本研究の目的は,病室と病室外で発生した針刺し切創のデータを元に,リスクの高い器材や事例発生状況を明らかにすることである.エピネット日本版サーベイランスに参加している118施設に対し,2013年4月から2015年3月における針刺し切創事例全数のデータの提供を求めた.87施設から6,201件が収集された.病室では1,698件,病室外では593件の針刺し切創が報告された.針刺し切創が最も多かった器材は,使い捨て注射器の針(病室30.6%,病室外35.9%)であった.事例発生状況は,病室では患者に器材を使用中,病室外では器材の分解時が最も多かった.病室での器材別の事例発生状況としては,使い捨て注射器の針では使用済み注射針のリキャップ時(23.9%),翼状針は使用中(48.4%),薬剤の充填されている注射器の針では器材の分解時(21.9%),静脈留置針と真空採血セットの針は使用中(30.2%,35.4%)であった.病室外での器材別の事例発生状況としては,使い捨て注射器の針では器材を患者に使用する前(21.6%),薬剤の充填されている注射器の針では器材の分解時(27.2%),静脈留置針と真空採血セットの針は,廃棄ボックスに器材を入れる時(24.4%,29.4%)であった.病室と病室外では,針刺し切創が起こりやすい器材や事例発生状況が異なっていた.
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