日本環境感染学会誌
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最新号
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報告
  • 岡本 剛, 古谷 絵茉里, 廣瀬 翔子, 濱田 洋通, 小林 恵美子
    2020 年 35 巻 4 号 p. 151-156
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2021/01/25
    ジャーナル フリー

    2016年に抗菌薬TDMガイドライン改訂版(guideline:GL)が発表され,バンコマイシン塩酸塩(vancomycin hydrochloride:VCM)の小児用量(GL小児用量)が設定されたが,実臨床で用いるには検証が十分ではない.そこで,VCMを投与した小児患者の推定薬物動態パラメータを基に,GL小児用量の妥当性を評価した.実際のVCM投与量(実投与量)の中央値は41.7 mg/kg/日であり,血中VCM濃度の投与直前値(トラフ値)は実投与量の場合と比較し,GL小児用量に従って投与することで10 μg/mL以上,15 μg/mL未満への到達率が10.5%から38.6%へ上昇すると推定され,GL小児用量は有用と示唆された.ただし,GL小児用量では実投与量と比較し,トラフ値15 μg/mL以上の割合が3.5%から28%へ上昇すると推定され,生後1か月-12か月および7歳-12歳で腎機能障害のリスクが高い症例では1日量は同量で分割回数を1回削減した投与方法も選択肢の1つと考えられた.

  • 佐々木 康弘, 天野 美里, 金丸 亜佑美, 山口 明子, 高安 博史, 矢野 雅隆
    2020 年 35 巻 4 号 p. 157-162
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2021/01/25
    ジャーナル フリー

    多摩南部地域病院抗菌薬適正使用支援チーム(AST)は,2018年3月より血液培養陽性患者への積極的な介入を開始した.抗菌薬適正使用支援薬剤師は血液培養陽性患者の抗菌薬治療について監査を行い,経験的治療および標的治療の変更を主治医へ提案した.全247患者を評価した.介入後102回提案を行い,88%の受入率であった.介入前後におけるde-escalation率は55%から79%へ有意に増加した(p<0.05).

    全抗菌薬の使用量は介入前後で変化はなかったが,広域抗菌薬のタゾバクタム/ピペラシリンは著減した.ASTが血液培養陽性患者へ積極的に介入することは,適切な抗菌薬の選択において重要であることがわかった.

  • 村田 明子, 川嶋 郁, 畠山 英司, 山﨑 彩華, 松本 勝城, 深沢 貴志, 松本 菜月, 神谷 あかね, 藤田 浩之
    2020 年 35 巻 4 号 p. 163-167
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2021/01/25
    ジャーナル フリー

    擦式アルコール手指消毒薬の消費量が医療関連感染との関連性が深いメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA),Serratia marcescens,基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌の検出率と関連がみられるかを後方視的に検討した.擦式アルコール手指消毒薬使用量を増加させるために,2014年より病棟ラウンドで個々の看護師に対して手指衛生の手法に関する直接指導を行い,院内感染防止をテーマとして勉強会を実施した.その結果,手指消毒薬使用率(L/1,000patient-days)は取り組み前後において,一般病棟では4.42から11.0,クリティカル部門では19.5から65.3と増加した.MRSA分離率(分離数/1,000patient-days)は,一般病棟では0.58から0.35(p<0.05),クリティカル部門では4.57から3.40へ減少した.Serratia marcescens分離率は,一般病棟では0.08から0.06,クリティカル部門では1.37から0.13(p<0.05)へ減少した.ESBL産生大腸菌分離率は一般病棟では0.17から0.13,クリティカル部門では0.46から0.38へ減少した.

    これらの細菌分離率を低く抑えるために,看護師への教育を引き続き続けるとともに,すべての職種に対して手指消毒薬の消費を促したいと考えている.

  • 王 迪, 川上 和美, 工藤 綾子, 岩渕 和久
    2020 年 35 巻 4 号 p. 168-174
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2021/01/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,特別養護老人ホーム(以下,特養)におけるノロウイルス(以下,NV)感染症対策への取り組み,看護・介護に関わる3職種職員のNV感染症対策の学習状況・実施状況を明らかにし,課題を検討することを目的とした.日本全国の特養から無作為に抽出した235施設に勤務する看護師・介護福祉士・介護福祉士以外の介護職員(以下,介護職員)の計705名を対象に,2018年6月~8月に自記式質問紙調査を行い,368名(52.2%)の回答を分析対象とした.NV感染症対策知識の入手方法は施設内研修(85.3%),施設外研修(53.8%),インターネット(46.5%)の順であった.「NV感染症対策の受講経験あり」が84.8%であり,受講内容は,嘔吐物・排泄物の処理方法(84.2%),NV感染症の基礎知識(83.4%),手指衛生の方法(78.5%),個人防護具の使用・着脱方法(64.7%),環境消毒の方法(53.3%),入所者・面会者への感染症予防教育(37.2%)であった.受講内容と施設で実施しているNV感染症対策の把握状況は介護職員が看護師,介護福祉士に比べ有意に低く,3職種間の学習状況の差が見られた.また,全体では,NV感染症対策の受講内容などにばらつきがみられ,施設間のNV感染症対策教育に差がある可能性が示唆された.特養におけるNV感染症対策学習支援が課題となった.

  • 向野 賢治, 宮路 重和, 加村 眞知子, 川上 和美
    2020 年 35 巻 4 号 p. 175-182
    発行日: 2020/07/25
    公開日: 2021/01/25
    ジャーナル フリー

    2012年12月,M県の療養型病院においてノロウイルス胃腸炎のアウトブレイクが起きた.発症者は,入院患者30名(死亡6名)と職員14名であった.発症患者の平均年齢は82.0歳,基礎疾患は脳血管疾患が25名(83.3%)で,介護度は要介護4以上が28名(93.3%)を占めた.栄養補給路として経管栄養を受けていた者が26名(86.7%),うち胃瘻を造設されていた者が21名(70%)であった.症状では,発熱16名(46.7%),嘔吐19名(63.3%),下痢26名(86.7%)であった.ノロウイルス検査は11名に実施し,陽性者は6名であった.死亡患者6名は全員寝たきり状態であり,死因はすべて誤嚥性肺炎であった.アウトブレイクは複数の病室で同時多発的に起きたが,同一病棟に集中的に発生していた.発症者の多くが脳血管障害後の要介護患者で胃瘻を通じて経管栄養を受けており,胃瘻部から噴出した吐物で汚染した医療者の手を介した接触伝播が推定された.二項ロジスティック回帰分析により,要介護4以上,胃管,胃瘻が独立したリスク因子として挙げられた.ノロウイルス流行期には胃瘻およびその周辺の清潔保持,操作時における患者毎の手袋交換・手指衛生を確実に実行すべきであると思われた.

委員会報告
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