日本環境感染学会誌
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proceedings
原著
  • 鹿角 昌平, 小林 史博, 芝野 牧子, 松岡 慶樹
    2022 年 37 巻 4 号 p. 119-127
    発行日: 2022/07/25
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    医療従事者を対象とした新型コロナウイルス感染症に係るワクチン(以下,新型コロナワクチン)の優先接種に際して,長野中央病院(以下,当院)では感染制御チーム(Infection Control Team:ICT)からのワクチンに関する情報提供や,副反応が生じた際の特別休暇制度を設ける等の対応を行った.当院が行ったこれらの対応や,その他の各種情報が,当院職員の新型コロナワクチン接種に関する意思決定に与えた影響について調査した.“感染学習会やICTからの情報”が意思決定に与えた影響度は有意に高かったが,“特別休暇制度”の重視度は有意に低かった.新型コロナワクチンの接種行動に関して働きかけを行う際には,単に感染の危険性や接種のメリットを訴えるだけでなく,受け手側の特性を十分考慮した上で,効果的な手法を採用すべきであると考えられた.

  • 赤澤 奈々, 伊東 直哉, 寺田 教彦, 倉井 華子
    2022 年 37 巻 4 号 p. 128-135
    発行日: 2022/07/25
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    背景:Vancomycin-Resistant Enterococci(VRE)は,接触感染による伝播で集団発生をきたすことがある.今回,我々は日本のがんセンターにおけるVREアウトブレイクを経験した.本稿では,がんセンターにおけるVRE伝播の経路およびVRE獲得に関するリスク因子を報告する.

    方法:最初のVREが確認された後,病棟全体のVREの便スクリーニング検査と多面的な感染対策を実施した.VRE獲得のリスク因子を特定するために,VRE陽性者とVRE陰性者を比較した症例対照研究を行った.

    結果:スクリーニング検査を実施した177人のうち,13人がVRE陽性となった.VRE陽性者は,男9人(69.2%),女4人(30.8%)で,年齢は52~83歳(中央値67.0)で,全員が固形腫瘍患者であった.VRE感染症として治療した症例は1名のみで,VRE感染症による死亡例はいなかった.また,アウトブレイクは,約3ヶ月間と早期に終息した.VRE獲得のリスク因子としては「おむつの使用」がオッズ比11.11(p<0.05)でVRE陽性症例に有意に多かった.

    結論:我々の事例において「おむつの使用」はVRE獲得のリスク因子であった.アウトブレイク終息には,手指衛生や個人防護具の使用を中心とした感染対策の徹底と環境清掃が重要である.

短報
  • 彼谷 裕康, 清水 直美
    2022 年 37 巻 4 号 p. 136-138
    発行日: 2022/07/25
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    免疫不全者において天井などの工事の際に,アスペルギルス症やムーコル症の合併の報告はあるが,コンクリート製地面の破砕に伴う真菌の飛散状況を調査した報告はあまりない.今回,施工後25年たった病院駐車場の工事に関し,経時的に飛散真菌について検討を行った.コンクリート製地面の破砕後に,Aspergillus fumigatusRhizomucor pusillusが質量分析装置により同定され,コンクリートを破砕したときに真菌が多く飛散することが考えられた.入院患者は厳重に無菌室管理をする,外来患者の動線を変更する,N95マスクを装着する,工事現場の厳重な養生などの対策が必要であると考えられた.

  • 髙木 律男, 田邊 嘉也, 須藤 弘二, 山田 瑛子, 加藤 眞吾
    2022 年 37 巻 4 号 p. 139-142
    発行日: 2022/07/25
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    COVID-19の診断に鼻咽頭拭い液だけでなく唾液を用いた検査も行われるようになったが,採取方法の違いに関する検討が行われてこなかった.そこで,我々は異なる唾液検体採取法による結果を比較検討した.患者21名から,鼻咽頭拭い液,舌背拭い液,口底部貯留唾液を採取し,それぞれの陽性率およびウイルス量を調べた.その結果,鼻咽頭拭い液95.2%(20/21),舌背拭い液85.7%(18/21),貯留唾液52.4%(11/21)が陽性であった.ウイルス量も鼻咽頭拭い液>舌背拭い液>貯留唾液の順であった.以上より,舌背拭い液を用いることで検出感度が高まることが示唆された.ただし,COVID-19が疑われる場合,いずれの検査でも常に偽陰性の可能性を念頭に再検査の施行を考慮すべきである.

報告
  • 鎌倉 寿美子, 吉澤 京子, 常盤 雅子, 田中 陽子
    2022 年 37 巻 4 号 p. 143-147
    発行日: 2022/07/25
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,コロナウイルス感染症2019(COVID-19)患者への対応に苦慮する感染病棟スタッフに感染管理認定看護師(CNIC)が介入し,感染看護の捉え方と心理的ストレスの軽減に与えた効果を考察した.長期入院したCOVID-19患者の看護の質向上に向けた介入としてカンファレンスを開催し,CNICによる相談対応およびグループディスカッションを実施した.介入前後に,自由記述式で感染看護等の捉え方を問う調査とストレス評価を実施した.自由記述に関してはアフターコーディングを行い,ストレス評価の結果は記述統計を用いて分析した.

    その結果,感染病棟スタッフは「感染領域」として区別したゾーンでの患者対応等で感染することに不安を抱いていたことが分かった.そこで医療従事者の曝露リスク評価をもとに感染領域内での行動を評価した.また,具体的な看護実践方法として,看護師付き添いによる患者の屋上散歩と感染領域内の定期的な環境チェックを導入した.

    介入前は,感染病棟スタッフの41.7%が感染看護を「患者に関わらない/感染領域に入らないこと」と捉えていたが,介入後は0%となった.ストレス評価では,介入前は感染に対する恐怖や不安を抱いている対象者が83.3%を占めたが,介入後は72.7%に微減した.

    以上のことから,CNICによる介入は,感染病棟スタッフの感染看護の捉え方を変化させ,看護上のストレス軽減につながったと考えられる.

  • 萩谷 英大
    2022 年 37 巻 4 号 p. 148-154
    発行日: 2022/07/25
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    【序文】講義形式による受動的教育は,学習定着率が低いことが報告されている.我々は院内感染対策研修会にアクティブ・ラーニング技法を取り入れ,手指衛生状況の改善と参加職員から高い満足度を得ることができたため,その活動の詳細を報告する.

    【方法】本調査は,2021年5-6月にまるがめ医療センターに勤務する職員を対象に実施した.事前課題として,各職種の日常業務において手指衛生を実施するべきタイミング(“My 5 Moments”と定義)を考え,それを研修会で互いに発表する形式とした.研修会前後での病棟看護師の手指衛生実施状況の変化を解析し,研修後アンケート調査を実施した.

    【結果】全職員391名のうち,365名(93.4%)が当該研修会に参加し,231名(66.8%)がグループ単位で事前課題に取り組んだ.研修会前後で病棟看護師の手指衛生回数は有意に増加した(研修前14.2回/日vs研修後20.0回/日;p = 0.007).事後アンケートでは,講義形式の研修に比べて,参加型研修は「とてもよかった」が26.8%,「良かった」が47.7%と,全体の74.5%の職員において好評であった.

    【結語】本調査により,アクティブ・ラーニングを感染対策研修会に取り入れることの実現可能性と研修参加者の高い満足度が確認された.

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