環境感染
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16 巻, 2 号
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  • 第一報mecA遺伝子保有MRSA・CNSの検出
    石原 ともえ, 高橋 智恵子, 岡本 正孝, 小川 正之
    2001 年 16 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    1993年から1998年の6年間に, 医療技術系学科に在籍した臨床実習未経験の157人の鼻腔よりStaphylococcus属菌を分離し, methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) およびmethicillin-susceptible S.aureus (MSSA) の分布を知るとともに, coagulase-negative staphylococci (CNS) についても若干の検討を加えた.対象とした学生のうち39人 (24.8%) からS. aureusを, また, ほぼ全員からCNSを分離した.
    これらの分離株について5薬剤を用いて薬剤感受性試験を行い, さらにS.aureusと同定した菌株についてはコアグラーゼ型別および毒素産生試験を実施し, 薬剤感受性試験の結果とあわせて検討した.
    以上の結果, われわれは健康学生の2人 (1.3%) からMRSAを, また, 8人 (5.1%) からmethicillin-resistant coagulase negative staphylococci (MRCNS) を検出し, このうちの一部からmecA遺伝子を確認した.この, MRSAを保菌する一人から, 近年, 院内感染で大きな問題となっているコアグラーゼII型でブドウ球菌エンテロトキシン (SET)-CおよびToxic Shock Syndrome Toxin (TSST-1) 産生株を分離した.
    これらの健康者から検出したMRSAが, 院内感染から検出されるMRSAと同様の性状を示していることから, 院内感染と平行して菌交代現象, 内因性感染の面からさらに検討する必要があると考える.
  • 第二報コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の分離状況とmecA遺伝子とスライム産生について
    高橋 智恵子, 石原 ともえ, 岡本 正孝, 小川 正之
    2001 年 16 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    1996~1998年の3年間に臨床実習未経験の学生77名の鼻腔よりCoagulase Negative Staphylococci (CNS) 265株を分離した.そのCNSの菌種同定, 薬剤感受性を調査し, 耐性株についてはmecA遺伝子保有の有無およびスライム産生性も調べた. CNSは77名中70名 (90.9%) より分離されStaphylococcus epidermidis205株 (77.3%), Staphylococcus hominis45株 (17.0%) でこの2菌種で全体の94.4%を占めた.つぎに, Staphylococcus capitis4株 (1.5%), Staphylococcus gallinarum4株 (1.5%), Staphylococcus haemolyticus3株 (1.1%), Staphylococcus warneri2株 (0.8%), Staphylococcus saprophyticus1株 (0.4%) およびStaphylococcus caprae1株 (0.4%) の計8菌種265株が検出された.薬剤感受性試験は, オキサシリン (MPIPC), メチシリン (DMPPC), クロキサシリン (MCIPC), セファゾリン (CEZ), バンコマイシン (VCM) の5薬剤について実施した.その結果, オキサシリン, メチシリン, クロキサシリンの3剤耐性がS.hominisに1株, オキサシリン, メチシリンの2剤耐性がS.epidermidisに1株, メチシリン, クロキサシリンの2剤耐性がS.hominisに1株の計3株が耐性を示した.また, オキサシリン, メチシリンの2剤に中間耐性がS.epidermidisに2株, メチシリンの1剤に中間耐性がS.epidermidisに6株みられた.セファゾリンおよびバンコマイシンに耐性を示す株は認められなかった.methicillin-resistant CNS (MRCNS) はS.hominis2株が検出された.MRCNSのmec A遺伝子を調べたところS.hominisは2株とも保有していた.代表株65株中19株 (29.2%) がスライム産生であった.健康者の鼻腔内から分離されたCNSは, 臨床材料からのそれとは菌種分布に違いがみられた.
  • 手指消毒効果, 皮膚への影響, 使用感及びアンケート調査より
    福本 幸子, 大杉 ミヨエ, 星川 悠紀子, 藤田 せつ子, 横溝 実夏, 山本 道子, 定本 和恵, 辻原 佳人, 高橋 孝行, 森田 雅 ...
    2001 年 16 巻 2 号 p. 136-144
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    アルコール含有速乾性擦式手指消毒剤 (以下擦式剤) ウエルパス, ウエルアップ, ヒビソフトの手指消毒効果と皮膚への影響およびアンケート調査を行い, 対応策を検討した.
    I.アルコール含有速乾性擦式手指消毒剤
    手指消毒効果について, 消毒直後の平均指数減少値・減菌率は, 各擦式剤間で有意差がなかった (T検定) こと.手指の状態の変化について, 開始前と3, 5, 14日目において各擦式剤間で有意差がなかった (T検定) こと.使用感について, 使用時, 乾燥後とも各擦式剤間で有意差がなかった (x2検定) ことから, 各擦式剤の消毒効果, 手指の状態の変化, 使用感は同等であった.
    II.病室における手洗い・手指消毒に関するアンケート調査
    2000年1月全国大学病院, 神奈川県内基幹病院150施設で実施し, 100施設より回答を得た (回収率66.7%).院内感染対策について, 委員会は全施設で設置され, 担当者は専任が14施設, 兼任は72施設であった.院内感染対策加算は95施設で実施していた.手洗い・手指消毒用流水設備は, 病室前は設置していないが約半数で, 病室内は48施設で設置していたが, 洗面用と考えられた.擦式剤は81施設で全病室前に設置していた.手洗い・手指消毒時期は, MRSA肺炎患者の褥瘡処置時が最も多かった.手洗い方法は, 流水設備がある場合, 流水と擦式剤の併用は30%, 擦式剤が多いは24%であった.流水設備がない場合, 必ず擦式剤は59%で最も多かった.手洗い・手指消毒に関する意見は, 啓蒙活動の成果が上がらない, 手荒れ対策に苦慮している施設が多かった.
    当院では意識向上のため抜き打ち細菌検査を継続実施し, 皮膚保護剤で手荒れを防止している.
  • 山口 利子, 武田 千津, 中野 静子, 北尾 孝司, 篠原 信之
    2001 年 16 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    看護婦に対するアンケート調査の結果, 94.4% (167/177) が手荒れを経験し, その悪化対策や予防の目的で71.2% (126/177) がハンドクリーム等を使用していることがわかった.
    そこで, ハンドクリーム等の使用が手指付着菌の洗浄に対してどのような影響を及ぼすのかを知るために実験を行った.実験は日常的に多く使用されていたザーネクリーム®軟膏 (ZO), プライムローション® (PR) および皮膚保護材のデルマシールド® (DS) の3種類を手指に塗布して行った.塗布後に付着せしめた被験菌の洗浄効果は寒天培地接触法によって測定した.手指の洗浄は, 「無洗浄」「流水洗浄」「こすり洗い」の3通りの方法で行った.
    その結果, 手指に付着する菌数はハンドクリーム等の塗布の有無にかかわらず差はみられなかった.菌付着手指は「無洗浄」で寒天平板培地にスタンプを繰り返したところ, ZO, PR, DSを塗布したいずれの場合においても, スタンプを9回繰り返しても付着菌が検出された.また, 「流水洗浄」の場合は付着菌の減少はみられたが, 完全には除去されなかった.さらに「こすり洗い」では, 被験菌が大腸菌の場合には, PR, DSでは1回の洗浄で, ZOでは2回の洗浄で除去された.しかし, 被験菌が黄色ブドウ球菌の場合には, 洗浄を9回繰り返しても, PR, DS, OZ塗布のいずれにおいても付着菌が確認された.ハンドクリーム等塗布の手指に付着した菌は, 塗布しなかった手指に比べて除去されにくかった.
  • 糠信 憲明, 田爪 正氣, 築地 真実, 相川 浩幸, 浅見 聡
    2001 年 16 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    院内感染予防対策の一環として, 抗菌加工製品の使用が広まっている.我々は静電気防止対策として開発された銀メッキナイロン繊維布の各種微生物に対する抗菌効果を検討した.
    1)銀メッキナイロン繊維布に接触させた6種類の供試菌 (標準株のK. pneumoniae ATCC13883, C.albicans ATCC10259, E. coli ATCC25922, S.aureus ATCC25923および臨床分離株のmethicillin-resistant S.aureus, P. aeruginosa) の生菌数は接触時間の経過とともに減少した. この結果から, この実験に用いた銀メッキナイロン繊維布の抗菌作用が示唆された.
    2)人工汗, 蒸留水およびPBS中に銀メッキナイロン繊維布を浸漬させ銀濃度を定量した結果, 各溶液中に溶出された銀は時間の経過とともに増量傾向を示した.また, 人工汗中に溶出された銀は蒸留水, PBSに比して高い結果が得られた.
    3)銀濃度を定量した結果から一定濃度 (1ppmおよび5ppm) における硝酸銀溶液の抗菌効果を検討した.硝酸銀溶液による抗菌効果は銀メッキナイロン繊維布と比較して, 抗菌開始時間および抗菌に要する時間が遅延傾向を示していた.
    4)銀メッキナイロン繊維布の抗菌作用と各溶液中に溶出された銀との関係から, この繊維布の抗菌作用は経時的に溶出される銀の増量により発揮されると推察される.
  • 田中 初美, 山本 直美, 吉永 喜久恵, 丹野 恵一, 片岡 陳正
    2001 年 16 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究では看護婦・士のヘパリンロック管理の側面から, 96時間以上留置されたヘパリンロツクカテーテル42例の菌検出結果と1) 留置期間2) 静脈炎3) 留置中の管理との関連について検討した.42例の対象者の平均留置日数は5.28日間 (SD±2.29) であった.静脈炎について, Makiの定義16) する2つ以上の症状のあるものは1例 (2.4%), 1症状だけあったのは3例 (7.1%) でそれら4例の平均留置日数は, 4.3日間であった. 菌検出は3例 (7.1%) で, その平均留置日数は5.3日であった. 留置期間が4日間と5日間の2例の検体にはBacillus subtilis, 7日間の1検体にはStaphylococcus epideymidisが検出された. 刺入部位の管理のうち, 絆創膏の内側と外側の両側に湿潤がみられたのが6例 (14%) でうち2例に菌検出 (Bacillus subtilis) がみられた.宿主ファクターについては白血球値2600個/mm3のものに菌検出 (Bacillus subtilis) がみられ, それは化学療法中の患者であった. 静脈炎の徴候のあった4例のうち1例 (25%) に菌検出 (Bacillus subtilis) がみられていた.本研究の対象となった末梢静脈内のヘパリンロックカテーテルからの菌検出は, 長期化しているだけが理由でなく, それに伴う静脈炎や刺入部の管理, 宿主のファクターが関連して起こっていたと考えられた.このことから, 刺入部位の確実な観察管理の重要性, 静脈炎や宿主フクターがある場合には長期留置を避けるなどの対策をとる必要があることが示唆された.
  • 森兼 啓太, 小西 敏郎, 西岡 みどり, 谷村 久美, 野口 浩恵, 小林 寛伊
    2001 年 16 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    1998年11月より消化器外科手術後の手術部位感染 (SSI) サーベイランスを米国のNNISシステムに従って施行した. 本研究における解析の対象は当科で1998年11月から1999年10月までの12ヶ月間に施行された消化器外科開腹手術症例のうち, 創分類class IまたはII (清潔または準清潔創) の437例とした.感染制御チームの巡回により基礎データを収集し, SSIが疑われる症例は外科医が創を観察しCDCの基準に従ってSSIか否かを判定し, その原因を推定した. 一方, CDCのSSI防止ガイドラインのうち現状を改善することが可能と思われる対策として術後感染発症阻止薬の術前投与の徹底や創閉鎖・ドレーン法の工夫などの介入を行なった. SSI発生率は研究期間中全体で45/437 (10.3%) であったが, 経時的には, 前期4か月, 中期4か月, 後期4か月のそれぞれのSSI発生率は11.2%, 13.3%, 6.5%であり, 後期4か月において有意にSSI発生率の減少をみた.SSIの推定原因からみると, 皮下膿瘍が前期10例, 中期10例に対し後期は0例と有意に減少し, これが全体のSSI発生率の減少に寄与した.本研究期間中に施行した介入は理論的には皮下膿瘍を減少させるものであり, 介入の有効性が示された.
  • 職種, 年齢別の結果とブースター現象の解析
    河野 麻紀, 西園 憲郎, 木谷 光博, 河野 龍之助
    2001 年 16 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    平成11年2月から5月の間に, 全職員を対象にして2段階法でのツベルクリン反応 (以下2段階ツ反) を実施し, 職種別, 年齢別に, 最終反応径, BCG接種の既往, ブースター現象について検討した.
    2段階ツ反を実施した479名の職種の内訳は, 医療職92名, 看護職271名, 事務職116名である.結果は, 全体での最終反応の発赤径は36.3±19.7mmであり, 硬結径は13.9±10.0mmであった.最終判定の分布, 最終反応径の検討では, 職種間では有意な差は認められなかった.年齢間では, 30歳以下と31歳以上を比較すると, 最終反応径の発赤径と硬結径, 1回目と2回目の反応径の差の発赤径で有意な差が認められた.BCG接種の既往については, 419人 (医療職77名, 看護職239名, 事務職103名) から回答を得た.全体でBCG接種の既往がある者は366名 (77%), 既往のない者もしくは不明の者は53名 (23%) であった.BCG接種の既往では, 若年者でBCG接種の既往のない者が多かった.
    これらのことより, 若年者に対する結核菌の感染対策が重要であると考えられた. また, 全職員の約32%にブースター現象が見られ, 2段階ツ反を実施することが重要であると考えられた.ツベルクリン反応検査では, 結核感染の確定診断ができないため, 胸部X線写真撮影などの検査を正確に行なう必要があるが, 個人レベルの感染対策として, 2段階ツ反の最大反応径を知っておくことは重要である.
  • 矢野 邦夫, 加藤 泰教
    2001 年 16 巻 2 号 p. 175-178
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    救急隊隊員は交通外傷や吐血などの出血を伴う患者に救命処置を提供して搬送しており, 常に, 血液・体液曝露の危険に直面している. 一方, 搬送される患者におけるHBV, HCV, HIVなどの感染状況は不明であることが殆どであり, 救急隊隊員の安全が脅かされているのが現状である.
    今回, 我々は浜松市消防本部管轄の10救急隊を対象として平成10年1月1日より平成11年9月30日の1年9ヵ月間にわたって, EPINet (Exposure Prevention Information Network) を用いて血液・体液曝露を調査・解析した.本研究により救急隊隊員が如何なる状況で血液や体液に曝露し, どのような対策によって曝露を減らすことができるかが明らかとなった. また, 曝露した隊員に迅速な曝露後処置を行うためには, 患老を搬送してきた救急隊隊員への対応が病院感染対策の血液・体液曝露後プロトコールに含まれるべきであると思われた.
  • 岩沢 篤郎, 中村 良子
    2001 年 16 巻 2 号 p. 179-183
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    10%ポビドンヨード製剤中の添加物の違いによる殺菌効果・細胞毒性の差を検討した.その結果, 殺菌効果は製剤間の違いは認められなかったが, 細胞毒性に大きな違いが認められた.この毒性は, グリセリン, ポリビニルピロリドンでは認められなかったことから, 添加界面活性剤の違いと考えられた.
    ポビドンヨード原末の毒性は低いものの, 創傷部等に頻回に使用する際には, 添加物の毒性にも注意が必要と考えられた.
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