウ球菌も多く認められた.医療従事者の感染予防策として,手洗いの励行とともに,ユニフォームの両袖や後面の裾などに対する注意も必要であり,なかでも理学療法士のユニフォームが汚染源になる可能性を考慮すべきである.
  • 久田 友治
    2014 年 29 巻 5 号 p. 350-353
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
      医学生に対する臨床実習の重要度は,教育の国際的評価に耐えうる為にも更に増しているが,感染対策教育における臨床実習についての検討は少ない.本研究の目的は医学生に対するシミュレータを用いた感染対策の教育について評価することである.手術部での実習前後における標準予防策と洗浄・消毒・滅菌の知識を評価するため,医学生94名を対象にアンケートを実施した.実習前は,学生の91%が標準予防策について聞いたことはあるが,68%が「意味をあまり知らない」と答えた.実習後は,学生の97%が標準予防策を理解できたと答え,「実践できそうか」との質問に対して95%が「そう思う」と答えた.実習後は実習前に比較して,洗浄の意義についての知識が定着し,知っている滅菌法および消毒法の数が有意に増加した.標準予防策が客観的臨床能力試験の学習目標に記載されていないので,追加を検討すべきだと考えられた.標準予防策を理解させる為のシミュレータを用いた教育の効果が示唆された.また,洗浄・消毒・滅菌についての教育効果が示された.標準予防策は,内容が多岐にわたり,臨床現場における実践の困難性が示されているので,その継続的な教育が必要である.
報告
  • 脇坂 浩, 清水 宣明
    2014 年 29 巻 5 号 p. 354-360
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
      高齢者介護施設において,感染症対策の実際と課題を明らかにするための調査を行った.A県の特別養護老人ホーム(140か所)と介護老人保健施設(66か所)を対象に,2013年3月~8月に感染症対策に関するアンケート調査を行い81施設(39.3%)の回答を得た.感染症対策としては,マニュアル整備(100.0%),感染症対策委員会の設置(95.1%),職員教育(84.0%)が高率に実施されていた.感染症対策で不十分と考えられる内容としては,職員教育(56.8%),感染症発生に備えた訓練(42.0%)が高い割合を示した.インフルエンザワクチンは職員に高い割合(98.8%)で接種されており入所者に接種していない施設はなかった.インフルエンザのアウトブレイクを毎年認める施設は特別養護老人ホームの1.8%,認める年も認めない年もあるとした施設は特別養護老人ホームの29.1%,老人保健施設の56.0%を占めた.ノロウイルスのアウトブレイクを毎年認める施設はなかったが,認める年も認めない年もあるとした施設は特別養護老人ホームの30.9%,老人保健施設の40.0%に上った.近年,高齢者介護施設では感染症対策の体制整備が進んでいる.しかし,インフルエンザやノロウイルスのアウトブレイクは約3~5割の施設で認められていることから,これらに対応できる体制づくりや教育が必要であると考えられた.
  • 丸山 晴生, 鹿角 昌平, 大塚 祥子, 松岡 慶樹, 清原 健二, 久保田 健, 田中 健二, 安岡 信弘, 堀 勝幸
    2014 年 29 巻 5 号 p. 361-368
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/05
    ジャーナル フリー
      長野県北信医療圏に属する7施設を対象とし,2007年1月~2011年12月の5年間の抗菌薬使用量と耐性率(antimicrobial use and resistance: AUR)を調査した.その結果,Escherichia coliのcefotaxime+ceftriaxone及びlevofloxacin耐性率は各施設及び当ネットワーク全体の双方で著しく上昇していた.当ネットワーク全体としての抗菌薬使用量も増加傾向を示していたことから,E. coliについては各施設のみでなく地域全体としての抗菌薬使用量と耐性菌サーベイランスが必要であると考えられた.一方,Pseudomonas aeruginosaのカルバペネム系薬耐性率は各施設及び当ネットワーク全体のどちらも大きな変動はなく,当ネットワーク全体としての抗菌薬使用量も横ばいであった.したがって,P. aeruginosaでは各施設でのAURサーベイランスを基本とした上で,地域内における自施設の位置を把握することが,抗菌薬の適正使用に向けて有用であると示唆された.
feedback
Top