環境感染
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19 巻, 3 号
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  • 大城 知子, 橋本 丈代, 向野 賢治, 畝 博
    2004 年 19 巻 3 号 p. 347-350
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    病院感染サーベイランスとして実施しているSurgical Site Infections (SSI) のリスク要因について検討した. 対象は1999年4月から2001年8月までの手術例649例であった.
    手術部位別のSSI発生率をみると, 食道の手術と大腸の手術での発生率が高く, それぞれ11.6%, 8.8%であった. その他, 胃の手術が2.2%, 胸部の手術が1.5%, 胆嚢・肝臓の手術が2.5%であった. 胃の手術をReferenceとした時, 食道の手術はオッズ比が5.86, 大腸の手術はオッズ比が4.68と有意なリスクの上昇が認められた.
    手術部位別以外で, 有意なリスクの上昇が認められたのは, 創の汚染度が汚染. 不潔のもの (オッズ比=31.99), 手術時間が3時間以上と長いもの (オッズ比=3.21), American Society of Anesthesiologists Physical Status (ASA PS) Scoreが2以上のもの (オッズ比=2.92), 緊急手術 (オッズ比=14.22), イレウス (オッズ比=3.04) および手術中出血量が500ml以上のもの (オッズ比=2.90) であった.
    本研究では, 年齢, 性別, 貧血, 低アルブミン血症, 悪性新生物の手術などは, SSI発生のリスク要因になっていなかった.
  • 院内各部署における実態調査から
    横畑 千春, 山本 英津子, 新山 久美, 小野塚 美香, 奥 直子, 大井 睦美, 及川 泰子
    2004 年 19 巻 3 号 p. 351-355
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    Spauldingによるリスクカテゴリー分類では, クリティカル器材は無菌組織や血管系に使用するもの, セミクリティカル器材は粘膜, または傷のある皮膚に接触するもの, ノンクリティカル器材は健常な皮膚と接触または接触しないものと分類している. 本院では, 平成14年2月に院内の「感染対策マニュアル」を作成し, 「消毒と滅菌の指針」の中にリスクカテゴリー分類を明示した. しかし, 医療器材の消毒や滅菌の正しい方法が浸透していないと感じていた.
    今回, 感染対策看護部委員会では, 正しい処理が現場で実践できるようになる事を目的に, 医療器材の消毒・滅菌の現状把握と見直しを行なった. さらに, Spauldingによるリスクカテゴリー分類を基に, 各部署が共通に使用している器材について, 院内共通消毒・滅菌マニュアルを作成した. また各部署においては自部署管理器材のマニュアルを作成した. この実践経過を通して正しい消毒と滅菌の方法が全院的に周知・浸透した. このことから新たな器材導入時にも正しい消毒・滅菌の方法を選択できるようになった. その結果, 消毒・滅菌の質の改善, 更に無駄なコストの削減に繋がった.
  • 第1報看護師へのアブローチ
    黒須 一見, 太田 真弓, 市川 利枝, 小川 和子, 深澤 けい子, 江国 かほる, 茂木 玲子, 工藤 晶子, 吉山 明子, 根本 美恵 ...
    2004 年 19 巻 3 号 p. 356-359
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    都立荏原病院では, 平成12年4月にリンクナースを立ち上げ, 医師・看護師65人を対象に手洗い動作の観察と手洗い後の菌残数調査を実施した. この際, 正しい手洗い方法について理解されていないことや手洗いの1つ1つの動作が不十分であるなどの問題が見られ, 職員への手洗い方法の技術の習得と徹底が課題となった. そこで平成13年度は全病棟看護師270名を対象とし, 手洗いの学習会と手洗い行動の観察 (5回) 及び手洗い後の菌数調査 (パームスタンプ使用) を実施し, 培養後のパームスタンプをデジタルカメラで撮影し, フィードバックした. その結果, 看護師の手洗いの意識が高まり, 手洗い行動の改善につながった.
  • 阿部 弥生, 緒方 由美, 宮下 恵里, 稲富 雄一郎
    2004 年 19 巻 3 号 p. 360-364
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    背景・目的: 入院患者全例にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) スクリーニング検査を行う事や, 保菌が確認できるまで接触隔離予防策をとる事は現実的に困難である. そこで今回ハイリスク患者の早期抽出を目的とし入院時MRSAスクリーニング検出因子について検討した.
    方法: 対象は2002年2~8月の間に当救急センター集中治療室および脳疾患集中治療室へ入院し, 全例で入院時に鼻腔, 咽頭ぬぐい液ないし喀痰のMRSAスクリーニング検査が行われている70歳以上の患者. MRSAが検出された21例を検出群, 検出されなかった症例のうち無作為抽出された42例を非検出群とした. 両群について患者背景, 入院時の臨床像を診療録を元に後方視的調査を行い, 統計学的に比較した.
    結果: MRSA検出因子のうち強い関連がある (p<0.20) とみなされたものは高血圧既往, 糖尿病既往, 脳疾患, 病院や施設からの転院, 入院前ADL不良であった. 以上について多変量解析を行ったところ, 病院や施設からの転院のみが有意かつ独立したMRSA検出因子であった (p=0.008).
    考察: 病院や施設での集団生活の有無をスクリーニング検査の基準に含める事は妥当と考えられる. 今回判明した因子を有する患者に対しては, 入院時より保菌を意識した感染予防策に基づくケアや, ベッド配置, 看護師の受け持ち体制に生かすことがケアの質の向上に繋がると考えられる.
  • 鈴木 仁志, 貴田岡 節子
    2004 年 19 巻 3 号 p. 365-372
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    当院薬剤部では抗MRSA薬使用報告書の提出を義務化し, 迅速且つ正確な薬剤適正使用に関する患者情報の収集を可能にすると伴に, バンコマイシソ (vancomycin; VCM) 投与時において, 患者への有効性, 安全性の確保を目的として, 全投与患者を対象に初期投与設定を行うTDM解析システム (VCM-TDM解析システム) を確立した.
    2002年2月より薬剤の適正使用を目的として院内感染対策委員会を介し,
    抗MRSA薬使用報告書を作成し提出の義務化を行った. また同年9月からはTDM依頼を兼用できる書式とし, VCM投与時に全患者について初期投与設定を行うVCM-TDM解析システムを構築し, その有用性について評価を行った. 抗MRSA薬使用報告書提出の義務化により, 患者情報およびTDM解析に必須である情報が適確に入手でき, 抗MRSA薬の適正使用が可能となった. またVCM-TDM解析システム導入後, 血中濃度測定が初回で適正濃度範囲内に入った患者の割合は87, 5%を占め, 導入前後 (Non-TDM群/TDM群) における投与終了時のCRP値陰性化率および50%陰性化率の比較ではNon-TDM群22.7%, TDM群52.6%(p<0.001, x2-test), MRSA陰性化率ではNon-TDM群31.3%, TDM群81.3% (p<0.005, x2-test) と改善が認められ, 有効率は43.5%から81.0% (p<0.01, x2-test) と向上し, その有用性が示された.
  • 井上 哲郎, 松尾 収二, 種田 和清, 浅野 博, 島川 宏一
    2004 年 19 巻 3 号 p. 373-377
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    目的: 当院の院内感染対策委員会では職員のインフルエンザワクチン (以下ワクチン) 接種を毎年推奨しているが, 当院職員のワクチンに対する意識調査を行い, ワクチン接種の現状と課題について検討し, その結果を接種率向上のために役立てること.
    方法: 2002年4月にワクチン接種に関するアンケートを当院全職員に各部署毎無記名で行った.
    結果: 2001年度のワクチン接種率は56.7% (839/1486人) で職種により7-100%と異なった. 接種者のアンケート回収率は78.7%で, 接種理由は自ら希望81.5%, 上司のすすめ20.2%, 同僚のすすめ2.3%. 来シーズンのワクチンの希望は, する96.1%, しない2.3%であった. 一方, 非接種者の回収率は70.0%で, 非接種の理由は必要性を感じない39.3%, 希望したが日の都合があわず19.0%, 有効性への疑問18.8%, 副反応の危惧15.5%, 知らなかった8.4%, 当日の体調不良4.6%, 基礎疾患あり4.0%, 注射嫌い2.4%, 卵鶏肉アレルギー1.8%であった.来シーズンのワクチンの希望は, する33.8%, 有効性や副反応の情報が増えれば希望32.5%, しない28.9%であった.
    考察: 職員のワクチン接種率向上のためには, 接種の周知を一層図ること, 接種日を増やすこと, 有効性や副反応に関する啓蒙活動をとくに接種率の低い部署に対して行うこと, などに工夫が必要と思われた.
  • 内田 美保, 貫井 陽子, 森屋 恭爾, 新谷 良澄, 森澤 雄司, 新井 晴代, 木村 哲
    2004 年 19 巻 3 号 p. 378-382
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    病院感染症の約40%は尿路感染症であり, そのほとんどがカテーテル由来の尿路感染症であるとされる.東京大学医学部附属病院で2001年度に病棟移転の前後9ヵ月間にわたり施行した全病棟対象包括的サーベイランスでは, 病院感染症に占める尿路感染症の割合は旧病棟期4ヵ月間では31.9%, 新病棟期5ヵ月間で56.5%で, 尿路感染症発生率は1,000 devices days当り旧病棟期14.3, 新病棟期13.5と高値であった.
    カテーテル由来の尿路感染症を減らすことを目的として, 尿道カテーテル使用数・尿路感染症発生率ともに高値であった3病棟においてターゲットサーベイランスを施行した. 3ヵ月間の観察期間に現状における問題点を明確にした後, 2ヵ月間の介入, すなわち適応基準を定めなるべくカテーテルを使用しない, 閉鎖性カテーテルセットの使用, 検体採取に際して閉鎖性を維持すること, 2週間以内の定期的カテーテル交換は行わない等の処置の変更を行った後, 同病棟において後期3ヵ月間のサーベイランスを実施した. その結果, 介入により症候性尿路感染症は10分の1に, 無症候性細菌尿は3分の1に減った.
  • 吉永 正夫, 丸山 征郎, 小田 紘, 西順 一郎, 吉中 平次, 宮之原 弘晃, 阿南 隆一郎, 愛甲 孝, 熊本 一朗, 甲斐 敬子, ...
    2004 年 19 巻 3 号 p. 383-388
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    平成14年8月, 鹿児島大学医学部附属病院において入院中の患者から腸管出血性大腸菌O157感染症患者が発生した. O157を5例の患者から検出し, うち3例は有症状, 2例は無症状であった. 5例とも成人患者でありすべて異なる階の異なる病棟から1名ずつの発生であった. 小児の発症はなかった. O157を検出した5例を含め, 最終的に患者573名, 感染患者家族6名, 職員等425名, 計1,004名で便培養が実施されたが, O157が検出されたのは入院中の患者5名のみであり, 二次感染症患者は発生しなかった. 同時期に発生していること, 検出されたO157のパルスフィールド電気泳動所見が一致することより, 院内集団発生と考えられたが, 感染源, 感染ルートは特定できなかった.
  • 須賀 万智, 吉田 勝美, 武澤 純, 荒川 宣親
    2004 年 19 巻 3 号 p. 389-394
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    目的: ICU内院内感染による医療負担を死亡の増加と入院期間の延長という2つの観点から評価する.
    方法: 2000年7月~2002年5月, 厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業参加34施設から収集されたICU収容患者データから, 年齢16歳以上, ICU在室48時間以上1000時間未満, 退院時転帰とAPACHEスコアの情報が得られ, 他院ICU転出例を除いた7374件を対象にした. ICU内院内感染はICU入室後2日以降発症した感染症により定義して, ICU内院内感染なし (6696件), ICU内院内感染ありのうち感性菌感染症 (478件) と耐性菌感染症 (200件) の3群にわけた. ICU入室から退院までの各期間における死亡のオッズ比と生存者のICU入室からの入院日数およびICU在室時間数をAPACHEスコア別にもとめた.
    結果: ICU内院内感染なしを基準にして, APACHEスコアを調整した死亡のオッズ比 (95%信頼区間) は, 感性菌感染症が1.4 (1.2~1.6), 耐性菌感染症が1.9 (1.5~2.3) であり, ICU内院内感染による死亡の有意な増加を認めた. しかし, APACHEスコア別にみると, APACHEスコア20以下の群では有意であったが, APACHEスコア21以上の群では有意でなかった. ICU内院内感染による超過入院日数 (95%信頼区間) は, 感染菌感染症で12.0 (7.0-17.1) 日, 耐性菌感染症で27.6 (17.2~38.0) 日, 超過ICU在室時間数 (95%信頼区間) は, 感染菌感染症で165.7 (151.0~180.4) 時間, 耐性菌感染症で225.0 (200.4~249.5) 時間であり, ICU内院内感染による入院期間の有意な延長を認めた. しかし, APACHEスコア別にみると, ICU入室からの入院日数に関して, APACHEスコア25以下の群では有意であったが, APACHEスコア26以上の群では有意でなかった.
    結論: ICU内院内感染による死亡の増加と入院期間の延長を認めた. このようなICU内院内感染の影響はとくにAPACHEスコアの低い軽症例において有意であったことから, ICUにおける院内感染対策はAPACHEスコアの高い重症例よりもAPACHEスコアの低い軽症例においてより重要になると考えられた.
  • 須賀 万智, 吉田 勝美, 武澤 純, 荒川 宣親
    2004 年 19 巻 3 号 p. 395-400
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    目的: 術後患者の割合によるICU施設属性の違いをしらべ, ICU施設属性とICU内院内感染の関係を明らかにする.
    方法: 2000年7月~2002年5月, 厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業参加34施設から収集されたICU収容患者データから, 年間100件以上を登録した23施設について, 年齢16歳以上, ICU在室24時間以上1000時間未満, ICU退室時転帰とAPACHEスコアの情報が得られ, 他院ICU転出例を除いた12332件を対象にした.術後患者の割合により, 49%以下 (3ICU, 1983件), 50~79% (11ICU, 6438件), 80%以上 (9ICU, 3911件) の3群にわけ, 性年齢階級別分布, APACHEスコアの分布, ディバイスの分布, およびICU在室期間中の標準化死亡比と生存者のICU在室日数の平均を比較した. ICU内院内感染について, 比例ハザードモデルによる多変量解析から, 術後患者の割合別3群のハザード比をもとめた.
    結果: x2検定から, 年齢, APACHEスコア, 人工呼吸器, 中心静脈カテーテル, 尿路カテーテルに関して, 術後患者の割合別3群間の有意差を認めた. ICU在室期間中の標準化死亡比は (95%信頼区間) は, 50~79%群を基準にして, 49%以下群が1.3 (1.1~1.5), 80%以上群が0.8 (0.7~0.9) であり, 術後患者が多いほど低かった. APACHEスコアと術後患者の割合別3群による2元配置分散分析から, 生存者のICU在室日数の調整平均 (95%信頼区間) は49%以下群が6.4 (6.1~6.6), 50~79%群が5.3 (5.1~5.4), 80%以上群が4.7 (4.6~4.9) であり, 術後患者が多いほど短かった. ICU内院内感染について, 性, 年齢, APACHEスコア, 手術, ディバイスを考慮したハザード比 (95%信頼区間) は, 50~79%群を基準にして, 49%以下群が0.80 (0.68~0.96), 80%以上群が1.38 (1.21~1.58) であり, 有意な関連を認めた.
    結論: 術後患者の割合によるICU施設属性とICU内院内感染の関連を認めた. ICUサーベイランスデータを評価するにあたり, ICU施設属性を考慮する必要があると考えられた.
  • 小林 寛伊
    2004 年 19 巻 3 号 p. 401-403
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    1995年, 1996年に日本における全国的メチシリン耐性黄色ブドウ球菌Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA)病院感染症発生状況の調査報告 をおこなったが, その後, 連合王国, アメリカ合衆国等で厳しいMRSA感染症対策の必要性が叫ばれており, 日本の今後の対策を考えるにあたり, 再度全国的現状について調査が必要となった.
    結果は, 1999年度から2003年度の5年間において, 年間新入院患者数に対するMRSA感染症例の占める率は, 0.7~0.8%の間を推移し, 増加傾向は見られず, むしろ低減傾向が見られる. これは, 日本におけるMRSA病院(院内)感染対策が功を奏していることを示唆している.
  • 小林 寛伊
    2004 年 19 巻 3 号 p. 404-408
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    病院 (院内) 感染対策に興味を持って携わってくれるドクターを増やすことを目的として, 1999年より開始したインフェクションコントロールドクター (ICD) 認定制度は, 現在, 16学会, 3研究会よりなるICD制度協議会によって認定がおこなわれているが, 認定ICD (CICD) の数は3,948人となり, 数字の上では約300床に1人の割合となった. 然し, 日常業務における病院感染対策への関わりがいかにあるかの実態はつかめておらず, この点を明らかにして, 今後の全国的対策に資することを目的として調査をおこなった.
    結果は, 多くのCICDが日常業務において活発に感染制御活動に従事しており, CICDの制度は全国的病院感染対策の前進に大きく寄与している. 今後の課題としては, CICDの日常的活動の質を更に高めるための努力が必要である.
  • 掛谷 益子, 千田 好子
    2004 年 19 巻 3 号 p. 409-414
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    A総合病院の新規採用看護職 (46名) に対し, 標準予防策 (SP) に視点をおいた感染管理教育を実施した. その4-5ヵ月後, 教育効果をみるためナースの行動観察およびアンケート調査を行った. 行動観察調査 (他者評価) とアンケート調査 (自己評価) を比較した結果, 「湿性生体物質に触れる危険性がある時手袋・エプロンを使用した」の実施率は, 他者評価 (手袋使用: 5.1%, エプロン使用: 0%) より自己評価 (手袋使用: 70.5%, エプロン使用: 28.1%) が高かつた. 「使用済みの鋭利な物は専用容器へ廃棄した」は, 両評価とも98%以上と高かった. 手洗い実施率は, 注射前後, 排泄介助後などの看護場面において他者評価より自己評価が高率であった. スクラブ法による洗浄部位別手洗い実施率は, 手掌, 手背, 指間では他者評価の方が自己評価より高かつたが, 指先, 拇指, 手首は, 自己評価の方が他者評価より8-50%高率であった. このようにナースは, 自分のSP実施率を過大評価していた. スクラブ法およびラビング法による手指洗浄部位を観察したところ, 全ての部位においてラビング法よりスクラブ法による洗浄率が高く, 手背, 指先, 指間, 拇指に有意差を認めた. 新規採用ナースに対し, 感染管理の再教育をすることの必要性が明らかになった.
  • 唯野 貢司, 岩井 新治, 佐々木 晴見, 山原 和恵, 田中 恵子, 青野 奈穂子, 浦瀧 恵子, 斉藤 容子, 西村 昌秀, 加藤 正晴 ...
    2004 年 19 巻 3 号 p. 415-420
    発行日: 2004/08/10
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    市立札幌病院では, 廃棄物処理法に基づく運用として, 感染性廃棄物管理委員会を設置して2ヵ月に1回院内監視による分別状況の調査・指導などを実施し, 病院内の廃棄物管理の強化に努めてきた. また, ダイオキシン等の有害物質による大気汚染が問題となって以降, 焼却炉による自施設処理は中止し, 全て特別管理産業廃棄物処理業者にその処理を業務委託してきた. しかし, 感染性廃棄物の処理料が他の廃棄物処理費に比べ高額であり, 病院の経営上処理コストが大きな負担となっていることや, 医療廃棄物を極力院外に出さないことを前提に管理の見直しについて検討し, 中間処理装置を導入した. この導入により, 当院で排出している感染性廃棄物の約85%を院内処理でき, それに伴う経済効果をあげることが出来た. しかし, 医療廃棄物に関する院内での認識は, まだまだ不足している. 今後も, 廃棄物の正しい分別を徹底し, 医療従事者や取扱業者教育を充実させ, 感染性廃棄物を極力減量するととともに廃棄物排出事業者としての責任体制を強化することが必要であると考える.
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