日本環境感染学会誌
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proceedings
原著
  • 関口 和宏, 西岡 みどり, 森 那美子
    2024 年 39 巻 4 号 p. 92-103
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2025/01/25
    ジャーナル フリー

    輸入感染症患者への適切な初療対応は,適時の医療提供,感染の拡大防止や職業感染防止において重要である.本研究は看護師の輸入感染症初療対応能力を測定する尺度の開発を目的とした.

    看護師に求められる輸入感染症初療対応能力について,旅行医学,感染症看護,感染管理,公衆衛生学などの文献を網羅的に検討し,尺度の項目プールを作成した.項目プールの内容妥当性・表面妥当性の検証の後,是認率・判別能を検証し,尺度項目候補95項目からなる質問紙を作成した.無作為抽出した450病院の初療部門に勤務する看護師1,350名を対象に質問紙調査を実施し,回答320通を分析対象とした.天井-床効果,項目-全体相関,項目間相関の検証を経て探索的因子分析を実施した.以上により第1因子「輸入感染症リスクの知識」(18項目),第2因子「感染症看護実践と感染管理」(18項目),第3因子「感染症アセスメントと看護計画立案」(11項目),合計47項目からなる「看護師の輸入感染症初療対応能力尺度Ver1.0」を開発した.尺度全体のクロンバックα係数は0.958であり,内的一貫性による信頼性を確認した.確認的因子分析の結果,モデル適合度は良好であり,構造概念妥当性があると判断した.

  • 中江 舞美, 藤谷 好弘, 黒沼 幸治, 小林 亮, 佐藤 勇樹, 韮澤 慎也, 村井 良精, 髙橋 聡
    2024 年 39 巻 4 号 p. 104-110
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2025/01/25
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確定診断に用いられる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検査法は複数あるが,検査感度・特異度は100%ではない.

    2021年1月1日から12月31日に他施設でCOVID-19と診断され専用病棟に入院した421名のうち,8名の偽陽性事例を経験した.そのうちの5事例は,入院もしくは術前スクリーニング目的にSARS-CoV-2検査が実施されたが,全員が無症状で検査前確率は低かった.さらに8事例すべてに感染機会となる行動歴,接触歴はなく,疫学的リンクは低いと考えられ,検査結果を慎重に解釈する必要があった.

    検査には限界があり,一定の確率で偽陽性を認めることは不可避である.検査目的や臨床症状などから偽陽性を疑う症例については,検体を再度採取し,再検査も検討する必要がある.

報告
  • 濱野 聖菜, 戸石 悟司
    2024 年 39 巻 4 号 p. 111-116
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2025/01/25
    ジャーナル フリー

    【背景】SARS-CoV-2陽性妊婦より出生した児の検査については,日本新生児成育医学会の指針に従い,出生児への検査を生後24時間以内と48時間以降に2回行う施設が多い.千葉県では第7波の流行に伴い周産期医療体制がひっ迫したため2022年8月に,「生後24時間経過した時点で検査を行い,陰性確認ができれば通常の正常新生児室の管理を行える」とする緊急指針を,県内の全分娩施設に通知した.

    【目的】県内各施設のSARS-CoV-2陽性母体の分娩への対応の変化を明らかにする.

    【方法】2023年2月SARS-CoV-2陽性母体の分娩における母児管理に関するアンケートを,県内の周産期医療を取り扱う主要な17施設へ配布し回答を集計した.

    【結果】アンケートは16施設(94.1%)から回答を得た.SARS-CoV-2陽性妊婦より出生した児の検査について,分娩様式を問わず,40%の施設は生後24時間の陰性確認で周囲との隔離を解除とし,60%は生後48時間の陰性確認で隔離解除としていた.いずれも新生児のSARS-CoV-2陽性症例は認めなかった.

    【考察】千葉県ではSARS-CoV-2陽性母体より出生した児の隔離解除までの期間を短縮する取り組みを行っているが,SARS-CoV-2の感染拡大などの明らかな問題を生じていない.日常診療の負担になりすぎない十分な感染対策を引き続き検討していく.

  • 浅香 真衣子, 松本 浩, 廣瀬 雅宣, 小形 厚貴, 藤重 瑶子, 平間 千絵, アニン 祥子, 隈元 亜依, 宮本 豊一, 長島 梧郎, ...
    2024 年 39 巻 4 号 p. 117-125
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2025/01/25
    ジャーナル フリー

    本研究はAST発足後の血液培養陽性症例を対象とし,抗菌薬適正使用支援チームの推奨が受諾されたか否かで2群に分け,2群間の推奨内容,患者背景および総死亡の比較を目的に実施した.

    2020年1月から1年間で血液培養陽性となった成人の入院患者96人を対象とした.調査項目は年齢,性別,診療科,入院期間,既往歴,併存疾患,抗菌薬の種類と投与期間,対象疾患,血液培養採取日,培養結果,SOFAスコア,糖尿病の有無,人工物挿入の有無,eGFR,推奨内容,推奨数,受け入れ状況,転帰とし,推奨受諾の有無で「受諾群」,「非受諾群」の2群に分け,血液培養陽性から30日後までの時間を生存時間解析で比較した.

    受諾群が67人,非受諾群が29人であった.De-escalationが推奨受諾の約半数を占めた.年齢,性別,人工物挿入,糖尿病の有無,SOFAスコア,eGFR,推奨内容,30日死亡は両群で差を認めなかった.抗菌薬投与日数は受諾群で有意に延長した(p=0.004).血液培養陽性から30日後までの生存期間は両群で差を認めなかった(p=0.31).

    両群間での生存期間の差がなかった要因として,症例数が少ないこと,両群間に偏りがあることが挙げられる.今後,症例数を増やし,多変量解析を用いた検討が必要である.

  • 黒田 誠一郎, 奥野 瑞紗, 清海 杏奈, 今井 志乃ぶ, 杉浦 宗敏
    2024 年 39 巻 4 号 p. 126-132
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2025/01/25
    ジャーナル フリー

    クリーンベンチは作業空間に, 日本工業規格 (Japanese Industrial Standards; JIS) B9922に規定される平均風速0.3~0.6 m/sの気流を送ることで, International Organization for Standardization 14644-1のClass 5 (ISO Class 5) に準拠した環境を維持している. 我々は, 換気率に影響を及ぼす因子として風速に着目し, 機種の異なる3台のクリーベンチを用いて, 作業面に対して垂直および水平の風速測定を行った. Sashからの奥行き15-30 cm面ではどの機種においてもMedian (IQR) はJIS規格に合致している. しかし, 作業面からの高さ0-20 cm面ではMedian (IQR) の巾が広いが, Sashが覆っている作業面から20-50 cm面では狭く一定の風速が得られていた. 以上から各機種間に共通する最適な調製エリアは, 「Sashを20 cm以下に保ち, 作業面から高さ20 cm以上かつSashから奥行き15-30 cm」となり, このエリアで調製を行うことで, 調製された医薬品への微粒子および微生物混入を防ぐことができると考える.

  • 辻 奈津美, 西出 由紀子, 賀村 慎太郎, 田仲 弘行
    2024 年 39 巻 4 号 p. 133-139
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2025/01/25
    ジャーナル フリー

    COVID-19は院内クラスターを引き起こす最も主要な原因ウイルスである.医療従事者によりウイルスを院内へ持ち込むことは,防ぐ必要がある.A病院では職員自身が家庭内での感染を防止することに注目した.COVID-19に感染した同居家族をもつ職員を対象に個別指導を実施した.これまでに陽性者の内訳としての家庭内感染率や二次感染率の報告はあるが1)感染しなかった要因の報告はない.今回の研究の目的は,同居家族から医療従事者へ家庭内感染する場合の因子を検討することである.感染可能期間に感染した職員群(13名)と感染しなかった職員群(38名)につき症例対照研究を行った.統計ソフトEZR統計分析を用いた単変量解析の結果,感染した職員群の年齢は感染しなかった職員群に比べて有意に低かった(中央値39.7歳,48.5歳).家庭内感染リスク要因として,先行感染者に6歳未満,特に3歳未満がいるとリスクが高まること(オッズ比16.9,P値0.002)がわかった.先行感染者が18歳以上であれば感染リスクが有意に少なかった(オッズ比0.19,P値0.005).ロジスティック回帰分析によると,先行感染者が複数人以上では感染リスクがより高くなった(オッズ比63.2,P値0.0017).また家庭内感染対策個別指導の実施は感染リスクを減じる効果があった(オッズ比50.9,P値0.04).

委員会報告
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