がん患児においては,
Clostridium difficile感染症(
C. difficile infection, CDI)のリスクが高いことが報告されている.一方,成人病棟とは異なり小児病棟においては,多くの場合,排泄ケアが医療従事者ではなく付き添いの家族によって行われることが多く,
C. difficileによって環境が汚染されることが多いと考えられる.
本検討では,大学附属病院の小児病棟の環境における
C. difficile汚染状況を調査した.環境調査は5回繰り返し行い,検体採取を行った113ヶ所中28ヶ所(25%)から少なくとも1回以上,のべ502ヶ所中のべ39ヶ所(7.8%)から,
C. difficileが分離された.分離された39株においてPCR ribotypingによる解析を行ったところ,異なる12タイプが認められた.39株のうち,13株は同一タイプPCR ribotype trf株であり,病棟の広範囲の環境表面から検出された.一方,急性リンパ性白血病の患児の糞便検体から繰り返し分離された菌株と同一タイプ(PCR ribotype smz)の菌株が,本患児の病室環境および車椅子利用者用トイレから検出された.以上より,小児病棟におけるCDIの感染予防のために小児および家族に対して標準予防策の教育に加え,適切かつ慎重な環境清掃の必要性が示唆された.
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