日本環境感染学会誌
Online ISSN : 1883-2407
Print ISSN : 1882-532X
ISSN-L : 1882-532X
31 巻 , 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著論文
  • 大迫 しのぶ, 伏見 了, 中田 精三, 織田 美紀, 岡本 昇, 勝田 勲, 高橋 遼平, 佐藤 昇良, 鈴木 繁哉
    2016 年 31 巻 5 号 p. 285-291
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/05
    ジャーナル フリー
     上部消化管内視鏡における交差感染を防止するためには,内視鏡本体と,チャンネル内を高い清浄度を保って洗浄する必要がある.洗浄効果判定には,従来から洗浄後の残留微生物や蛋白質が採用されてきた.しかし,蛋白質を測定するには特殊な試薬と装置が必要であり,また微生物では培養に24時間以上必要なことからリアルタイムな測定はできず,現行の洗浄方法を正確に評価して業務改善に反映させることが困難であった.動植物細胞が含有するアデノシン三リン酸(ATP)とアデノシン一リン酸(AMP)を,高感度で測定可能な生物学的発光法を原理とした方法が開発されている.本法は,測定対象表面を綿棒で拭き取り,一体型試薬と反応させた後に小型測定器で発光量(数値)を得るものである.今回我々は新しく開発された,長さ400 mmの綿棒先端に直径2.8 mmの綿球を装着した専用長軸綿棒を用いて,患者から抜去直後内視鏡チャンネル内のATP+AMP量を指標として使用直後の汚染と,洗浄消毒後の清浄度を評価した.さらに,所有する15本の内視鏡について毎日1本を順に選び,11ヶ月間にわたって洗浄消毒後チャンネル内のATP+AMP量を測定して当院の残留基準値(100 RLU)を決定し,この値を超えた場合には再洗浄をすることとした.
  • 三﨑 貴子, 岡部 信彦
    2016 年 31 巻 5 号 p. 292-296
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/05
    ジャーナル フリー
     国内で麻疹が排除状態となった現在,曝露機会は少ないものの業務上麻疹ウイルスに曝露する可能性のある医療従事者や検査及び疫学調査に携わる者は,罹患を防ぐとともに自身が感染源とならないための予防と対策を徹底する必要がある.2015年度に当研究所に勤務し同意の得られた職員を対象に,ワクチン接種歴及び罹患歴に関するアンケートを実施し,ゼラチン粒子凝集法(PA法)で麻疹抗体価を測定した.アンケートは,全職員47名中,休業中の3名を除く44名全員に実施した.このうち42名(95.5%)に検査を実施し,36名(85.7%)が医療従事者としての基準を満たす抗体価陽性(256倍以上)であった.2回の予防接種記録がある4名のうち3名は基準を満たす抗体価陽性であったが,1名は陰性(16倍未満)でワクチン接種勧奨により後日麻疹風疹混合ワクチンを接種した.1回の予防接種記録がある17名中15名と予防接種記録のない21名中18名も基準を満たしていた.基準を満たさないものの,抗体価陽性であった5名中2名に麻疹含有ワクチンの1回接種記録,1名に罹患の記録があった.受検率は高く,職員の抗体価も概ね医療従事者の基準を満たしていたが,予防接種記録があっても陰性や基準を満たさない者がおり,今回のような調査や検査の実施は,有効なワクチン接種勧奨を可能にするとともに研究施設としての麻疹対策に有用と考えた.
  • 山下 恵美, 森兼 啓太, 谷口 弘美, 宮田 貴紀, 前多 香, 高橋 陽一, 大澤 忠, 細田 清美, 村田 弘美, 伊藤 淳, 又吉 ...
    2016 年 31 巻 5 号 p. 297-309
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/05
    ジャーナル フリー
     我々は本邦初の透析関連感染を対象にした多施設共同サーベイランスを2008年より実施している.今回,2008年から2013年までの6年間に亘る29医療機関のサーベイランス結果を基に透析関連感染の現状とサーベイランスの成果を評価検討し,感染に影響を及ぼす因子と今後の課題を明らかにすることを研究目的とした.6年間の感染症例は350例(シャント75例,グラフト33例,動脈表在化12例,短期カテーテル205例,長期カテーテル25例)であり,1,000透析日あたりの感染率はシャント0.08,グラフト0.76,動脈表在化0.26,短期カテーテル12.16,長期カテーテル1.15であった.感染の現状は米国と概ね同水準と推察され,短期カテーテルの感染率は極めて高く,血液培養の主要な検出菌はMRSAを含むStaphylococcus aureusであった.短期カテーテルは全体の50%が透析導入時に使用され,感染までの留置日数は13.7±13.9日であった.短期カテーテルの使用と鼠径部への留置は感染の危険因子と示唆され(p<0.001),可能な限り鼠径部留置を避け,透析導入時の短期カテーテル使用を回避するための実務改善が課題と考えられた.本研究では,感染対策の質改善により透析関連感染が減少したことが明らかとなった.今後,更なる危険因子の解析と感染対策の検証が望まれ,標準的な感染対策に繋げる必要がある.
報告
  • 西村 秀一
    2016 年 31 巻 5 号 p. 310-313
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/05
    ジャーナル フリー
     据え置き芳香剤の剤形で二酸化塩素ガスを逐次空中に放散させ,抗ウイルス効果を標榜する製品の有用性を検証した.冬季の生活空間を想定し室温23℃,相対湿度30%に設定した1.8 m3の密封チャンバー内で製品を開封し,試験中ガス濃度を0.03 ppmを目標として蓋の開閉で調整し,結果的に実験時間中はほぼ0.035–0.04 ppmの濃度に維持できた.その中に鶏卵由来のA/愛知/2/68株インフルエンザウイルスを含むしょう尿液をネブライザーでミスト化して噴霧し,一定時間後にチャンバー内空気80 Lをゼラチン膜でろ過し,膜に捉えたミスト粒子中の活性ウイルス量を測定し,同製品による空中浮遊インフルエンザウイルスの不活化効果をみた.その結果,今回の実験条件化では,ガスへの曝露を受けた空間での活性ウイルスの量は対照のそれと変わらず,不活化効果は確認されなかった.
     二酸化塩素ガスによる殺菌,ウイルス不活化の感染制御の実用化のためには,今後さまざまな条件の下でその殺菌/ウイルス不活化効果の有無を検証していく必要があろう.
  • 多賀 允俊, 薄田 大輔, 野田 洋子, 飯沼 由嗣, 西田 祥啓, 山本 康彦, 丹羽 修
    2016 年 31 巻 5 号 p. 314-318
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/05
    ジャーナル フリー
     次亜塩素酸ナトリウムは病院環境や物品の消毒薬として汎用されているが,分解されやすく,使用時に消毒効果が十分保証されているとは言い難い.ヨウ素試薬吸光光度法を測定原理とする塩素濃度測定の有用性を示した報告があるが,専用の測定器を必要とする.今回,特別な測定器を必要としない簡易な方法である比色法を原理とする測定試薬を用いて,病棟で調製された次亜塩素酸ナトリウム浸漬液の塩素濃度(実測値)を測定し,比色法による塩素濃度測定の有用性及び塩素濃度低下の要因について検討した.次亜塩素酸ナトリウム浸漬液を使用していない2病棟を除く19病棟の20サンプルを対象とした.調製方法から求めた塩素濃度(理論値)は120~750 ppmであり,17サンプルで理論値よりも実測値が低下していた.そのうち2サンプルは調製方法の誤りが要因であり,別の1サンプルでは調製前の次亜塩素酸ナトリウム製剤の塩素濃度低下が要因として考えられた.次亜塩素酸ナトリウムは,調製方法のみならず管理状況により,予想以上に分解が促進され消毒効果が不十分となる可能性がある.このため,次亜塩素酸浸漬液による消毒効果の保証のためには,次亜塩素酸ナトリウム溶液の適正な保管及び調製方法の遵守が必要である.比色法による測定試薬は安価かつ簡単に塩素濃度が確認でき,院内における適正な浸漬消毒の評価に有用であると考えられた.
  • 大森 優子, 松崎 晋一, 中島 雅子, 河井 利恵子, 岡田 克之, 桑島 信
    2016 年 31 巻 5 号 p. 319-325
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/05
    ジャーナル フリー
     活動性結核が院内で発生した場合には他者への感染拡大が重大な問題となる.2009年当院入院後に感染対策を施行されていない4名の患者から肺結核が診断され,約130人に接触者健診を実施した.この事例を機に60歳以上で喀痰培養を行った入院患者を対象に,抗酸菌検査の依頼がない検体について検査室で抗酸菌塗抹検査を追加し排菌結核患者のスクリーニングを行った.調査期間は2010年9月から2014年12月とした.追加した抗酸菌塗抹検査は2,646検体でありこのうち5検体で結核菌が検出された(全体の0.19%).また介入前後の塗抹陽性肺結核患者12人の比較を行い,抗酸菌塗抹検査を追加する介入によって接触者健診対象者が56人減少し,接触者健診を1人減少させるために要する追加費用は868円であり,接触者健診1人当たりの費用2,933円と比較して安価であった.スクリーニング検査により早期に結核を診断し感染曝露の危険性を低下させることは,結核の院内感染対策として非常に重要である.今回の結果より入院時および入院中の患者から提出されたすべての喀痰検体に抗酸菌塗抹検査を行うことが,活動性肺結核患者の早期発見さらには接触者健診数の減少につながる可能性が示唆された.一方入院後14日以上検体が提出されなかった症例もあり,できるだけ早期に検体が提出されるよう医師を対象とした啓発活動や診断サポート体制の整備も不可欠と考えられた.
  • 岡村 祐嗣, 倉内 寿孝, 津山 博匡, 板垣 史郎, 萱場 広之, 早狩 誠
    2016 年 31 巻 5 号 p. 326-334
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/05
    ジャーナル フリー
     今回,我々は感染防止対策加算連携施設間における抗菌薬使用量サーベイランスをantimicrobial use density (AUD)とdays of therapy (DOT)を用いて行い,緑膿菌の耐性率推移とともにサーベイランス結果の評価を行った.AUD, DOT各々に着目して2012年と2014年を比較すると,当院の第1世代セフェム系,第3世代セフェム系,第4世代セフェム系,カルバペネム系,アミノグリコシド系,グリコペプチド系,脳卒中センターのペニシリン系,抗緑膿菌ペニシリン系,カルバペネム系でDOTの変化がAUDの変化と比較して大きく変化していた.この結果から,施設間の抗菌薬使用量サーベイランスをAUDとともにDOTを用いて行うことで,各施設におけるAUDの変化が使用量と使用期間のどちらが大きく影響したか判断することが可能となり,各施設の各系統抗菌薬において使用量の適正化,使用期間の適正化といった課題をより明確にすることが可能になると考えられた.各系統抗菌薬の使用量,使用期間と緑膿菌耐性率の推移では,両施設ともに使用量,使用期間の推移と緑膿菌耐性率の推移に関連は見られず,抗菌薬の使用量と使用期間の推移のみが緑膿菌の耐性率の推移に与える影響は大きくないことが示唆された.
  • 佐和 章弘, 森兼 啓太, 針原 康, 清水 潤三
    2016 年 31 巻 5 号 p. 335-343
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/05
    ジャーナル フリー
正誤表
feedback
Top