日本環境感染学会誌
Online ISSN : 1883-2407
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35 巻, 6 号
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原著
  • 松木 祥彦, 松本 遥奈, 佐古 兼一, 矢嶋 美樹, 渡部 多真紀, 渡辺 茂和
    2020 年 35 巻 6 号 p. 223-232
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    重症感染症では,低蛋白血症や低アルブミン血症を合併していることが多く感染症治療を難治化させる要因とされている.GNRIは,%IBWとAlbを用いた高齢者の栄養評価法で,重症化を判断する指標として有用性が示されているが,VCMによる腎機能障害との関係性については明らかとなっていない.本研究は,GNRIとVCMによる腎機能障害発現割合との関係性について調査し,目標トラフ域設定の個別化にGNRIを活用する方法論を検討した.対象は,VCMの投与を受けた293例とした.解析方法は,腎機能障害非発現群/発現群を分けるGNRI閾値をCART分析,ROC曲線により探索した.得られた閾値を使用しHigh GNRI群とLow GNRI群の2群に分け,トラフ値<20 μg/mL群,20~25 μg/mL群,≧25 μg/mL群で生存時間解析を行った.High GNRI≧68群(163例)は,トラフ値<20群と20~25群では腎機能障害発現率に有意差はなかった(p=0.66).Low GNRI<68群(130例)では,トラフ値20~25群は,トラフ値<20群と比較して腎機能障害発現率は高かった(p<0.01).Low GNRI群は,安全性の面からトラフ値>20 μg/mLは推奨できないというガイドラインの結果と一致したが,High GNRI群ではトラフ値の上限を25 μg/mLまで許容できる可能性が示唆された.

  • 三好 由希子, 高根 浩, 森下 奨太, 岡田 健作, 北浦 剛, 千酌 浩樹
    2020 年 35 巻 6 号 p. 233-240
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    抗菌薬使用量調査は薬剤耐性菌の発生や拡大の予兆把握に重要であり,antimicrobial use density(AUD)やdays of therapy(DOT)の指標が使用される.我々は上記指標に加え,入院患者に対する投与患者率(n/1,000 admission)と1日用量の指標とされるAUD/DOT比に着目し,当院の2009年から2017年のカルバペネム系抗菌薬の使用評価指標と緑膿菌のイミペネム/シラスタチン(IPM/CS)およびメロペネム(MEPM)耐性率の関係を評価した.単変量解析にて緑膿菌耐性率と有意な相関を示したIPM/CS+パニペネム/ベタミプロン(PAPM/BP)+ビアペネム(BIPM)群とMEPM+ドリペネム(DRPM)群のAUD/DOT比,IPM/CS+PAPM/BP+BIPM群の投与患者率について重回帰分析を行った結果,MEPM+DRPM群のAUD/DOT比で有意差(IPM/CS耐性率:β = -0.818,P = 0.007;MEPM耐性率:β = -0.796,P = 0.010)が認められた.また,シグモイド型用量反応モデル解析にて最大耐性率の1/10に相当するMEPM+DRPM群のAUD/DOT比は0.938と算出された.以上から,カルバペネム系抗菌薬のAUD/DOT比は1日用量の実態だけでなく,緑膿菌耐性率に関連する指標である可能性が示唆された.

報告
  • 中下 愛実, 伊藤 敦子, 大﨑 角栄, 三星 知
    2020 年 35 巻 6 号 p. 241-246
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    感染防止対策地域連携活動による感染対策状況の変化について検討するため,新潟市民病院および感染防止対策加算に基づく連携を行っていた5施設を対象に感染対策に関するアンケート調査を実施し,手指消毒薬の使用量と薬剤耐性菌検出数の経年的な変化を比較した.その結果,感染防止対策地域連携活動により,加算取得施設が増加し,infection control teamの組織活動が充実した.また,手指消毒薬使用量が平均6.72 L/1000 patient-days(2014年度)から9.52 L/1000 patient-days(2016年度)と有意に増加した(P = 0.03).さらに,methicillin-resistant Staphylococcus aureusの検出率およびmulti-drug-resistant Pseudomonas aeruginosaの検出率は減少傾向を認めた.以上の結果より,感染防止対策加算に基づく地域連携により,各施設での感染制御活動は充実し,手指消毒薬の使用量の増加を認め,その結果薬剤耐性菌検出数は減少することが示唆された.

  • 田杭 直哉, 近藤 匡慶, 黒田 香織, 菅谷 量俊, 鈴木 美子, 丸山 弘, 髙瀬 久光
    2020 年 35 巻 6 号 p. 247-253
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    現在,薬剤耐性菌の蔓延が喫緊の問題となっており,その対策として,厚生労働省は薬剤耐性(AMR)対策アクションプランを策定し,成果目標の1つとして抗菌薬使用量を2020年に2013年の水準から33%削減することを盛り込んだ.その特徴として本邦での使用量が多い経口のセファロスポリン系抗菌薬,フルオロキノロン系抗菌薬,マクロライド系抗菌薬は50%という高い削減目標を課せられている.耐性菌蔓延の背景の一つとして抗菌薬の不適切使用が考えられており,各医療機関で抗菌薬適正使用に関する様々な取り組みが行われている.しかしながら注射用抗菌薬に対しての取り組みの報告はあるが,経口抗菌薬に対するものは数少ない.今回我々は,経口第3世代セファロスポリン系抗菌薬,経口フルオロキノロン系抗菌薬を中心に,使用量削減につながる様々な対策を行い,その成果について検討した.その結果,経口第3世代セファロスポリン系抗菌薬と経口フルオロキノロン系抗菌薬使用量の有意な減少,および腎機能障害患者に対する経口フルオロキノロン系抗菌薬の過剰投与症例の減少が認められた.

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