日本環境感染学会誌
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最新号
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proceedings
原著
  • 荻原 真二, 井上 修, 莊司 智和, 窪川 佳世, 松村 大樹, 矢崎 正浩, 井上 克枝
    2019 年 34 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    平成29年6月に大量調理施設衛生管理マニュアルの改正が通達され,ノロウイルスの流行期間の10月~3月までの間,大量調理施設の調理者を対象に高感度検査法でノロウイルス検査を行うことと記載されている.そこで現在国内で実施可能なノロウイルス検査法4法について感度,検査実働時間,トータル検査時間,コストについて比較分析した.

    健常人ボランティアより提出された53名の便検体(陽性例の追跡検査分を含む62検体)を用いGeneXpertシステム,TaKaRaノロウイルスキット,TaqMan Probe法,クイックナビ―ノロ2の4法について検討した.

    GeneXpertシステム,TaKaRaノロウイルスキット,TaqMan Probe法の3法は,大量調理施設衛生管理マニュアルが求める感度の検査法であった.53名の便検体の検査実働時間は各々106分,260分,687分,76分,トータル検査時間は各々2,434分,320分,857分,91分,コストは各々202,089円,73,644.4円,152,249円,79,500円であった.

    本検討より我々が理想的と考える検査法の選択は,大量検体を処理するスクリーニング検査法はTaKaRaノロウイルスキット,さらに陽性者の追跡調査はGeneXpertシステムの組み合わせである.検査法にはそれぞれ特徴があり,それらを理解した上で検査法を使い分けることが肝要である.

  • 亀田 典宏, 西尾 淳子, 小川 俊子, 岡田 忍
    2019 年 34 巻 2 号 p. 88-94
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    背景:手術機器の細菌汚染は,手術部位感染のリスクを増大させることが示唆されている.さらに,手術全体を通して使用する機会が多い電気メスは,細菌を媒介する可能性が他の手術機器に比べて高いといえる.

    方法:腸管処置を伴う消化器手術を対象に,手術に使用された電気メスより試料採取を行い,生化学的方法ならびに質量分析法にて菌種の同定を行った.対象手術は,結腸手術(COLO)と直腸手術(REC),胆道再建を伴う肝切除術(BILI-O)と膵頭十二指腸切除術(BILI-PD)とした.

    結果:31例中30例にて細菌が検出され,147種類のコロニーを分離し,皮膚に由来するCNS 45(30.6%),S.aureus 6(4.1%),腸管に由来するEnterococcus spp. 20(13.6%),E. coli 5(3.4%)などの細菌を同定した.31例中4例で切開創SSIが発生し,電気メスから検出された細菌と切開創SSIの起因菌が一致していた症例は4例中3例であり,主な起因菌はE. faecalis,E. coliなどであった.

    考察:電気メスは,皮膚のみならず腸管が由来であると推測される細菌によっても汚染されており,検出された細菌が切開創SSIの起因菌と一致している症例もみられた.本研究により,電気メスが細菌を媒介し,直接的または間接的に術野の汚染を引き起こす可能性が示唆された.

  • 桐明 孝光, 網中 眞由美, 杦木 優子, 西岡 みどり
    2019 年 34 巻 2 号 p. 95-105
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    個人の手指衛生行動に組織風土が影響することが指摘されている.本研究は,看護師の手指衛生に関する組織風土尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討することを目的とした.

    開発する組織風土尺度の内容妥当性を確保するために,既存尺度や手指衛生の組織文化介入研究等を参考に項目プールを作成した.感染管理の専門家8名で内容妥当性を検討し,看護師51名による予備調査を経て,2医療機関の外来および病棟看護師を対象に尺度開発のための質問紙調査を行った.

    510名(45.1%)の回答を分析対象とした.項目分析後,探索的因子分析を行った.5側面34項目(物品配備環境4項目,所属部署環境6項目,上司環境8項目,病院の手指衛生活動環境7項目,病院環境9項目)からなる「看護師の手指衛生に関する組織風土尺度Ver.1.0」を開発した.尺度全体のクロンバックα係数は0.935であり,内的一貫性による信頼性を確認した.尺度の下位項目は,手指衛生行動に影響を与える組織風土として解釈可能な構成であることを確認した.確認的因子分析によるモデル適合度に統計学的な課題はなく,尺度には構成概念妥当性があると判断した.

    本研究では「看護師の手指衛生に関する組織風土尺度Ver.1.0」を開発し,急性期病院の看護師の手指衛生行動に影響を与える組織風土を測定する可能性を示した.

報告
  • 野上 由起子, 松田 知子, 長尾 多美子, 島 治伸, 山岡 徹, 合田 学剛, 桑原 知巳
    2019 年 34 巻 2 号 p. 106-114
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    近年,亜塩素酸水が食品添加物殺菌料として認可され,環境除菌剤としても市販されている.本製剤は塩素系薬剤であるが,刺激性が少なく,有機物存在下でも比較的安定とされている.本研究では亜塩素酸水製剤の病院環境整備剤としての安全性と有効性を検証した.スタッフへの安全面や利便性はアンケート調査により評価した.亜塩素酸水製剤導入前に使用していた薬剤(第四級アンモニウム塩製剤)との比較では,スタッフの手荒れ・湿疹を感じるスタッフの割合は有意に減少した.眼への刺激については,導入後に薬液作製時のゴーグル着用を指導したため,刺激を感じるスタッフの割合は導入前後で変化を認めなかった.薬剤調整時間は30分以内との回答が多く,ゴーグルの着用以外に関しては作業負担に変化は認められなかった.導入後2年間のノロウイルス感染性胃腸炎とClostridioides difficile関連下痢症の院内発生数は減少しており,特に前者については導入後2年間院内発生を認めなかった.これら院内発生数の減少に伴い個人防護具の購入経費は減少したが,亜塩素酸水製剤が高額であるため導入2年後の感染対策経費は年間約22万円のコスト増となった.本製剤の導入に当たっては,効率的な使用計画が医療経済の面で必要である.亜塩素酸水製剤は塩素系薬剤であるが,日常的な病院環境整備剤として有用であると考えられた.

  • 西田 祥啓, 多賀 允俊, 河合 泰宏, 野田 洋子, 中川 佳子, 飯沼 由嗣, 丹羽 修
    2019 年 34 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    年齢層別化アンチバイオグラムの意義について検討を行った.2015年4月からの1年間に当院にて分離頻度が高かった黄色ブドウ球菌,肺炎球菌,インフルエンザ桿菌,大腸菌,緑膿菌を対象に,抗菌薬感性率を小児,非高齢成人,高齢成人で比較した.

    グラム陽性菌では,成人由来株との比較において小児由来のメチシリン感性黄色ブドウ球菌ではマクロライド低感受性,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌ではレボフロキサシン(LVFX)およびミノサイクリンの高感受性が示され,肺炎球菌では髄膜炎基準で小児由来株のペニシリン低感受性が示された.非高齢成人と高齢成人では差はみられなかった.グラム陰性菌では,小児および高齢成人が非高齢成人よりも比較的感受性が低かった.特に大腸菌ではアンピシリン/スルバクタム,セフェム系抗菌薬,LVFX,ST合剤,ホスホマイシンの多系統の低感受性が認められた.臨床上問題となる耐性菌の分離率は非高齢成人が最も低く,小児および高齢成人における初期治療において注意が必要と考えられた.年齢層別化アンチバイオグラムの作成は特に小児,高齢成人の感染症の初期治療において重要と考えられた.

  • 佐藤 則泰, 石井 美帆, 継田 雅美
    2019 年 34 巻 2 号 p. 122-127
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    日本環境感染学会・医療関係者のためのワクチンガイドラインには麻疹・風疹・ムンプス・水痘の感染制御を目的とした抗体価の判定基準等が記載されている.2018年日本国内では麻疹及び風疹が流行したが,新潟県内病院関係者の麻疹等感染対策の実態は不明であった.上記対策推進を目的として,我々は新潟県内の病院126施設に対して調査を行った.回答のあった89施設中,自施設病院関係者に対して上記4疾患のワクチン接種歴の把握もしくは抗体価測定を実施している病院は,61施設(68.5%)であった.抗体価測定を実施していた施設中,抗体価の判定基準を外注検査会社基準値とした病院が17施設(29.3%),ワクチンガイドライン基準値とした病院が36施設(62.1%)であった.

    ワクチンガイドラインの基準値は,医療関係者が感染を防御するための抗体価であり,外注検査会社基準値より高めに設定されている.一部の病院では基準値の違いが認識されずに外注検査会社基準値を感染防御の抗体価判定基準に用いている可能性が明らかになった.

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