日本環境感染学会誌
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32 巻 , 2 号
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原著
  • 加藤 由紀子, 浜田 幸宏, 久留宮 愛, 岡前 朋子, 高橋 知子, 坂田 美樹, 末松 寛之, 吉田 英二, 西山 直哉, 小泉 祐介, ...
    2017 年 32 巻 2 号 p. 67-73
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/05
    ジャーナル フリー

    中心静脈カテーテル関連の血流感染の約半数に刺入部周辺の皮膚の細菌が関連していることが明らかになっている.我々は,抗菌効果のある亜鉛結合繊維パッドを組み合わせたフィルムドレッシング(フィックスキット・CV)材が,中心静脈カテーテル刺入部周辺部の皮膚細菌叢に与える影響を検討した.

    同意を得た症例にフィックスキット・CVと非亜鉛含有ドレッシング材の2種類を無作為に割り付け,ドレッシング材除去直後にカテーテル刺入部周囲皮膚の1 cm2範囲を滅菌綿棒でぬぐい取り,細菌定量培養を実施した.フィックスキット・CV102例,非亜鉛含有ドレッシング材100例にて検討した.菌検出率は,それぞれ47.1%(48件),62.0%(62件)であった(p=0.03).ロジスティック解析にて菌検出に影響を及ぼす因子は,BMI,性別,カテーテル挿入部位であった.BMI 25 kg/m2以上とBMI 25 kg/m2未満での菌検出率は,それぞれ73.8%,49.4%であった(p=0.01).中心静脈カテーテル刺入部周辺部皮膚の細菌数は,BMIが大きく影響していた.BMI 25 kg/m2未満の患者では,抗菌作用を有するドレッシング材を使用することにより皮膚細菌の増殖リスクが軽減する可能性が示唆された.

  • 黒田 恵美, 工藤 宏一郎, 川名 明彦, 西岡 みどり
    2017 年 32 巻 2 号 p. 74-84
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/05
    ジャーナル フリー

    双方向的な情報交換であるリスクコミュニケーション(risk communication,RC)は,新型インフルエンザパンデミックに対する有効な危機管理策の一つである.本研究は,パンデミック2009H1N1において,感染管理看護師(infection control nurse,ICN)が行ったRCの実態,および平時のどのようなICN活動が発生時のRC促進要因であったかを明らかにすることを目的とした.

    感染症指定医療機関において2009年度に感染管理を主担当したICNを対象に自記式質問紙調査を実施した.パンデミック発生時のRC促進に関連する平時のICN活動について多変量解析を行った.

    パンデミック発生時のRCの実施率は13~82%であり,充分ではなかった.院内職員からの「不安や精神的ストレス」等に関する情報の聞き取りが少ない傾向にあった.RCを促進する平時のICN活動は,専従,24時間対応の緊急連絡用電話の携帯,国や地方自治体・近隣の保育所・委託業者責任者との窓口担当,全職員を対象としたコンサルテーション活動であった.新型インフルエンザへ備えるためには,これらの平時のICN活動とともに,ICNへのRCに関する教育の強化,ICNの複数配置が求められる.

短報
  • 石原 由華, 宇佐美 久枝, 畠山 和人, 太田 美智男
    2017 年 32 巻 2 号 p. 85-88
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/05
    ジャーナル フリー

    Bacillus cereusによる敗血症の多くは,清拭タオルのB. cereus芽胞汚染から患者皮膚・医療者の手指などを介した輸液汚染が原因である.したがって防止対策には清拭タオルのB. cereus汚染状況の把握が必要だが,汚染の定量的測定法が確立されているとは言えない.そこで検出率を高めるためにビーズ抽出法を改良し,清拭タオルのB. cereus汚染を調査した.業者から納入された洗浄・乾燥済み清拭タオルを無作為に選択し,改良法により1枚のタオルから23か所の切片を切り出し各切片についてビーズ抽出法を行った結果,9枚中7枚にB. cereusの検出がみられた.汚染は辺縁部位に比較的多くみられた.

報告
  • 寺田 喜平, 平田 早苗, 石松 昌己, 河口 豊, 萱 智史, 藤井 哲英, 北川 誠子, 大石 智洋, 尾内 一信
    2017 年 32 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/05
    ジャーナル フリー

    伝染性紅斑は軽症なウイルス感染症であるが,妊婦が感染すると胎児水腫や流死産を来す.ワクチンはなく流行を繰り返しており,予防は困難なため院内感染対策及び職業感染対策として重要な感染症の一つである.今回一過性赤芽球癆の患者が入院し,マスク装着や手指衛生の徹底,妊婦や妊娠を望む看護師を担当から外して休憩室を別にするなど対策を行った.しかし妊婦でない担当看護師1名が伝染性紅斑を発症した.接触歴のあった妊婦は保険外適応であるため,産科でそのIgG抗体は検査できなかった.病棟看護師31名全員のIgGおよびIgM抗体を測定した結果,発疹が出た担当看護師のみがIgM抗体陽性,既感染を示すIgG抗体のみ陽性は20/31名(64.5%)であった.伝染性紅斑のリスク評価と今後の院内感染対策を改めて検討した.また伝染性紅斑に感染した助産師から同僚や妊婦への感染の報告があり,妊婦指導をする助産師と看護師のIgG抗体を測定した.一般に成人間の伝染性紅斑の感染は少なく,妊婦は自身の子供から感染する報告例が多かったので,家庭で子供が伝染性紅斑に感染した時にその接触者である職員は院内で手指衛生とマスクを装着すること,また妊婦や妊娠を望む同僚に手指衛生とマスク装着を指示した.今回,流行時における日常の伝染性紅斑対策について新たな対策を提言した.

  • 村田 龍宣, 大橋 正和, 本多 あずさ, 水野 幸子, 村上 あおい, 林 彰彦, 杤谷 健太郎, 清水 恒広
    2017 年 32 巻 2 号 p. 94-100
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/05
    ジャーナル フリー

    標準予防策と感染経路別予防策は感染制御の基本であり,薬剤師は他の医療スタッフと同様に手指衛生を遵守し,個人防護具(PPE)を適正に使用する必要がある.今回,薬剤師のPPEに関する知識レベルや実践能力の実態を把握するため,感染防止対策加算で連携する病院薬剤師を対象にアンケート調査を行い,その後PPE着脱実習を含む研修会を実施した.アンケートは9施設57名から回答を得た.アンケートでは,PPEの付け方の順序,PPEの脱ぎ方の順序,廃棄分別方法を,それぞれ78.9%,77.2%,56.1%が「知らない」と回答した.また,感染経路別予防策が必要な患者であることを示す自施設での表示を53.8%が「知らない」と回答した.さらに,感染経路別予防策が必要な患者への服薬指導時に約50%がPPEを着用していなかった.以上から,病院薬剤師のPPEに関する知識・技能は十分でないことが示唆された.研修会後の調査では,PPEの付け方の順序,PPEの脱ぎ方の順序,廃棄分別方法について,それぞれ84.3%,86.3%,90.2%が正解した.また,その理解度は講義のみの研修会よりもPPEの着脱実習を取り入れた研修会の方が有意に高かった.今後,病棟業務を行う薬剤師は,感染経路別予防策の必要性を十分認識したうえで,事前にPPEの着脱実習を行い,着脱の手技と使用済みPPEの廃棄に習熟する必要があると考える.

  • 文字 雅義, 藤村 忍, 小林 建司, 宮﨑 崇
    2017 年 32 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/05/05
    ジャーナル フリー

    建物の改修や解体時には,アスペルギルス属や他の真菌の胞子を含んだ浮遊粉塵が発生し,免疫力の低下している患者ではアスペルギルス属による院内感染が問題となることが知られている.

    病棟改修工事期間中,主として浮遊粉塵濃度の測定結果に基づいて感染防止対策を行った.院内の浮遊粉塵濃度は大気中の浮遊粉塵(浮遊粒子状物質:SPM)の影響を受けたが,患者等病院利用者の滞在空間内では,工事によると考えられる明らかな浮遊粉塵濃度の上昇を認めなかった.工事現場への出入口の前で粉塵濃度の上昇を認めたのみであった.そのほか,(1,3)―β-D-グルカン検査数および陽性割合,アスペルギルス属の検出数についても,非工事期間と比べて有意な上昇が認められず,改修工事に起因したアスペルギルス症の患者は発生しなかった.大気中のSPM濃度を参照しながら院内浮遊粉塵測定することは感染対策上有用であると考えた.

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