目的: 薬剤耐性菌感染症発生リスクが入院期間に依存せず一定であるかを調べ, 薬剤耐性菌感染症発生リスクと入院期間の関係から, 院内感染対策サーベイランスにおける分母のpopulation atriskの設定を提案する.
方法: 国立熊本病院の2000年度と2001年度の全入院患者を対象にして, 入院数あたりの感染症発生率と入院人日数あたりの感染症発生率を求めた.入院人日数あたりの感染症発生率について, 生存分析の手法を応用して感染症発生リスクと入院期間の関係を調べた.
結果: 1000入院あたりの発生率と10000入院人日あたりの発生率は一致した月別変動を示した.しかし, 年齢階級別にみたとき, 年齢が高いほど発生率が高いという年齢差の傾向は1000入院あたりの発生率においてより顕著であり, 10歳未満の小児と50歳以上でとくに2つの発生率の解離が見られた.10000入院人日あたりの発生率による感染症非発生率曲線と感染症累積発生率曲線は入院期間が16週を越えると横ばいになり, 感染症発生リスクが低下した.
結論: 年齢階級間の比較や複数の病院間の比較, 長期経年的比較を目的にする場合, 入院期間の影響が考慮される入院人日数あたりの感染症発生率を用いる必要がある.入院人日数あたりの感染症発生率を用いるとすれば, 入院期間が16週以上の者を除外して, 入院期間が16週未満の者を分母のpopulation at riskにするか, 層別するべきと考えられた.
抄録全体を表示