環境感染
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15 巻, Supplement 号
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  • 田中 洋子
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 1-7
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    病院感染看護管理の課題には,(1) 感染症のケアを充実させ重症化を防ぐ,(2) 病院感染の発生および拡大を防止する2つの課題がある. 病院感染症として, 尿路感染症, 呼吸器感染症, 菌血症の3つが知られているが, 発熱や白血球増多を伴うことがほとんどであり, 体温測定や検査結果の観察が必要である.
    病院感染対策は, 宿主の免疫力増強, 病原体の死滅・消失, 感染経路の遮断が基本であり, 特に看護職員に求められているのは感染経路の遮断である. 1996年にアメリカCDCが示した疾患や, 感染の有無に関わらずすべての患者に標準予防策で対応し, さらに病原体の感染経路別予防策で対応するという2段階の方法は広く参考にされている. 感染経路遮断の基本となるのは手洗いであり, 場面に応じて手袋やマスクなどを使用する.
    患者に最も接している看護職員は, 感染を拡大させる立場と感染防止の担い手という両面の立場にある. その分かれ目は, 病院感染に対する関心度にほかならない.
  • 一山 智
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 8-12
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    感染症は宿主の感染防御機構を微生物の病原性が上回った場合に成立する. とくに日和見感染や病院内感染は, 宿主の防御機構に障害があることが多いため, 病原性が弱い微生物でも感染症にいたる. 宿主の防御機構は正常細菌叢, 機械的微生物侵入防止機構, 補体, 食細胞による食菌作用, および特異的免疫防御機構などがある. 一方, 日和見感染症を起こす微生物はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA), バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE), セラチアやエンテロバクターなどの腸内細菌, 緑膿菌やアシネトバクターなどのブドウ糖非発酵菌, ニューモシスティス・カリニ, クロストスポリジウム, トキソプラズマなどが重要である.
  • 岡田 淳
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 13-18
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    適切な病院感染対策を行うには, 微生物に対する正しい知識を持つことが不可欠である. 本項では, 基礎的な観点から微生物の分類, 弱毒菌と強毒菌, 病院感染を起こす代表的な微生物について記載した.
    微生物の分類については, 生物分類における寄生虫および微生物の位置と命名法について記載した.
    弱毒菌と強毒菌については, 感染性の概念, 感染症成立の要因およびバイオハザードについて解説した. 病院感染の対象となる微生物の多くは, バイオハザードの分類ではレベル1, 2の弱毒性の微生物であり, その多くは生体に生息する常在菌叢である. バイオハザードの基準, 常在菌の分布について知ることは病院感染対策上大切である.
    病院感染を起こす代表的な微生物については, 感染源からの分類, 感染経路による分類, 微生物の種類別の分類について記載した. 現在病院感染対策として重視されているのは感染経路対策であり, 接触感染, 飛沫感染, 空気感染を起こす微生物を認識し, それぞれに応じた対策を講じることが肝要である.
  • 病院感染対策に必要な微生物検査法
    松本 哲哉
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 19-22
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    細菌検査の代表的なものに, 喀痰培養, 尿培養, および血液培養などがあるが, いずれの検査においても最も重要なことは, 良質の検体を提出することである. そのために臨床サイドでは検体の採取の際に常在菌の汚染をできるかぎり防ぎ, 検体が得られたらすぐに検査室に運ぶことを心がける必要がある. さらに細菌検査は臨床検査技師各人の判断が検査結果を大きく左右することから, 何を目的とした検査なのか, 患者の基礎疾患や疑われる感染症, 抗菌薬投与の有無など, さまざまな情報の検査室側への提供が必要である. さらに臨床側 (病棟側) と検査室側との通常のコミュニケーションが病院感染へのスムーズな対応に不可欠と考えられる.
  • 病院感染対策に必要な微生物検査法
    三澤 成毅
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 23-29
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    病院感染対策のために行われる微生物検査について方法別に概説した. 病院感染対策は病院全体で組織的に行われるが, 微生物検査室の担う役割は大きい. 近年では保菌者検査や各種環境検査の必要性が見直されてきている. これらの検査はそのタイミングや解釈には定まったものがない. そのため, 検査の目的と結果のもつ意味や感染対策に寄与する効果について十分吟味し, 効率的な運用が望まれる. また, 今後は日常検査から得られた情報を感染の実態把握や対策にどのように生かしていくか, また対策上有益な情報を得るためにはどのような臨床情報が必要かなどについても考えていく必要がある.
  • 病院感染を起こす代表的な微生物 (感染経路と病原性)
    小林 芳夫
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 30-32
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    病院感染を起こす主要グラム陽性球菌には, ブドウ球菌, 腸球菌, レンサ球菌があり, 特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌, バンコマイシン耐性腸球菌, ペニシリン耐性肺炎球菌が注目されている. これら耐性菌は医療従事者を介して伝播する場合が多く, それ以外には空気感染がある. したがって, これら耐性菌による感染症患者を治療, 看護した後の感染防止対策として, 使用医療機器の滅菌・消毒や十分な手指消毒などをする.
  • 病院感染を起こす代表的な微生物 (感染経路と病原性)
    山根 誠久, 仲宗根 勇
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 33-36
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    グラム陰性球菌を代表する淋菌 (Neisseria gonorrhoeae) と髄膜炎菌 (N. meningitidis) は, いずれも乾燥, 温度変化, 光線, 消毒薬などに弱く, ヒト生体外では急速に死滅する性質をもつ. 従ってヒトからヒトへの濃厚な, あるいは直接の接触によってのみ感染が拡がる. このような性質から, 病院感染としての重要度は限定される.
    グラム陽性桿菌には, 好気性菌, 嫌気性菌を含め, 各種の菌属, 菌群, 菌種が含まれるが, 病院感染という視点から見ると, 抗菌薬投与に伴う下痢症の原因, クロストリジウム・ディフィシレ (Clostridium difficile) が最も重要な細菌である. 本菌が作る芽胞は煮沸や常用の消毒薬に強い抵抗性を示し, 病院環境が汚染されるとこれを根絶することはまず不可能である. また患者への抗菌薬, 抗癌剤の使用は院内環境への本菌の汚染を助長し, 患者個人には外毒素による大腸炎を来す.
  • 病院感染を起こす代表的な微生物 (感染経路と病原性)
    小花 光夫
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 37-41
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    病院内では数多くの微生物が病院感染を惹起する可能性を有しているが, 現在のところ腸内細菌群を中心としたグラム陰性桿菌の中ではMRSAや緑膿菌ほどに問題化している菌種はみられない. しかし, セラチア・マルセッセンス (Serratia maroesoens) などの一部の菌種は弱毒菌であっても汎用消毒薬に抵抗性を有していること, また, 本菌群のかなり多くのものがβ-ラクタム系薬剤を初めとした多種の抗菌薬に対して耐性を有していることなどから, 従来から本菌群は病院感染起炎菌として注目されていた. このことは, 新規のβ-ラクタム系 (特に, 第3世代セフェム系) 薬剤の開発が一時期本菌群に対して向けられていたことからも裏付けられ, その結果として, 本菌群の病院感染起炎菌としての重要性は一時的にはやや減少をみた. しかし, 近年, 基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌やメタローβ-ラクタマーゼ産生菌などのような新たな耐性菌が出現してきたことから, 本菌群の病院感染起炎菌としての重要性は再び増加しつつあり, しかも今後益々助長されるものと考えられ, 本菌群の動向には今後とも十分な監視と対応が必要といえる. 本稿では, 大腸菌 (Escherichia coli), サルモネラ (Salmonella spp.), クレブシェラ・ニューモニエ (Klebsiella pneumoniae), エンテロバクター (Enterobaoter spp.), セラチア・マルセッセンス (Serratia marcescens) などについて病院感染起炎菌という観点から感染経路や病原性などについて述べた.
  • 病院感染を起こす代表的な微生物 (感染経路と病原性)
    猪狩 淳
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 42-45
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    緑膿菌をはじめとする非発酵菌は, 日和見感染菌として注目されている. 非発酵菌は低い栄養条件で発育し, 自然環境に生息している. 病院内にも存在する. 病原性が弱い, いわゆる弱毒菌であるが, 常用抗菌薬に耐性を示し, 菌種によっては消毒薬に抵抗を示す. 非発酵菌による感染症は, 大部分が重篤な基礎疾患を持つ症例や感染に対する抵抗力が減弱した症例に発症するいわゆる日和見感染症である. また, 気管内チューブ, 尿道カテーテル, 静脈カテーテル, 脳室-脊髄腔シャントなど, 器具による医療操作を施行中の患者に, 病院感染 (nosocomial infection) としてもみられる. さらに, 抗菌薬に耐性を示す菌種が多いことから, 菌交代症をもひき起こし, 難治性で, 治療に難渋する場合が多い. 非発酵菌は病院感染症の危険性を持つ菌群といえよう.
  • 病院感染を起こす代表的な微生物 (感染経路と病原性)
    古谷 信彦, 舘田 一博
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 46-48
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    レジオネラ属菌の感染は汚染された水系からエアゾルを吸入することで起こり, ヒトからヒトへの感染はないとされている. クーリングタワーの水, 温泉水の誤嚥, 循環式浴槽のほか, 病院内では人工呼吸器, 加湿器ネブライザー, シャワー, 水道水などの汚染による感染例がある. レジオネラ感染症はポンティアック熱と重症型のレジオネラ肺炎が主なものである. レジオネラ属菌の染色にはヒメネス染色などの特殊染色が必要であり, 分離培養にもBCYE-α培地のような特殊培地が必要である.
  • 病院感染を起こす代表的な微生物 (感染経路と病原性)
    古谷 信彦, 舘田 一博
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 49-52
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    抗酸菌, なかでも結核菌 (Mycobacterium tuberculosis) は1950年代までは罹患率, 死亡率とも高く, 死の病として恐れられていた. その後, 抗結核薬の登場や生活環境の改善に伴い罹患率, 死亡率は飛躍的に低下したが, 1980年代に入ってからその低下率に翳りがみえている. またそれに伴い病院内における集団感染例も増加してきている. 本菌の感染経路は空気感染であり, 感染の危険性は空気中に存在する結核菌含有飛沫核の濃度と, その空気に暴露される時間に依存して高くなる. 結核菌は初感染後, 初期変化群を形成するが, この初期変化群から引き続いて一次結核症に進展するものは感染例の5%にすぎない. 残りは発病に至らないが全身の諸臓器に持続感染し, 長時間を経てから二次結核症として発病する.
  • 病院感染を起こす代表的な微生物 (感染経路と病原性)
    中村 良子
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 53-55
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    肺炎マイコプラズマ (Mycoplasma peumoniae) は通常飛沫感染により急性, 亜急性呼吸器感染症を起こす. 原発性異型肺炎 (primary atypical pneumonia;PAP) は非定型肺炎とも呼ばれ, 4年ごとのオリンピック開催年にほぼ一致して流行していたが, 近年では年間を通じて散発例がみられている. 肺炎マイコプラズマによる呼吸器感染症は, 小児や若年成人に多く発症し, 長期にわたる頑固な咳が特徴である.
    ・病原性: マイコプラズマのうち, 病原性が確認されているのは肺炎マイコプラズマのみである.
    肺炎マイコプラズマは原発性異型肺炎primary atypical pneumonia (PAP) をはじめとする呼吸器感染症の原因となるばかりでなく, 無菌性髄膜炎, 関節炎など多彩な症状を示す.
    ・流行: オリンピック開催年に流行していたが, 最近では年間を通じて散発例がみられる.
    ・治療薬: マクロライド系, テトラサイクリン系, ニューマクロライド系, ニューキノロン系抗菌薬が有効.
    ・検査: 分離同定 (PPLO培地に接種後数日~3週間で桑の実状コロニー出現→継代すると目玉焼き状コロニーとなる). 血清抗体価測定.遺伝子診断.
    ・感染対策: スタンダード・プリコーションに基づく飛沫感染対策をとる.
  • 病院感染を起こす代表的な微生物 (感染経路と病原性)
    前崎 繁文, 河野 茂
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 56-59
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    真菌症は免疫不全患者の日和見感染症として, 病院内で発症する重要な感染症の一つである.代表的な原因真菌であるカンジダ属, アスペルギルス属, クリプトコックスなどはすべて自然界に広く生息し, 空気中や土壌からも分離される.また, カンジダ属はヒトの常在菌として消化管内や膣粘膜に生息している.そのため, 真菌症の発症予防には患者の周囲の環境中からあらゆる種類の真菌の菌量を可能な限り減少させることとともに患者の感染防御能を改善することが最も重要である.
  • 病院感染を起こす代表的な微生物 (感染経路と病原性)
    藤田 紘一郎
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 60-64
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    病院感染で問題となる原虫・寄生虫症には, 虫卵排出後速やかに感染型に発育するものと, 感染型が直接排泄される場合とがある. この場合, 感染型の経口摂取により新たな感染が起こるので, 排泄物の取り扱いには十分な知識と注意が必要である. また, ヒゼンダニのように発育・増殖が速く, 接触感染するものもある上これらの原虫・寄生虫は日和見感染を起こすものが多く, 小児や老人, 免疫能異常者, 免疫抑制剤使用者では重症化しやすいので特に注意が必要である.
    なかでも病院感染で最も問題になっているのは疥癬である上その治療, 防虫対策に関しては迅速に, 根気よく行い, 感染の拡大を防がねばならない. ついでクリプトスポリジウム症が重要である上この両者はヒトからヒトへ直接感染が可能であり感染力も強く, 重症化しやすい疾患である.
  • 病院感染を起こす代表的な微生物 (感染経路と病原性)
    中村 良子
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 65-71
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    血液を介するウイルス感染症 (blood-born infection) を起こすのは, B型肝炎ウイルス (HBV), C型肝炎ウイルス (HCV), ヒト免疫不全ウイルス (HIV), 成人T細胞白血病ウイルス (HTLV-1), サイトメガロウイルス (CMV), EBウイルス (EBV), ヒトパルボウイルスB-19などで, 「ウイルスによる院内感染源」として重要である. 従って医療従事者は, これらの血液媒介ウイルス (血中ウイルス) の感染経路, 消毒法などをよく理解し, 適切な病院感染防止対策を実践する必要がある.
    ウイルス感染に対する予防策は, ウイルスごとに異なるわけではない. スタンダード・プリコーション (標準予防策) に基づく, 予防策は同じだが, 医療従事者の抗体検査, ワクチン接種, 針刺し事故後の対処はウイルスごとに異なる. 有効なワクチンの開発実用化が望まれるが, 病院感染, 業務感染を起こさない努力の積み重ねが必須である.
  • 病院感染対策に必要な微生物検査の解釈
    賀来 満夫
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 72-77
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    微生物検査において原因微生物を検出同定することは感染症の確定診断となる重要な検査である.
    微生物の同定検査は, さまざまな分離培地を用いて検体から微生物を分離培養し同定する方法と検体中の微生物の抗原や遺伝子などを直接検出する方法に大別される. このうち, 微生物の分離培養による同定検査は確定診断となるものの, 迅速性が欠けるなどの問題点がある上これに対し, 微生物の抗原や遺伝子を検出する方法は迅速性に優れているものの, 交差反応や汚染などの点でやはり問題がある.
    今後, より精度が高く迅速性に優れた微生物同定検査が行われていくためには, 検査法そのものの進歩発展が望まれると共に, 臨床側と検査室側がより密接に患者情報や検査情報を確認し合い, 同定検査法の利点や欠点を理解した上で検査結果をより正確に解釈することに努めていく必要がある.
  • 病院感染対策に必要な微生物検査の解釈
    宮崎 義継, 河野 茂
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 78-82
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    感染症の原因菌を分離し薬剤感受性試験を行い、的確な抗菌薬を投与することは抗菌化学療法の基礎であるばかりではなく、そのデータの蓄積は経験的治療にとっても有用である。一般細菌のうち薬剤感受性に関して話題に上ることが多いものは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 、バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE) 、ペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP) やキノロン耐性菌などである。MRSAやVREのように、現在のところ有効な抗菌薬が少なく伝播の可能性が高いものについては、薬剤感受性試験の結果に基づいた院内感染制御が必要である。結核に関しては、菌の分離とそれに続く薬剤感受性検査を、従来よりも迅速に1ヵ月以内に終了する必要性が広く認識されるべきである。真菌に関しては、アムホテリシンBの耐性菌は臨床的に殆どみられないが、アゾール系抗真菌薬に耐性のカンジダ属やクリプトコックス属にたいする注意が必要である。
  • 病院感染対策に必要な微生物検査の解釈
    遠藤 和郎
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 83-87
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    病院疫学情報とは, 病院感染の減少に役立つ情報と考えたい. 情報は細菌検査室が発生源となることが多い. 主な情報としては, サーベイランスに必要な基礎データ, 多剤耐性菌の検出, アウトブレイクの発見などがあげられる. 細菌検査室はデータをコンピュータ管理することにより, すばやく適切な情報提供に心がける, 感染管理担当者は, その情報をもっとも必要とする部署に, 時期を逃さず (タイムリーに), 要領良く (コンパクトに), 印象的 (インパクトのある) に報告する. そのため感染管理担当者には, 細菌学および疫学的知識, すばやい判断と実行力, そしてプレゼンテーション能力が要求される. 病院疫学情報が病院感染の減少に貢献できる生きた情報となるためには, 細菌検査室と感染管理担当者の密な連携が不可欠である.
  • 菊池 賢
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 88-90
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    病院での環境微生物検査はその病院で発生したことのない感染症の発生, もしくは特定の感染症の爆発的な流行時, 特定の研究目的以外, 行う必要はない. 何か感染対策をやっているというポーズ, 免罪符としての定期的な無菌検査, 拭き取り検査, 落下細菌検査は細菌検査室の莫大な徒労と「院内感染対策会議資料」という名の塩漬けされた書類スペースを増やすだけである. 特定の微生物感染症の新たな爆発的流行, 未知の微生物感染症による病院感染の調査は重要な意味を持つ. その目的は感染ルートの解明と感染制御, 封じ込めであり, 迅速な対応と疫学的解釈が必要である.
  • 西岡 みどり
    2000 年 15 巻 Supplement 号 p. 91-96
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    病院感染サーベイランスは, 継続的な質改善活動 (continuous quality improvement: CQI) のツールである. 具体的には, 継続的に対象を設定して分母を数え, 分子となる感染症例を一定の定義に則って判定, 集計して得た病院感染率を臨床の職員と共有することで問題点を検討し, 対策を実施していく活動である. その目的は, 医療の質の改善である.
    病院感染サーベイランスの実施方法には各種あり, それぞれの利点や欠点を考慮して, 病院の特性に合ったサーベイランスを実施する必要がある.
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