本学会は1986年に上田泰らを中心に発足した.本学会の設立の趣旨として,病院感染症に限定することなく広く生活環境に関連する感染について討議するということ,医師のみでではなくコメディカルの人々をはじめ多くの関係者の参加によって底辺の広い会員層をめざした,と言うことが含まれていた.
最近のエボラ出血熱,耐性菌の蔓延,震災での感染症の経験は,感染制御において病院と言う場所はその環境の一つに過ぎず,様々な環境とその社会的状況における感染の伝播と言うことを我々は常に意識しなければならないことを改めて認識させられた.また昨今チーム医療の重要性が言われるが,多職種による感染対策への取り組みは,今やチーム医療の典型例として診療報酬上も高く評価されている.その構築には幅広い職種によって構成される本学会が大きく寄与して来たことは言うまでもない.
このように最近の国内外の感染症をとりまく状況は,本学会の設立の趣旨が30年経過した今でも重要な考えであることを我々に教えている.今後ともこの考えを忘れずに,本学会は地域,病院など地球上の様々な単位における感染症の防御に大きな役割を果たして行くべきである.
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