日本環境感染学会誌
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最新号
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原著
  • 久保田 早苗, 工藤 綾子, 岩渕 和久
    2020 年 35 巻 3 号 p. 87-96
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/11/25
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,理学療法士の訓練時における感染予防意識と行動について明らかにすることである.

    感染管理認定看護師が所属する施設に勤務する理学療法士,5施設計18名を対象に半構造化面接を行い,感染予防意識と行動に関する語りをコード化,類似するコードをカテゴリー化し,質的帰納的に分析した.

    理学療法士の感染予防意識は432生成され,98サブカテゴリー,28カテゴリーに分類され,5コアカテゴリーが抽出された.コード数の多いコアカテゴリーとして,【職種間の感染予防策の認識の差と危機管理意識】【感染症患者の増加によるリハビリ調整の困難さと超高齢社会への危機感】などが生成された.

    理学療法士の感染予防行動は684生成され,93サブカテゴリー,25カテゴリーに分類され,7コアカテゴリーが抽出された.コード数の多いコアカテゴリーとして,【感染症や指示による手順通りの防護服の着脱と定期的な白衣・リネンの交換】【感染症情報の確認・連絡による日常や汚染時の清掃徹底】などが生成された.

    患者との接触が多い理学療法士が行う標準予防策は感染症の有無や健康状態によって予防策を決めていくことではないことを理解し,実践していくことが求められる.また,感染事例に応じて自らが判断し根拠をもった知識の習得を目指す必要がある.

  • 戸丸 猛, 加藤 依子, 坂本 真志, 清水 さやか
    2020 年 35 巻 3 号 p. 97-103
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/11/25
    ジャーナル フリー

    ワクチン接種に伴い発生するエラーを予め認識して対策を講じることは,安全なワクチン接種に重要である.しかし,薬剤調製時の手技に関する軽微なエラー実態は不明な点も多く,ワクチン接種プロセス改善の盲点になっている可能性がある.そこで,我々は2017年10月から2018年2月のインフルエンザワクチン接種で発生したエラーについて,薬剤調製時のニアミスを含めて調査した.

    医師,看護師それぞれ101名の回答を有効回答とした.エラーの総件数は562件で,そのうち医師エラーの81.8%(311/380件),看護師エラーの77.5%(141/182件)は薬剤調製時に起きており,その多くはニアミスと考えられた.しかし,エラー発生後の対処が不適切なため,発生したエラーの影響がそのまま被接種者へ及んだ事例もあった.また,被接種者の健康被害に繋がるおそれを伴うエラーも発生しており,それらのエラーを被接種者やその家族に説明しなかった事例や,院内外のどこにも報告しなかった事例もあった.医療従事者への針刺し損傷は合計48件発生していた.

    本調査から,医療従事者の手技の習熟やエラーが起こりにくい環境の整備が薬剤調製時のエラー防止に有効と考えられた.また,被接種者の健康被害防止には,陥りやすいエラーを認識し,エラー発生後の適切な対処方法を含めて各プロセスを積極的に見直すことが重要と思われた.

報告
  • 野口 周作, 𠮷田 奈央, 先﨑 貴洋, 森角 裕貴, 上野 ひろむ, 望月 徹
    2020 年 35 巻 3 号 p. 104-109
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/11/25
    ジャーナル フリー

    病院の感染制御において,薬剤耐性菌対策は重要な問題である.当院では2004年8月にInfection Control Team(以下,ICT)が発足して以来,抗菌薬適正使用策を行い15年が経過した.長期的取り組みと多剤耐性菌減少効果について検討し,若干の知見を得た.オーダリングシステムと連動した特定抗菌薬使用届出制導入,Antimicrobial Stewardship(以下,AS)活動としてICT抗菌薬ラウンドを開始した.また,血液培養陽性患者ラウンドや周術期抗菌薬使用ガイド等の整備を行った.さらに2018年AS Teamを発足し,適正使用策を強化した.カルバペネム系抗菌薬のAntimicrobial Use Densityは,2.20(2004年)から0.61(2017年)に,平均投与日数は8.40日(2006年)から5.89日(2010年)に減少し,緑膿菌のメロペネムに対する感性率は71.6%(2008年)から97.1%(2018年)に回復した.多剤耐性緑膿菌(以下,MDRP)は28件(2008年)から0件(2018年),2剤耐性緑膿菌は10件(2010年)から0件に減少した.特にMDRPは2019年10月現在29か月検出されていない.長期にわたり継続した対策や啓発で,安定した耐性菌対策ができていると考える.

委員会報告
  • 佐々木 淳一, 椎野 泰和, 加藤 康幸, 工藤 大介, 藤田 昌久, 宮入 烈, 望月 徹, 奥田 拓史, 長門 直, 鍋谷 佳子, 高橋 ...
    2020 年 35 巻 3 号 p. 110-149
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/11/25
    ジャーナル フリー

    救急外来部門では,新興感染症も含め,様々なヒト‐ヒト感染症と遭遇する危険性があり,その感染対策は十分かつ適切に行われるべきである。しかし,救急外来部門での感染対策について十分なエビデンスに基づいて作成されたガイドラインなどはこれまで世界的にも作成されておらず,各施設で独自の対応策を検討・実施している。日本救急医学会は「救急外来部門における感染対策検討委員会」を設置し,日本感染症学会,日本環境感染学会,日本臨床救急医学会,日本臨床微生物学会とともに5学会連携の救急外来部門における感染対策について検討する合同ワーキンググループを組織した。この合同ワーキンググループにおいて,救急外来における感染対策およびそれに関連する事項について総合的かつ多面的に検討を行い,「救急外来部門における感染対策チェックリスト」を公開するに至った。本チェックリストは,救急専従医が少数あるいは配置されていない小規模な救急外来部門であっても,このチェックリストに従い準備をすれば大きな間違いをせずに感染対策が行えることを目的に作成された。この中には,感染対策の管理体制,教育・検診・予防接種体制,感染が疑われる患者への対応,ハード面の感染リスク管理などが含まれており,さらにチェックすべき時期やその間隔については,それぞれカテゴリーとして明示している。本チェックリストが,救急外来部門における感染対策の充実に資することを期待したい。

    (日救急医会誌. 2020; 31: 73-111)

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