日本環境感染学会誌
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29 巻 , 6 号
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総説 (疫学・統計解析シリーズ)
  • 福田 治久
    2014 年 29 巻 6 号 p. 387-395
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/26
    ジャーナル フリー
      医療経済評価は医療技術,医薬品,医療材料,対策活動などの効率性を評価する技法であり,効率性とは,費用と有効性の双方の観点から評価されるものである.本稿では,医療関連感染領域における費用の評価方法について紹介する.取り上げる費用は,「対策費用」,「健康状態の変化による医療費」,「生産性損失費用」の3 点である.
      「対策費用」および「健康状態の変化による医療費」の測定は,DPC データやレセプトデータを活用することができることから,最初に,DPC データを用いた評価方法について解説する.次に,「健康状態の変化による医療費」の代表的な測定方法である,(1) カルテレビュー,(2) マッチング法,(3) 回帰分析,の3 つの方法について解説する.また,これらの方法を用いて推計された,本邦における医療関連感染発生による追加的医療費の報告結果について紹介する.最後に,「生産性損失費用」について,医療経済評価ガイドラインにおいて推奨されている評価方法について紹介する.
  • 福田 治久
    2014 年 29 巻 6 号 p. 396-404
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/26
    ジャーナル フリー
      医療経済評価は医療技術,医薬品,医療材料,対策活動などの効率性を評価する技法であり,効率性とは,費用と有効性の双方の観点から評価されるものである.本稿では,医療関連感染領域における有効性の評価方法と医療経済評価の実例について紹介する.
      本稿では,医療経済評価に必要な有効性データについて,(1) 医療関連感染領域の医療経済評価に利活用 可能なアウトカム指標のデータ例,(2) 有効性データ算出時の患者重症度調整に使用可能なデータ例につい て紹介する.さらに,「非皮下トンネル型中心静脈カテーテル」と「末梢挿入型中心静脈カテーテル」の比較 事例をとりあげ,医療経済評価における分析モデルの概要と具体的な検討手順について紹介する.
原著論文
  • 平岡 康子, 市川 ゆかり
    2014 年 29 巻 6 号 p. 405-410
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/26
    ジャーナル フリー
      血液腫瘍内科で長期治療を要する悪性疾患患者を対象にperipherally inserted central venous catheter: PICC (グローションバルブタイプ)を導入した.導入前中心静脈カテーテル(CVC)使用群148件(80症例)とPICCカテーテル使用群66件(57症例)を比較した.1000カテーテル日当たりのカテーテル関連血流感染率は,CVC群5.3,PICC群1.0とPICC群が有意に低かった(p<0.01).PICC挿入合併症は認められなかった.留置期間は,CVC群28.0日,PICC群72.8日とPICC群はCVC群の2倍以上長かった(p<0.01).グローションバルブタイプのPICCは,週1回の生食フラッシュにより維持できることから,入退院を繰り返す化学療法患者の在宅中カテーテル管理も容易となった.これらPICC導入による感染率の低下,長期留置に関連し,患者当たりのカテーテル数はCVC群1.9本と比較しPICC群は1.2本に減少した(p<0.01).血液腫瘍内科における長期治療を要する患者のPICC導入は,感染面,安全面,経済面から有用である.
  • 木津 純子, 高木 奏, 黒田 裕子, 前澤 佳代子, 松元 一明, 堀 誠治
    2014 年 29 巻 6 号 p. 411-416
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/26
    ジャーナル フリー
      複合型塩素系除菌・洗浄用製剤は1錠を500 mLの水道水で溶解して調製する製剤(有効塩素濃度0.1%;本製剤)で,調製液は淡赤色を呈する.調製液の安定性と色調の変化について検討した.
      調製液をガラス製気密容器に入れ,1)室内散乱光下(23–30°C),2)直射日光下(24–34°C),3)室温遮光下,4)高温(40°C)遮光下,5)冷所(4°C)遮光下で保存し,調製直後,3, 7, 14日後の有効塩素濃度(ヨウ素滴定法で測定),pH, 520 nmにおける吸光度を測定した.対照として0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液の有効塩素濃度,pHを測定した.
      有効塩素濃度は,7・14日後には1)71%・58%, 2)68%・53%, 3)70%・59%, 4)44%・17%, 5)93%・89%に低下し,温度が安定性に影響することが確認された.pHおよび吸光度も,有効塩素濃度と同様の低下を示した.また,調製液の色調は有効塩素濃度を反映することが確認された.0.1%次亜塩素酸ナトリウム溶液の有効塩素濃度は,1)95%・91%, 2)54%・32%に低下したが,3)・4)・5)は変化せず,直射日光が安定性に影響していた.pHはほぼ一定であった.
      以上より,本製剤は室温保存で徐々に有効塩素濃度が低下し,1週間が有効期間である.ただし高温を避けて保存する必要がある.また,有効塩素濃度の低下が色調に良好に反映され,色調の観察により残存濃度を確認できることが示された.
  • 柴田 洋文, 川添 和義, 柴田 高洋, 伏谷 秀治, 渡邉 美穂, 高開 登茂子, 長尾 多美子, 東 満美, 水口 和生
    2014 年 29 巻 6 号 p. 417-423
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/26
    ジャーナル フリー
      病院環境表面のモニタリングについて,アデノシン三リン酸(ATP)生物発光および微生物学検定を組み合わせて使用することにより評価した.目的は,患者に対して危険をもたらしうる微生物汚染の迅速な検知方法を開発することである.この目的のために,私たちは,外来患者病棟におけるトイレ設備表面のATP生物発光分析および微生物学的検査を行なった.5か所のスクリーニング部位はすべて,清潔で消毒されたステンレス鋼表面よりも著しく高いATPレベルを示し,高度接触表面であること,そして有意に高い濃度の有機物を保持していることがわかった.微生物学的検定により,微生物汚染がスクリーニング部位の至る所に広がっていることを確認した.微生物が検出されるサンプルのATP値は,微生物が検出されないサンプルのATP値より有意に高い範囲にシフトしていた(p<0.01).しかしながら,スクリーニング部位のATP値と好気性コロニー数との間の直線的関係は確立されなかった.これらの結果は,環境の微生物汚染の測定においてATP生物発光を使用して得られるデータは,定量的ではなく定性的なものであることを明白に示唆している.結論として,ATPモニタリングは,微生物による環境汚染およびそれが持続的な汚染状態にある可能性を把握し,院内環境に対する現在の清掃方法に警鐘を鳴らすうえで,迅速かつ簡便な優れた方法である.
短報
  • 笹原 鉄平, 大西 翼, 渡辺 美智代, 林 俊治, 森澤 雄司, 平井 義一
    2014 年 29 巻 6 号 p. 424-428
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/26
    ジャーナル フリー
      自治医科大学附属病院では,鋭利物廃棄容器を携帯し忘れて発生する針刺し切創を防止するために,鋭利器材や廃棄容器などを搭載した独自の「血管穿刺支援カート」を企画し2010年に導入した.本研究では,2007–2013年における各年のカート配置総数・針刺し切創報告総件数・廃棄容器を携帯しないために発生した事例数を調査し,カート導入による針刺し切創の減少効果を評価した.針刺し切創報告総件数はカート導入前後で変化しなかったが,廃棄容器を携帯しないために発生した事例はカート導入によって有意に減少した(p<0.01).また,カート配置総数と廃棄容器を携帯しないために発生した事例数の間には,負の相関が見られた(相関係数r=−0.83,p<0.05).
報告
  • 前澤 佳代子, 寺島 朝子, 黒田 裕子, 堀 誠治, 木津 純子
    2014 年 29 巻 6 号 p. 429-436
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/26
    ジャーナル フリー
      医療現場での感染防止対策について,感染防止対策加算に関わる診療報酬改定を経てどのように変化したか,アンケートによる実態調査を実施した.2008年5月に第1回調査,2010年4月加算新設後の2011年1月に第2回調査,2012年4月加算改定後の2013年8月に第3回調査を行った.全国有床診療施設より抽出した1000施設に調査を依頼した.ICT設置率は,第1回(回答539施設)78%,第2回(494施設)77%であったが,第3回(574施設)では88%に増加していた.加算の算定率は,第2回調査においては46%であり,その9割が300床以上であった.第3回調査では85%(加算1:60%,加算2:25%)となり,300床未満の施設の算定率が上昇した.算定による変化として,ICTラウンドの頻度の増加が挙げられ,“週一回以上”実施している施設が16%, 35%, 54%と増加した.さらに,抗菌薬管理を強化した施設も多く,カルバペネム系薬の許可制・届出制を導入している施設は45%, 59%, 75%に増加した.注射用抗MRSA薬もいずれも同様に増加し,第3回調査では全て70%以上であった.その他,ICT及び専門職種の増員などが行われた.以上より,2012年4月の加算改定により,施設の病床規模によらず,感染対策に対する取り組みや体制作りが一層推進され,各施設の感染防止対策が充実してきていることが確認された.
  • 岡田 淳子, 山水 有紀子, 山根 啓幸, 山村 美枝, 松本 由恵, 百田 武司, 西條 美恵, 板橋 美絵
    2014 年 29 巻 6 号 p. 437-443
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/26
    ジャーナル フリー
      大規模な災害時は生命の危機状態にある患者が急増し,医療機関は入院患者の対応が優先されるため避難所への支援は困難になる.そのため,避難所での感染伝播を防ぐには,避難者が実施する衛生管理が重要になる.そこで,避難者が実施した衛生的な行動を明らかにし,避難所の感染予防策について検討した.
      東日本大震災で避難所生活を経験した避難者80名を対象に,手指衛生と環境衛生について構成的面接を実施した.その結果,震災直後は手を洗う環境が全くなかったと約60%が回答したが,救援物資の到着や水道の復旧によって手指衛生は強化された.しかし,手指衛生の実施場面は個人の衛生習慣が影響するため,日常から住民の手指衛生が習慣化する関わりが必要と思われる.また,外部支援による感染予防行動や衛生管理の指導は約25%の避難者にしか認識されていなかった.しかし,指導を受けた避難所リーダーが感染予防行動を具体的に指示した避難所は,環境の衛生状態を維持していた.避難所で感染を防止するためには,集団をマネジメントするリーダーの存在が重要であり,外部支援としては避難者らが予防行動を開始できるように支援することが示唆された.
  • 平木 洋一, 吉田 真由美, 井上 大奨, 河野 文夫
    2014 年 29 巻 6 号 p. 444-452
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/26
    ジャーナル フリー
      国立病院機構143の医療施設を対象に施設概況および感染制御対策(以下,感染対策)に対する職員の満足度についてアンケート調査を行った.感染防止対策加算の届出状況は,回答があった109施設のうち,加算1の施設(以下,加算1群)は66施設(62.9%),加算2の施設(以下,加算2群)は33施設(31.4%)および届出なしの施設(以下,届出なし群)は10施設(9.5%)であった.加算1群では一般病床数が多く,加算2および届出なし群では少ない傾向が認められた.平均在院日数は加算1群が有意に短く(p=0.01),届出なし群では長期入院の傾向が認められた.医師および看護師の職員数は,加算1群が最も多かった.また,加算1群では「満足」,届出なし群では「不満足」と回答した職員の割合が有意に多かった(p=0.01).優先的に改善すべき項目を示す指標値(以下,改善度)を検討した結果,届出なし群では「抗菌薬の適正使用」の改善度が11.0と最も高く,「抗菌薬の適正使用」の推進は急務であると思われた.届出なし群では,専従でinfection control teamへ人材を配置することが難しい環境であるため,「感染対策の周知徹底」の改善度が高値(10.2)を示したと考えられる.施設概況や職員の満足度を調査することで,感染対策の評価や改善点の抽出が可能となると示唆する.
  • 青山 恵美, 操 華子
    2014 年 29 巻 6 号 p. 453-462
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/26
    ジャーナル フリー
      結核病棟を有していないA病院における肺結核患者の受診の遅れ,診断の遅れの実態とその関連要因について明らかにした.
      データトライアンギュレーションを用いた症例集積研究を行った.2010年7月から2011年9月までに,A病院で肺結核と診断された7名の患者(男性6名・女性1名)と診断を担当した4名の医師を対象とした.肺結核の症状出現から診断までの経過について,診療記録ならびに対象患者と対象患者を診断した医師との半構造化面接から,情報収集を行った.
      診療記録から収集した情報では患者の受診の遅れは明らかにならなかったが,面接の分析結果では7名のうち6名に数カ月から数年にわたる受診の遅れが認められた.肺結核の診断は比較的早期にされており,診断の遅れは明らかにならなかった.受診の遅れに関連した要因として,【受診にはつながらなかった症状】【健康診断結果通知の遅れ】【結核に対する知識不足】【健康診断での異常の指摘後のフォロー不足】が明らかになった.【受診にはつながらなかった症状】には,肺結核の典型的な症状に加え,微熱,食欲不振,疲労のような肺結核特有ではない一般的な症状が含まれた.特に,高齢者では加齢によるものとしてそれらの症状が見落される傾向が明らかになった.
      患者の受診の遅れを短くするために,微熱,食欲不振,疲労のような一般的な症状が持続,悪化した時には,医療機関を受診するように教育する必要がある.また,診断の遅れを短縮するためには,医師の肺結核に対する意識や知識が関連しており,呼吸器内科医の診察や胸部レントゲン写真の読影医によるダブルチェックなどの診療体制の整備と過去履歴の管理が重要である.
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