日本環境感染学会誌
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最新号
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総説
  • 田口 正博, 坂田 小百合
    2021 年 36 巻 3 号 p. 123-126
    発行日: 2021/05/25
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    口腔ケアは,スタンダードプリコーション(標準予防策)を遵守して実施することが重要であり,使用する器具器材の滅菌・消毒方法,周囲環境の汚染防止対策について特に注意が必要である.手術を前提とした口腔ケアを受ける患者は,全身麻酔における気管内挿管が予定されているため,口腔内にはより高度な清潔度が求められる.口腔ケアの実施には歯科医療同様にしばしば出血を伴うため,徹底したスタンダードプリコーションに熟知した術者によって実施されるのが望ましい.

  • 青柳 哲史
    2021 年 36 巻 3 号 p. 127-135
    発行日: 2021/05/25
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    日本は「災害大国」と呼ばれるように,毎年のように地震,津波,集中豪雨,台風など自然災害に見舞われる.災害直後の感染症は,外傷や溺水に関連した創部感染症や肺炎など呼吸器感染症が問題となる.その後,避難所では衛生状態が不十分で,過密状態での生活を長期に余儀なくされることで,インフルエンザウイルス感染症やノロウイルスなどの感染性胃腸炎による感染症およびアウトブレイクが発生する.自然災害後の感染症は,個人の問題であると同時に,集合生活の場における集団感染が問題となる.

    問題となる感染症を的確に把握し,感染症診療あるいは感染対策に生かす必要がある.自然災害後のライフラインが不十分で,医療資源が限られている状況で,肺炎球菌尿中抗原検査,レジオネラ尿中抗原検査,インフルエンザウイルス抗原検査,ノロウイルス抗原検査などイムノクロマト法を用いたpoint of care testing(POCT)による感染症診断が,感染診療および避難所でのアウトブレイクの早期探知・介入に有用性であったと報告されている.

    今後,感染症領域において遺伝子検査が普及すると考えられるが,現時点で自然災害後のPOCT検査として遺伝子検査を実施することは不可能である.そこで,過去の自然災害後の感染症事例を精査し,想定しうる感染症を念頭にどのような検査方法が確立されているのか,イムノクロマト法などのPOCT検査を中心に平時より検討する必要がある.

proceedings
  • 臼杵 尚志
    2021 年 36 巻 3 号 p. 136-141
    発行日: 2021/05/25
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    手術部位感染症は患者負担や病院経営,医療経済学的視点から大きな関心を集めており,その予防を目的に多くの研究がなされ,それらの研究成果をまとめて種々のガイドライン(以下GL)が多くの国・地方で作成されて来た.そのような中,2016年に世界保健機関(Word Health Organization:以下WHO)は「手術部位感染症予防のためのグローバルガイドライン」を,初めて世界中の全ての国を対象としたGLとして公開したが,その翌年には米国疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)と米国外科学会(American College of Surgeons)が同じ目的のGLを更新した.これらのGLは概ね同じ方向性で作成されているが,推奨内容や推奨度の細部に差が見られているため,現場での実務の際にどのように行動すべきか戸惑うことも想定される.そこでWHOのGLに書かれた内容を中心に手術室内で行われる行為に焦点を当て,全身管理に関わる内容と局所管理に関わる内容について「本邦の現場で具体的に行動する際の指標」という視点から述べる.

  • 小野寺 直人
    2021 年 36 巻 3 号 p. 142-148
    発行日: 2021/05/25
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    感染制御とは病院内すべての患者や職員に対する感染症の発生予防と拡大防止を目的とし,医療の安全と質の向上に大きく寄与する.職種横断的な関わりが必要な感染制御活動において,薬剤師の果たすべき役割は少なくない.岩手医科大学附属病院では,2004年4月に専従薬剤師が感染症対策室に配属されて以降,「感染経路別ゾーニングシステム」や「包括的抗菌薬処方管理策」の導入,「手指衛生向上に向けた取り組み」など,薬剤師も積極的に関わっている.感染制御専門薬剤師の理念は,抗菌薬の適正使用のみならず消毒薬や医薬品に関連する感染制御活動など,総合的な観点から関与するとしている.感染制御活動において薬剤師が力を発揮するためには,感染制御部門である感染制御チーム(ICT)および抗菌薬適正使用支援チーム(AST)での相互的な立ち位置を意識し,目に見える成果を上げることが望まれる.そこには薬剤師ならではの“情報収集・分析”の偏重から“企画・立案”にチャレンジし,自ら責任を負う覚悟も必要である.感染制御活動を俯瞰し,薬学の知識を基本とした科学的エビデンスにこだわった感染対策の立案,効率的な運用と的確な評価を行って,成果に導くことがその実現に向けた近道になると考える.

原著
  • 伏見 華奈, 池ヶ谷 佳寿子, 土屋 憲, 齋藤 敦子, 更谷 和真, 徳濱 潤一, 原田 晴司, 芦澤 洋喜, 増田 昌文
    2021 年 36 巻 3 号 p. 149-156
    発行日: 2021/05/25
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    当院は,乳児への百日咳感染の伝播を防ぐため,2012年から小児科と産婦人科の医療従事者は在籍時にDTaP(Diphtheria Tetanus acellular Pertussis)の接種とその前後で百日咳抗体価測定を行うワクチンプログラムを実施している.今回,在籍時のDTaPの接種から長期間経過した医療従事者の百日咳抗体価測定を行い,後方視的に抗体価の減衰時期を評価し次の追加接種の時期を検討した.

    医療従事者のDTaP接種前の百日咳抗体保有率は64.4%(67/104人)であった.DTaP接種から4週間後の抗体価は有意な上昇を示した.DTaP接種から長期間経過した医療従事者の抗体価は,年数の経過に伴い減少しており,経過6年の医療従事者では100%(7/7人)が抗体を保持できていたが,経過7年では68.5%(24/35人)と減少していた.期間中,百日咳患者は散発的に確認されたが院内感染の発生はなかった.想定される追加接種にかかる費用は149,390円であり費用対効果は高いと考えられる.

    DTaP接種から経過7年で抗体価のモニタリングと追加接種を行うことが望ましいと示唆された.しかし,国や地域の百日咳の流行状況や医療・経済事情により,抗体の減衰する時期や追加接種の時期は大きく異なることが考えられ,今後も国内外の流行状況をふまえ追加接種のタイミングを検討する必要がある.

短報
  • 尾家 重治, 河合 伸也
    2021 年 36 巻 3 号 p. 157-160
    発行日: 2021/05/25
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    “除菌”,“アルコール”,“99.9%”などの表示から殺微生物効果を連想させる市販製品(環境用または環境・手指用)の殺細菌効果について,Enterococcus faecalisを用いて調べた.28製品中13製品(46.4%)が5分間の接触で殺細菌効果を示さなかった.これら28製品のうちのエタノールを含有する14製品(実測値で7.9~65.7 vol%のエタノールを含有)では,14製品中1製品(7.1%)が殺細菌効果を示さなかった.また,塩素系薬剤を含有する10製品(実測値で0.06~144 ppmの遊離残留塩素を含有)では,すべての製品(100%)が殺細菌効果を示さなかった.殺微生物効果を連想させる市販製品の半数近くが殺細菌効果を示さなかった.

報告
  • 金﨑 美奈子, 齋藤 雄一
    2021 年 36 巻 3 号 p. 161-165
    発行日: 2021/05/25
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    今回当院で経験した疥癬集団発生は,徹底的な追跡調査をもってしても感染源が特定できず,濃厚接触が確認できない患者間で,約1年2ヶ月にわたり通常疥癬患者が散発的に発生した事例である.皮膚状態から疥癬が否定できないすべての患者に対し予防投与を試みたが,予防投与を受けた患者のうち2名が後に疥癬を発症した.そのため,予防投与の対象範囲を拡大して集団予防投与を実施した.集団予防投与は説明と同意のもと,当該病棟のすべての患者と2ヶ月以内に当該病棟から他病棟に転棟した患者計60名を対象とし,イベルメクチンを1週間間隔で計2回投与した.患者との直接的接触が少なく,発症者が確認されていない職員は集団予防投与の対象としなかった.皮膚状態から疥癬が否定できないすべての患者に限定した予防投与を実施することについては検討の余地が残る.

  • 中畑 千夏子, 渡辺 みどり, 坂田 憲昭
    2021 年 36 巻 3 号 p. 166-171
    発行日: 2021/05/25
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,感染管理認定看護師の感染予防・管理活動に関わる因子間の関連性を明らかにすることを目的とした.日本看護協会が認定する感染管理認定看護師2,278名を対象とした無記名の自記式質問紙調査を行った.質問紙の回収数は708(回収率31.1%)であった.そのうち,有効回答が得られた698名分(有効回答率98.6%)について分析した.「看護師長相当」および「副看護師長相当」といった組織管理に関わる職位を有すること,勤務形態が「専従および専任」であること,「学会または研究会へ参加すること」が,感染管理認定看護師の感染予防・管理活動に関連していた.また,感染管理認定看護師が所属する施設に関する因子では,「診療報酬の感染防止対策加算を取得していること」が,これらの活動に関連していた.その加算の種別では,「感染防止対策加算I」を取得する施設への所属が感染予防・管理活動のうちの「医療関連感染サーベイランス」,「職業感染管理」に関する活動に関連していた.一方で,病床数「400床未満」の中小規模病院や感染管理認定看護師等の「複数配置がされていない施設に属すること」が,感染管理認定看護師が行う感染予防・管理活動のうち,「感染防止技術」に関する活動に関連していた.

  • 長尾 多美子, 桑原 知巳
    2021 年 36 巻 3 号 p. 172-178
    発行日: 2021/05/25
    公開日: 2021/11/25
    ジャーナル フリー

    2018年2月に障害者支援施設で発生した感染性胃腸炎のアウトブレイク事例について報告する.当該施設は感染管理専門家が不在のため,発生要因の調査依頼を受け分析を行った.集団感染を検知したのは2月6日で,入所者4名と職員1名の合計5名が発症した.その後,2月14日に収束するまでの8日間で入所者20名(全利用者40名)と短期入所者1名,および職員6名(全職員42名)の合計27名が発症した.アウトブレイク期間の後半4日間の発症者の大部分は職員であった(入所者1名,職員4名).入所者の支援記録から2月4日に発熱,軟便,黒色吐物の嘔吐により転院した入所者が確認され,また介助した職員も発症していたことから,本入所者が感染源と考えられた.流行曲線は一峰性であったことから,集団感染検知後の感染対策は機能したと考えられた.本アウトブレイク事例では,①流行期に発熱・消化器症状を呈する入所者への初期対応ができていなかったこと,②発症した利用者の嘔吐や下痢の処理を担当した職員が発症したこと,③利用者の発症が収束した後も職員の発症が継続したことから,感染管理専門家が不在の障害者支援施設等においては「職員に対する継続的な感染対策教育の必要性」が重要であると考えられた.

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