当院の医療従事者に起きた汚染事故の実態を調査した. 1989年から1992年までの4年間に, 医療行為, あるいは処置後のあと片付けなどに伴って発生した179件の事故報告があった.
汚染原因としては注射に関連した行為や縫合針の誤刺がもっとも多かった. 被汚染者は医師がその40%, 看護婦が50%を占めていた. 医療従事期間と事故発生との関連をみると, 医師の場合には研修医に, また看護婦では就職後3年目までに事故の発生が目立った. 発症予防として, B型肝炎ウイルスの汚染事故に対して被汚染者がHBs抗体陰性の場合, HBIG剤の単独投与やHBワクチンとの併用投与が行われた. またC型肝炎ウイルスの汚染事故には無処置で定期的観察が行われたが, 今回の対象に発症者はいなかった. 事故は不注意によるものが多く, 汚染事故にかかわる情報の早期伝達と現場教育の継続は, 事故や感染を未然に防ぐための最良の対策だと思われた.
事故未届けの調査から, 欧米に比べて事故件数が少ないのは届け出義務がないことも1つの要因と考えられた. 医療従事者におけるウイルス感染が関心を集めている中で, 医療従事者自身が感染源にならないためにも, 客観的な評価ができる汚染事故報告の公的基準を整備し, それをふまえたデータの解析が必要であることを今回の調査は示唆している.
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