環境感染
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14 巻, 4 号
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  • 第1報ラットにおける単回経口投与毒性
    尾嵜 秀次, 安藤 誠人, 川音 晴夫, 仲由 武實
    1999 年 14 巻 4 号 p. 239-246
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    ポビドンヨード原末 (PVP-I) 60, 200,600, 2000mg/kgを雌雄ラットに単回経口投与したときの毒性学的影響について検討を行った.
    1.試験期間中に死亡例は認められず, また投与群と対照群間の体重の推移にも差はなかった.
    2.一般状態では2000mg/kg群の雌2例, 雄1例で投与後15~30分に肛門から粘液の排泄が観察されたが, いずれも30~60分後には正常に復した. その他に雌1例で投与後15分に流涎, 投与後30~60分に反応性低下が見られたが, 流涎は投与後30分で, また反応性低下は投与後120分で完全に消失した.
    3.投与後14日の甲状腺ホルモン (TSH, T3, T4, free T3およびfree T4) の変動は, 雌雄ラットとも2000mg/kg投与においても影響は認められなかった.
    4.PVP-Iを経口投与すると速やかにヨウ素が用量依存的に体内に吸収され, 60mg/kg群では1~2時間, 200mg/kg群では1~2時間, 600mg/kg群では2時間, 2000mg/kg群では4~6時間程度で血中濃度が最高値に達するものと考えられた.吸収されたヨウ素は比較的速やかに体外に排泄されると考えられ, 48時間後にはいずれの投与群においても対照群とほぼ同程度の値に回復した.
    5.試験期間中の血液学的検査, 生化学的検査および尿検査の値にPVP-I投与に起因した変化はなかった.
    6.PVP-I投与後14日の心臓, 脾臓, 肺, 肝臓, 腎臓, 精巣, 卵巣, 前立腺, 子宮, 下垂体, 胸腺, 副腎および脳の剖検所見, およびこれら臓器の重量に対照群との比較で差を認めなかった.
    7.PVP-I投与後14日の病理組織学的所見において胃粘膜下織の限局性で軽度な線維増生と細胞浸潤が2000mg/kgの雄1例で観察されたが, その他, 各種臓器にPVP-I投与に起因すると考えられる変化は認められなかった.
    8.以上, PVP-Iをラットに単回経口投与した結果, 2000mg/kg (ヒト体重を50kgとして100g/bodyに相当) でPVP-Iの直接作用によると思われる軽度な胃粘膜障害がみられた以外はPVP-Iに関連した毒性症状は認められず, PVP-Iは毒性の弱い化合物と考えられた.
  • 第2報ラットにおける28日間反復経口投与毒性
    伊藤 美奈子, 川音 晴夫, 仲由 武實
    1999 年 14 巻 4 号 p. 247-254
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    ポビドンヨード原末 (PVP-I) の2, 20および200mg/kgを雌雄ラットに28日間反復経口投与し, その安全性について検討した. その結果, 最高投与群の200mg/kg群で投与直後に一過性の流涎が認められ, また同投与群で総コレステロールの増加あるいはその傾向が認められた. しかし, 甲状腺の重量に変動はみられず, 組織学的検査においても変化は認められなかった. その他, PVP-I投与によると考えられる影響は認められなかった.
    以上, PVP-Iをラットに28日間反復経口投与してその毒性学的影響を検討した結果, 無毒性量は20mg/kgと推定された. この用量は, 成人がイソジンガーグル (PVP-I, 7.5%) の15倍希釈液60ml (1回の含嗽量に相当) の3倍量を28日間飲み続けた時のPVP-I摂取量にほぼ相当することから, 通常のうがい程度の使用であれば問題はないと考えられた. しかし, ヨウ素の過剰摂取は特に新生児や胎児の甲状腺機能異常をきたす報告もあることから, 妊婦や授乳期の母親, 新生児に対するPVP-I製剤の使用には十分な注意が必要と考えられる.
  • 太刀川 貴子, 渡理 英二, 染谷 健二, 池田 年純, 荒明 美奈子, 藤巻 わかえ, 金井 孝夫, 内山 竹彦, 宮永 嘉隆
    1999 年 14 巻 4 号 p. 255-263
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    弱酸性電解水の各種病原微生物に対する効果を検討した.弱酸性電解水は電解添加液 (NaCl, HCl) を微量添加した水道水を隔壁膜のない電気槽で電気分解し, pH5.0-6.0に設定することにより, 次亜塩素酸を効率よく有効利用する目的で開発された.細菌に対する効果は含有塩素濃度, pH, 温度, 作用時間の影響を検討した.無芽胞菌 (13種を検討) においては本電解水含有塩素濃度30ppm, 作用時間30秒で被験菌株のほとんどについて生存菌数が検出限界以下であったが, P. aeruginosaの殺菌には50PPmが必要であった.有芽胞菌 (3種を検討) の場合, C. perfrigensC. botulinumは含有塩素濃度60ppm, 作用時間1分で検出限界以下になった.B.subtilisは含有塩素濃度50ppm, 作用時間5分で検出限界以下になった.ウイルスに対する効果は50ppmではInfluenzavirus A/PR/8/34株, Semliki forest virusにおいては5秒, Adenovirus8型では15秒, Herpes simplex virus 1型HS株では1分, 2型KP株では5分以内で検出限界以下となった.Humanimmunodeficiency virus1型IIIB株においては30ppm, 5秒で検出限界以下となった.また, 応用として, 手指除菌効果の検討, 噴霧による実験動物飼育室の除菌効果の比較を行ったが, いずれも除菌効果があった.
    本弱酸性電解水は各種病原微生物に対して優れた殺菌効果があり, 安全で種々の用途への応用が期待される.
  • 末柄 信夫, 山口 英世, 安井 克人
    1999 年 14 巻 4 号 p. 264-269
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    手指消毒のために開発された手指熱風消毒器 (商品名クリアポパイ) の消毒・殺菌効果について検討した.試験菌104~106 cfu (コロニー形成単位) を含む懸濁液を塗布した平板培地を本消毒器が発生する熱風および紫外線 (UV) に曝露した場合, Pseudomonas aeruginosaEscherichia coli (O-157) は5secで, MRSA (メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) とSalmonella enteritidisは10 secで, Staphylococcus epidermidisは20 secで, またEnterococcus faecalisは30 secで, いずれも99.9%以上が死滅した.Candida albicansMalassezia furfurは30 secで99.6%が死滅した.一方, 手掌に塗布したE.coli (1.3×105 cfu/cm2) は 10 secの曝露で99.9%が死滅した.この消毒・殺菌効果のほとんどはUV曝露によるものであった.以上の結果に加えて本消毒器は, 消毒液や清拭紙等を必要としないこと, 操作が簡便であること, 手荒れもしないこと, などのすぐれた特長を備えているところから, 医療や食品等の取り扱いにおける手指消毒にきわめて高い有用性をもつものと考えられる.
  • 高橋 夕子, 岡部 忠志, 沖村 幸枝, 本田 孝行, 加藤 祐美子, 川上 由行
    1999 年 14 巻 4 号 p. 270-274
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    日常業務における看護婦の手の細菌汚染状況を調べ, ゲル状および液状アルコール性消毒剤の消毒効果について検討した. まず, 女性2名, 男性1名で消毒剤の消毒効果について検討した. 両消毒剤とも女性ではメーカ推奨量で十分な効果が得られた. 手の大きい男性では不十分であったが, 増量することにより十分な消毒効果が得られた. つぎに看護婦8名を対象とし, 引継ぎ, 検温, 清潔業務別に細菌汚染について検討した. どの業務においても看護婦の手は10種類以上の細菌に汚染されており, 水を使用する清潔業務において最も強い細菌汚染が認められた. 院内感染で問題となるMRSAや.Pseudomonas aeruginosa汚染も単発的に認められた.Bacillus属を除く細菌に対して液状消毒剤, ゲル状消毒剤共に良好な消毒効果が得られた. 医療従事者は常に自らの手が細菌に汚染されていると考えるべきであり, 患者に接する場合, 安価な液状消毒剤, ベッドサイドで使用できるゲル状消毒剤を使い分けることにより, ある程度院内感染を防ぐことが可能であると考えられた.
  • 白石 正, 仲川 義人
    1999 年 14 巻 4 号 p. 275-279
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    医療用具の一次消毒には様々な消毒剤が使用されているが, 被消毒物に損傷を与えるような消毒剤の使用は控えるべきである. 今回, 金属の腐食性に着目して鉄片, 亜鉛片, 銅片, アルミニウム片, 真鍮片およびステンレス片を対象に, 浸漬消毒に通常使用されない消毒剤も含めた7種の消毒剤によるこれら金属に対する腐食性, および腐食して錆が発生した鉄片に対する消毒剤の殺菌効果の影響とその原因について検討した. 0.1%塩化ベンザルコニウム液は鉄片に対して30分, 0.02および0.05%次亜塩素酸Na液は鉄片および亜鉛片に対して10分, 銅片に対して1時間の浸漬で錆の発生が認められた. 両性界面活性剤は鉄片に対して0.2%溶液中で1時間後, 0.05%溶液では3時間後に錆の発生が認められた. 0.1および0.5%グルコン酸クロルヘキシジン液, 80vol%エタノールおよび70vol%イソプロパノールは, 少なくとも6時間以内の浸漬では錆の発生は認められなかった. 一方, 鉄錆 (+) 片と鉄錆 (-) 片を対象にグルコン酸クロルヘキシジン液, 塩化ベンザルコニウム液および両性界面活性剤の殺菌効果の相違の有無については, いずれの消毒剤も鉄錆 (+) 片は鉄錆 (-) 片に比べ殺菌効果の低下が認められた. この原因として, 鉄錆 (+) 片から溶出する鉄イオン量が鉄錆 (-) 片に比べ多いことから, 鉄イオンが殺菌効果に影響していことが一因と考えられた.
  • 古賀 美紀, 藤田 一郎, 内田 郁美, 田崎 考
    1999 年 14 巻 4 号 p. 280-284
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    新生児への感染経路となりうる医療従事者の手や医療器具を対象に, ATP測定による衛生状態モニタリングを行った. 手洗い前の手掌のATP相対値は個人差が大きく, 平均値±標準偏差は894±737relative light units (RLU) で, 水洗い後に167±101RLUへ低下した. イソジン手洗いでは600±422RLUが42±26RLUに下がった. 看護婦の手の汚染度を追跡すると, 日勤就業前・環境整備後・昼食休憩後・成人患者処置後のATP値が高かった. 入りロマットと処置室冷蔵庫のATP値がかなり高かったが, 清掃後は改善した. 新生児室にある器具よりも処置室・ステーションの器具の方がATP値が高かった.新生児の便のATP値は生後徐hに高くなり, 5生日以降は高値になった. その場で汚染度を知ることができるATP衛生検査によって, 一過性の汚染は手洗いや清掃によって改善することがよくわかり, 感染予防の意識づけに効果的と思われた.
  • 近藤 真紀, 西亀 正之
    1999 年 14 巻 4 号 p. 285-289
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    輸液療法は現代の医療には欠かせないものであるが, 不適切なルート管理による感染がおきれば患者の苦痛, 入院期間の延長, 経済的損失等のリスクを高めるものともなりうる. このため, カテーテル由来感染の実態を把握し, その防止に努めることは感染管理の重要な役割である. 本調査では血流感染の因子のうち, 側管からの注入操作時に細菌汚染が予測される三方活栓に焦点を当て調査を行った. 今回調査協力が得られた大学附属病院集中治療室では中心静脈ラインでの三方活栓の使用頻度はきわめて低いため, 末梢静脈ラインに接続されている三方活栓50個について調査した. 三方活栓注入口の細菌検出が認められたのは6%であったが, 細菌検出と使用時間とに有意な関連性はなかった. この背景には従来使用されていたアルコール綿による消毒と近年行われているエタノール噴霧による消毒の違いとの関連が予測され, 三方活栓使用時に確実なエタノール噴霧による消毒がなされていれば, カテーテル由来感染の危険性が低いと考えられた.
  • ツベルクリン反応検査は結核院内感染対策として有用か
    石沢 眞幸, 大羽 美津子, 布施 克也
    1999 年 14 巻 4 号 p. 290-295
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    結核病床を持たない一般病院の職員のツベルクリン反応 (以下ツ反応) を知るために当院職員および当院に働く外部委託職員306名を対象にツ反応検査を行い, 職種, 年齢, ツ反応・BCGの記憶などとの関連性を検討した. 看護職員を中心に初回 (T1) 強陽性者を除いた115名に二段階法 (T2) を実施した. 一部には左右同時検査によりツ反応検査の再現性も検討した. 看護職員特に若年職員は他職種に比べ明らかに強いツ反応を呈しており, 職業暴露の可能性が示唆された. 若年職員にも強陽性者が多くまた高齢者でも陰性者が少なくなく, 年齢によるツ反応の予測は難しいと考えられた. 高齢であっても結核院内感染対策の対象とする必要があり, 看護職員は学生時代からの対策が必要であると思われた. ツ反応・BCGについての記憶は不確かで実際の反応結果を予想できず, 記憶のみを基にした結核院内感染対策は不十分であると考えられた. 二段階法によりT1平均14±7mmからT2平均32±18mmと約18mm発赤径は増大した. T1からT2を予想することは難しく, 職員結核感染対策のベースライン値を得るためには二段階法が必要と考えられた. また左右同時検査の結果からはツ反応はおおむね25%程度の変動は不可避であることが示され, 個人ベースのツ反応結果の判定は慎重に行わなければならないと考えられた. ツ反応の特性を十分承知した上で結核院内感染対策に活かすべきであると思われた.
  • 森 那美子, 伊藤 輝代, 対馬 ルリ子, 法橋 尚宏, 平松 啓一, 杉下 知子
    1999 年 14 巻 4 号 p. 296-302
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    産院におけるmethicillin耐性Staphylococcus aureus (MRSA) の母児への定着状況および職員・病棟環境での分布を把握するため, 妊産褥婦とその児および病棟職員と病棟環境からMRSAを分離し, 細菌学的および分子疫学的検討を行った. 92名の妊産褥婦から検体を採取し, 退院時に2名 (鼻腔1・手指1) からMRSAを分離した (MRSA保有率: 入院時手指0%, 鼻腔0%, 退院時手指1.4%, 鼻腔1.4%). 1カ月健診受診時の児17名からはMRSAを1株鼻腔から分離した (手指0%, 鼻腔5.9%). 病棟職員49名から検体を2週間おきに3回採取したところ, 医師から3株, 看護婦から2株, 全て手指から分離した (平均保有率: 手指3.4%, 鼻腔0%).これらのMRSA保有率は, 先行研究と同等ないし低値であり, 調査場所が単科産院であるためと考えた. また, これらの分離株と病棟環境2地点から検出したMRSAをあわせてパルスフィールド電気泳動法で解析したところ, 遺伝子パターンが同一なものが2株ずつ4組あった. 退院前の接触のない2名の妊産褥婦および1ヵ月健診時の児と沐浴槽からそれぞれ同じ遺伝子パターンの株を分離したことから, この産院内でMRSAを保菌したと考えた. 分子疫学的手法による結果をもとに具体的な看護ケアの検討をすることで, より的確で効果的な院内感染予防対策および評価が可能になると考えた.
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