日本環境感染学会誌
Online ISSN : 1883-2407
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33 巻, 1 号
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総説
  • 坂本 史衣
    2018 年 33 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2018/07/25
    ジャーナル フリー

    PDCAサイクルとは,継続的な品質改善のために行うPlan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の4段階から構成されるプロセスである.PDCAサイクルは,これまでさまざまな医療現場において医療関連感染予防に活用されており,手指衛生のような科学的根拠に基づく感染対策の実施率を向上させることを通して,感染リスクの低減をもたらしている.PDCAサイクルにおけるサーベイランスの役割は,医療関連感染予防のために行われるプロセスとそのアウトカムを測定(Check)することである.サーベイランスデータの収集と迅速なフィードバックは,施設職員の間に改善に向けた競争意識を生み,推奨される医療関連感染対策の実践を改善する行動(Act)へとPDCAサイクルを回す.本総説では,PDCAサイクルを回し続けるために欠かすことができない主要なプロセスおよびアウトカム指標の活用について述べる.

原著
  • 松木 祥彦, 矢嶋 美樹, 塚本 哲也, 渡部 多真紀, 渡辺 茂和
    2018 年 33 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2018/07/25
    ジャーナル フリー

    高齢者へのアミカシン硫酸塩(amikacin sulfate:AMK)1日1回投与には,腎機能に応じて体重あたりの1回投与量(mg/kg)を減じた投与法が推奨されている.しかし,1回投与量の減量は,十分な抗菌活性を発揮できない可能性が指摘されている.そこで,AMK1日1回投与法をおこなった高齢者を対象として臨床効果に影響を及ぼす因子について検討した.

    65歳以上の細菌性肺炎患者のうち,AMKを使用した330症例を対象とした.それらを有効群と無効群の2群に判別し,投与量,身体計測値,血液一般検査値,血液生化学検査値を比較検討した.

    有効群と無効群で有意差が認められた因子はAlb,TP,RBC,Hb,体重であった.AMKの投与量は,有効性に差を認めなかったが,Cpeak≧41 μg/mLでは,有効性に差が認められたAlb,RBC,Hbに差は認められなかった.腎機能障害においては,Cpeak≧41 μg/mL群およびCpeak<41 μg/mL群ともに発現率に差は認められなかったが,trough≧4 μg/mL群では有意に高値であった.

    高齢者におけるAMK1日1回投与法は,Ccrに応じて投与量を減量する場合でもCpeak≧41 μg/mLを考慮した投与設計を要することが示唆された.また,Alb,TP,RBC,Hb,体重が低値である患者では,十分な抗菌活性を発揮できない可能性が示された.

  • 西山 秀樹, 湯浅 典博, 美濃島 慎, 小澤 賀子, 高坂 久美子, 黒野 康正, 野村 史郎, 宮村 耕一
    2018 年 33 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2018/07/25
    ジャーナル フリー

    施設内の重症感染症を発見し,早期にかつ適切な治療を臨床医に促すことはinfection control teamの重要な活動の1つである.この研究は発熱・高プロカルシトニン血症を伴う入院患者の短期予後予測因子をルーチン血液検査項目の中から明らかにすることを目的とした.対象は年齢16歳以上,体温>38℃,プロカルシトニン(PCT)>2.0 ng/mLを認めた425患者である.探索群(217患者)において多変量解析で30日生存率と有意に関連したのはC-reactive protein≧22.57 mg/dL,アルブミン<2.8 g/dL,血中尿素窒素≧32 mg/dL,赤血球容積粒度分布幅≧15.3であった.この4因子のうちの該当数を予後予測スコア(prognostic score:PS)とすると,30日生存率はPS:0,100%,PS:1-2,85%,PS:3-4,64%で,PSが高いほど30日生存率は不良であった(p=0.0010).PSは検証群(208患者)においても30日生存率をよく層別化し,30日生存率はPS:0,90%,PS:1-2,81%,PS:3-4,52%であった(p=0.0001).体温>38℃,PCT>2.0 ng/mLを伴う患者において,PS:3以上は短期予後不良を示唆する.

  • 土田 敏恵, 濵元 佳江, 荻野 待子
    2018 年 33 巻 1 号 p. 24-36
    発行日: 2018/01/25
    公開日: 2018/07/25
    ジャーナル フリー

    擬似便の除去と拡散防止に有効な陰部ケア方法を明らかにすることを目的に準実験研究を行った.対象は臨床の看護師・介護職者15名で,蛍光塗料含有擬似泥状便をセットされた男性陰部モデル付き人形に対し,全国調査で最も多かった洗浄方法である一般法・テキストから考案された洗浄法・泡状洗浄料による清拭のみを行う清拭法・撥水性オイルを予め人形に散布し清拭布による清拭を行う撥水処理後清拭法の4法を実施した.評価方法は,ケア実施者・実験人形・周囲環境・使用物品への擬似便の付着の有無と面積について統計学的に比較した.一般法と洗浄法では実験人形の会陰部における擬似便の残留面積は小さいものの,大転子部では付着(p=0.001,8名 調整済み残差値(AR)2.3)と面積(最大180 cm2 p=0.002)が大きかった.シーツへの擬似便の付着は,一般法において多く(12名AR4.0),清拭法と撥水処理後清拭法では少なかった(1名AR-2.8)(p<0.001).洗浄用ボトルへの擬似便の付着は,一般法に多く(一般法7名p=0.016)面積が大きかった(p=0.008).また撥水処理後清拭法では,装着していた尿とりパッドによる拭き取りで2/3以上の便を清拭前に除去できた(p<0.001,14名AR3.9).以上より,撥水処理後清拭法は容易に便を除去し実験人形と周囲環境への擬似便の拡散を減少させた.

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