日本環境感染学会誌
Online ISSN : 1883-2407
Print ISSN : 1882-532X
ISSN-L : 1882-532X
最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 栢内 直美, 加藤 幹朗, 崎浜 智子
    2022 年 37 巻 3 号 p. 69-77
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/11/25
    ジャーナル フリー

    単施設一般病棟における尿道留置カテーテル関連尿路感染症(Catheter Associated Urinary Tract Infections:CAUTI)の発生と,カテーテルの適正使用状況について後ろ向きコホート研究を行った.対象は2017年4月からの21か月間に,病院内で尿道留置カテーテルを挿入され一般病棟で管理された606症例とした.結果,CAUTIは19症例に発生し,発生率は4.1/1000 device-dayだった.単変量解析で関連が確認されたリスク因子は,挿入時の「慢性心不全(あり)」,「寝たきり度(高い)」と,留置中の「留置期間(長い)」,「閉鎖性の維持(破綻あり)」だった.適正使用状況調査では,適切な理由での挿入が43.4%にしか及ばず,留置中の使用基準遵守率は留置後1週間毎に38.1,35.9,34.3,33.3%と減少した.膀胱洗浄によって閉鎖性の維持が破綻した11症例中3症例にCAUTIを発症した(p<0.01).抜去後の排尿自立支援において,不適切なタイミングでの導尿が30症例(38.0%),抜去後の再挿入が26症例に確認された.カテーテルを留置したままの退院も21症例認めた.CAUTI低減に向けて使用基準の遵守,タイムリーな抜去,閉鎖性の維持,携帯型超音波膀胱容量測定器の導入,専門チームによる抜去後排尿自立支援などケアバンドルの実施向上が望まれた.

  • 成瀬 美佐, 佐藤 美樹
    2022 年 37 巻 3 号 p. 78-89
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/11/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は看護師長,感染管理認定看護師からの職場サポートと感染対策リンクナースの役割受容,仕事意欲との関連を明らかにすることである.病床数300床以上で感染管理認定看護師が在籍している施設の感染対策リンクナース3018名を対象に,質問紙調査を実施し1479名の回答を得て有効回答数は950名であった.記述統計,単変量解析を用い基本属性,役割受容,仕事意欲と職場サポートとの関連を分析した.さらに説明変数を基本属性と職場サポート下位尺度得点,目的変数を役割受容と仕事意欲下位尺度得点とした重回帰分析を実施した.役割満足の影響要因は看護師長の評価的,手段的サポート,感染管理認定看護師の評価的,情報的サポート,年齢40歳以上,リンクナース歴1年であった.役割評価の影響要因は看護師長の評価的サポート,感染管理認定看護師の情報的サポート,看護師経験年数15年以上,部署経験年数7年以上であった.現在の仕事に向ける意欲の影響要因は感染管理認定看護師の情報的サポート,リンクナース歴2年以上,きっかけであった.将来的な仕事に向ける意欲の影響要因は看護師長の評価的サポート,感染管理認定看護師の情報的サポート,年齢40歳以上,きっかけであった.リンクナースの役割受容,仕事意欲に影響するサポートは看護師長と感染管理認定看護師で異なっており,それぞれが必要なサポートを行うことが重要であると示唆された.

  • 吉田 美智子, 庄司 健介, 菅原 美絵, 宮入 烈, 日本小児総合医療施設協議会小児感染管理ネットワーク(PICoNET)
    2022 年 37 巻 3 号 p. 90-94
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/11/25
    ジャーナル フリー

    近年,本邦では百日咳症例において青年層・成人の割合が増加し,感染時に重症化する可能性がある新生児や乳児への伝播が懸念される.青年層・成人に対する百日咳含有ワクチンの追加接種の必要性から,本邦では2018年に沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクワクチン(DPTワクチン)が再販売された.百日咳の院内感染対策として,一部の医療施設では職員へのDPTワクチン接種が行われているが,小児医療施設における実施状況は不明である.そこで,百日咳の院内感染管理上の問題の有無と,職員に対するDPTワクチン接種状況についてアンケートを行った.日本小児総合医療施設協議会に登録されている36施設を対象とし,35施設から回答を得た.調査の結果,小児医療施設の37%(17/35)が職員の百日咳罹患事例を経験しており,多数の職員に対し曝露後,予防抗菌薬投与を行った施設もあった.しかし職員に対するDPTワクチン接種を行っていたのは17%(6/35)の施設のみであり,接種対象者は施設ごとに様々であった.高リスク患者が存在する小児医療施設における医療従事者へのDPTワクチン接種は,百日咳の院内感染対策において寄与することが期待される.接種対象者の設定など,さらなる検討が必要である.

報告
  • 小﨑 浩一, 岩島 知子
    2022 年 37 巻 3 号 p. 95-99
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/11/25
    ジャーナル フリー

    腎移植患者は免疫抑制下にあり,健常人では問題とならない感染症が腎移植患者には致命的な問題となりうる.それゆえ活動性感染症や悪性腫瘍など,手術や免疫抑制法により増悪する疾患がある場合,腎移植は禁忌となる.活動性感染症はまず治療し沈静化させ,非活動性感染症でも免疫抑制剤により再燃することがあるので,厳重な術前検査を行い感染症の評価を行った上で腎移植を行っている.歯科口腔内診察は腎移植希望者の術前検査として細菌感染症である齲歯や歯周病を評価する上で必須のものであるが,とくに緊急手術となる献腎移植の患者では未診察・未治療のことが多い.未治療の齲歯や歯周病が腎移植後の免疫抑制下で脳膿瘍を惹起し予後不良となることがあり,十分な注意が必要である.予定手術の生体腎移植では術前口腔内病変の有無を精査,治療を行った上で移植を行うが,緊急手術である献腎移植では,年1回の献腎移植登録更新時に口腔内診察の状況を確認し,移植直前に再度確認,問題なければ移植を行う.治療が不十分ならば移植直前でも活動性感染巣に対し治療を行い,移植を行っている.それでも対処不能の活動性感染巣があった場合には,腎移植を回避・延期することになる.移植後も免疫抑制剤や降圧剤により歯肉肥厚や口内炎,あるいは非活動性感染巣であった齲歯や歯周病が再燃することがあり,腎移植前後に口腔内病変の有無を確認し,感染症予防を行うことは極めて重要である.

  • 松田 優子, 近藤 香苗, 小林 尚司, 森田 一三, 下間 正隆
    2022 年 37 巻 3 号 p. 100-109
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/11/25
    ジャーナル フリー

    【目的】特別養護老人ホーム(以下,特養)のケアスタッフにおいて強化が必要な感染対策に関する知識・技術を明らかにし,得られた情報に基づき実用性のある感染対策のてびき書(以下,てびき)の作成を行うことを目的とした.

    【方法】2020年12月~翌年3月に特養の感染対策担当者を対象に,感染対策の知識・技術に関する無記名自記式質問紙調査を郵送法により行った.感染対策に関する項目ごとに,特養のケアスタッフに強化を望む感染対策担当者の数と,そうでない感染対策担当者の数の比率の差をカイ二乗検定で分析した.

    【結果】有効回答者数は299人,感染対策経験年数は6.8年(±5.51:SD)であった.有意差がみられた項目は,インフルエンザ,ノロウイルス感染症,新型コロナウイルス感染症のいずれも「特徴や知識」,「平常時の対応,予防の理解」,「疑ったときの対応」であった.これに加え,新型コロナウイルス感染症では「勤務時間以外の三密回避行動」,「職員自身の健康管理」,「個人防護具の着脱方法」の項目があがった.これらを中心にてびきの内容を構成した.

    【結論】ケアスタッフにおいて強化が必要な感染対策に関する知識・技術はインフルエンザ,ノロウイルス感染症,新型コロナウイルス感染症のいずれにおいても共通していた.これらの項目を中心にイラストを豊富に使用した,職員が必要時に対応できる内容の感染対策のてびきを作成した.

  • 影島 美希, 堀 良子
    2022 年 37 巻 3 号 p. 110-114
    発行日: 2022/05/25
    公開日: 2022/11/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,手指衛生が必要とされる場面において,A病院の医師にどのような認知,感情,行動傾性があるのかを明らかにすることを目的とした.5名の医師を対象に個人別態度構造(Personal Attitude Construct:PAC)分析を行い,質的記述的に分析した.手指衛生実施の判断は経験や推測が影響していた.十分な手指衛生教育と手指衛生促進に集団で取り組む体制が不足していた.他者の促し,ポスター掲示,擦式アルコール手指消毒薬の設置が手指衛生の想起に繋がっていた.医師の手指衛生を促進するには,手指衛生リマインダーの設置,医師の中でのロールモデルの育成,医師も手指衛生促進活動に参加できる体制作り,十分な手指衛生教育と医師の関心にフィットするアプローチが必要と考える.

feedback
Top