環境感染
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21 巻, 2 号
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  • 坪井 良治, 新井 圭太郎, 住田 治子, 西尾 正也, 長谷部 恵子, 日置 祐一, 奥田 峰広
    2006 年 21 巻 2 号 p. 73-80
    発行日: 2006/06/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    近年, 手指衛生管理として, 速乾性擦式手指消毒薬の使用が推奨されている. しかし, 頻回使用では, 手荒れが誘発されるという問題があり, 湿潤剤を含有する速乾性擦式手指消毒薬の使用がより好ましい. そこで今回, 湿潤剤として合成擬似セラミドを含有した速乾性擦式手指消毒薬に, 手荒れ抑制効果があるかどうかを検討した.
    塩化ベンザルコニウム0.2w/v%と日局エタノール83vol%を含有する速乾性擦式手指消毒薬に, 湿潤剤として合成擬似セラミドを含有するSP製剤 (11例), 湿潤剤として天然保湿因子, プロピレングリコールを含有する市販品のNF製剤 (10例), 湿潤剤を含まないPL製剤 (10例) の3種の製剤を, 医療従事者を対象として, 3週間の比較使用試験を行った. 使用前, 1週後, 2週後の皮膚の状態を, 皮膚科医による皮膚所見, 角層水分量, 経表皮水分蒸散量, 写真撮影, アンケート調査により検討した. その結果, SP製剤は, 11例中8例 (73%) の被験者に手荒れ抑制効果が認められたのに対し, NF製剤は手荒れ抑制効果はみられず, 一方, PL製剤は, 10例中6例 (60%) の被験者に皮膚状態の悪化が見られた. また, SP製剤, NF製剤ともにべたつきがなく, 使用感も良好で, 使用後の作業性にも, 特に問題は認められなかった.
    湿潤剤含有速乾性擦式手指消毒薬は, 湿潤剤非含有製剤との比較において, 手荒れ抑制に有効であり, 中でも, 合成擬似セラミドを含有した速乾性手指消毒薬が, 特に手荒れ抑制効果が高く, 使用感が良好で, 作業性に問題はなく, 手指衛生管理上の使用に適していることが示唆された.
  • 山内 勇人, 河野 恵, 大西 誠
    2006 年 21 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2006/06/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    インフルエンザウィルス感染症は, 病床運営や患者生命にも関わる重篤な院内感染症の一つである. 当院は240床中80%がリウマチ性疾患, 中でも関節リウマチ (RA) が大多数を占めるRAの専門病院である. 2002年度の全国的なインフルエンザの大流行時に, 当院でもインフルエンザ患者が急増した. その主たる原因をエレベーター内での飛沫感染と考え, 入院患者, 職員, 外来患者や面会人を含む病院全体での厳格なサージカルマスク着用による飛沫予防策を緊急導入し, アウトブレークを途絶することに成功した. その経験から, 当院ではワクチン接種の推進に加え, 冬期のサージカルマスク対策を継続して行っている. 更には, 外来有熱患者の受付でのトリアージを2004年度より導入し, 飛沫予防策の強化を図っている. その結果, 入院患者でのインフルエンザ発生は, 2003年度0人, 2004年度は3人と良好な結果である.
    当院のようなハイリスク集団におけるインフルエンザの院内感染対策において, ワクチン接種の重要性は言うまでもないが, 病院全体での厳格な飛沫予防策の併用は極めて有用である可能性が示唆された.
  • 寺田 喜平, 平田 早苗, 丸橋 民子, 角田 美代子, 東田 志乃, 千田 美智子
    2006 年 21 巻 2 号 p. 87-90
    発行日: 2006/06/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    看護師におけるインフルエンザの感染経路や予防接種の有効性, 経年連続接種の効果を実証するために, 2004/05年シーズンの大学附属病院におけるインフルエンザ感染のコホート調査を実施した. 看護師539名を対象に, ワクチン接種者は492名, 未接種者は44名, 接種率は91.8%であった. インフルエンザ診断キットによる確定罹患者は32名あったが, そのうちワクチン接種者の罹患率は6.1% (30/492名), 未接種者での罹患率は4.5% (2/44名) であった.罹患者25% (8/32名) が他人にうつしたと感じ, その中に患者も1名含まれていた. 経年連続接種と罹患率の関係はそのシーズンのみ接種12.3% (8/65名), 2年連続で接種5.4% (14/261名), 3年連続4.9% (8/164名) であった. またその罹患者のなかでB型インフルエンザの占める割合は, それぞれ87.5% (7/8名), 62.3% (9/14名), 37.5% (3/8名) と連続接種により有意に減少した. 21-40歳における検討では, 年齢が高いと罹患率は低いという相関はなく, また病棟および外来勤務について罹患率に差はなかったが, 家庭内で子どもや夫から感染する例が多かった. 年齢に関係なく, インフルエンザワクチンを経年連続接種するとともに, 家族に接種を勧めることが大切であると考えられた.
  • 小川 謙, 横岡 真由美, 石角 鈴華, 斉藤 容子
    2006 年 21 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2006/06/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    N95マスクの装着に際し, フィットテスト, フィットチェックによるトレーニングが重要であると言われている. 今回, 我々は自己流で装着した場合, どの程度正しくマスクがフィットしているのかの実態調査を行い, また集団指導でもフィットチェック及びフィットテストを含む実技指導は効果があるかを検証した. その結果, S病院に勤務する職員79名の内61%が, 自己流ではマスクがフィットしていなかった. さらに, フィットしなかった職員を「指導群」「非指導群」の2群に分け, 集団実技指導の効果を検討したところ,「指導群」において有意にN95マスクがフィットするようになつた (P<0.05). このことから, 指導の重要性が明らかとなり, 方法は個別指導でなくとも, 集団指導でも効果があることが示唆された. 一方, 指導した群においても36%がフィットしなかった. これらの職員に対しては, 個別指導を加え, さらに密着性が得られない場合は, フィットするマスクの選択ができるよう, 数種類の常備が必須である.
  • 尿道留置カテーテル使用に関する段階的手法と間欠導尿時の消毒廃止について
    田島 愛, 河内 ゆかり, 東 初美, 北島 敬子, 菅原 園子, 稲富 雄一郎
    2006 年 21 巻 2 号 p. 96-102
    発行日: 2006/06/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    急性期脳疾患における尿路感染予防対策として, 尿道留置カテーテル抜去基準の標準化は重要である. また尿道留置カテの早期抜去促進に伴い増加する間欠導尿時の消毒の是非は未確定である. そこで, 検討1. 尿道留置カテーテル抜去基準排尿管理段階的手法による排尿管理と, 検討2. 間欠導尿手技の消毒廃止を含む標準化を導入した.両施策の妥当性を検証した. まず検討1では当病棟で作成した尿道留置カテーテル抜去基準アルゴリズム導入前後の尿路感染症発生率を比較した. この結果, 排尿管理アルゴリズム導入後に100在室日数あたり尿道留置カテーテル使用率は前年度同期と比較して10.4から12.8へと有意に増加した (p<0.001).しかし, 1000在室あたり尿路感染症発生率は5.5から4.1と減少傾向 (p=0.275) を認めた. 検討2では間欠導尿手技の消毒廃止を含む標準化導入前後での間欠導尿患者を消毒群135例, 非消毒群50例の2群とし, 尿路感染症発生率を群間比較した. この結果, 消毒群と, 非消毒群の尿路感染症発生率は消毒群30例 (22%), 非消毒群13例 (26%) であり, 有意差は認めなかった (p=0.589).
    今回の両検討は尿路感染予防策として妥当と考える. 今後もこの取り組みを継続し, さらなる疾患の特性に基づいた尿路感染予防策について考えていくことがケアの質の向上につながると考える.
  • 飯島 佐知子, 針原 康, 小西 敏郎, 谷村 久美, 福田 敬
    2006 年 21 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 2006/06/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    手術部位感染 (SSI) サーベイランスを行ってきた病院において, 大腸切除術症例を対象に感染予防対策の費用効果分析を行った.
    対象は, サーベイランス導入期の1999年の1月から6月までと安定期の2002年7月から12月までに入退院した大腸切除術症例とし, 診療記録より対象症例の属性や感染の有無等を調査した. 各期間の感染対策について感染管理専門看護師に聞き取り調査を行った. 患者1人あたりの感染対策費および診療報酬を算定した.
    感染予防対策で1999年から2002年までに変更された主な項目は, クリニカル・パスにより抗菌薬の種類と投与タイミング, 決められた投与期間を厳守することと, 手術創部に対して生理食塩水による皮下洗浄法を取り入れたことなどであった. 1人あたりの感染対策費は, 1999の13,898円に対して2002年には7,008円に削減され, その差額は, 6,890円であった. 発生群と非発生群の術後の診療報酬の差額は, 1999年で738,000円, 2002年で528,000円であった. 1999年の大腸癌手術症例の発生率は28.6%, 2002年は17.1%であった. 感染予防対策に要する一人あたりの費用は, 導入期よりも安定期が低く費用効果的であると考えられた.
  • 小椋 正道, 矢野 久子, 加藤 宗博, 山本 俊信, 中村 敦, 岡本 典子, 脇本 幸夫, 高阪 好充, 小柏 均, 多和田 行男, 椙 ...
    2006 年 21 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 2006/06/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    自宅環境に起因すると推測された原因不明の発熱と呼吸困難の患者を2名経験した. 共に患者宅の超音波式加湿器から検出された微生物と患者血清間で沈降反応が陽性を示し, 加湿器肺が強く疑われた. この2名の患者の共通点は加湿器を洗浄せずに水を継ぎ足すのみで使用しており, 加湿器内部が肉眼で確認できるほど汚れていたことであった. このため, 在宅における加湿器肺の発症と加湿器の微生物汚染には深い関係があると推測された. そこで, 加湿器内に加湿器肺の原因微生物を人工的に接種し, 加湿器内における原因微生物の増殖状況の調査および在宅で実施できる洗浄方法による洗浄試験を行った. その結果, 何らかの原因で加湿器内に微生物が混入し, 加湿器の洗浄.消毒を行わずに使用すると, 加湿器水の入れ換えを行っても入れ換え後5日目には加湿器内に残存した微生物が増殖し, 入れ換え前の汚染状況と同等もしくはそれ以上の汚染状況となることが明らかとなった. 加湿器の洗浄試験では水洗いや中性洗剤による洗浄では菌の残存が認められ, 次亜塩素酸ナトリウム液0.01%に2時間浸漬した場合は生菌の検出は認められなかった. 在宅における加湿器肺の発症を未然に防ぐためには, 加湿器本体に洗浄の必要性を記載するなど加湿器の定期的な洗浄が必要であることを広く世間一般に認知させること, 洗浄の際には定期的に次亜塩素酸ナトリウムを用いること, が非常に重要であると推察された.
  • 永山 洋子
    2006 年 21 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 2006/06/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    2003年11月に, 千葉県は, 県下15保健所職員を対象に, インフルエンザワクチン接種を行った. その後, インフルエンザ流行が終了した2004年3月末に, インフルエンザワクチン接種を受けた保健所職員と, 受けなかった保健所職員の両者を対象に, インフルエンザに関する質問表を配布し, 各質問項目に対する無記名回答をお願いした. ワクチン接種者の総数は424名 (男性148名, 女性224名, 性別記載無し52名), 未接種者は82名 (男性29名, 女性38名, 性別記載無し15名) であった. ワクチン注射後の冬季期間中に, 発熱有りと答えた人は, ワクチン接種者424名中30名 (7.1%) (男性6名, 女性17名, 性別不明7名), ワクチン未接種者82名中12名 (14.6%) (男性5名, 女性7名) であり, ワクチン未接種者群に, 発熱率が約2倍高く, その数値に有意差がみられた (χ二乗検定, p<0.05).さらに, インフルエンザワクチン注射部位の局所反応 (上腕部) について検討したところ, 局所反応があったと答えた人数は, 男性148名中18名 (12.2%), 女性224名中80名 (35.7%), 性別不明4名であり, 注射後の局所反応の有症率には, 男女間で有意差を認めた (χ 二乗検定, p<0.001).以上の結果より, インフルエンザワクチンは, 流行時の発熱回数を低下させたが, 女性の局所反応については, 今後も注意を要するものと思われた.
  • 井上 久子, 石崎 京子, 山根 園子, 瀬戸 美奈子, 樋口 昌孝, 新庄 正宜, 高野 八百子, 中村 くに子
    2006 年 21 巻 2 号 p. 120-125
    発行日: 2006/06/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    当院小児科乳児室は18床の多床室で, ほとんどの患児が易感染状態である. 2001年から3年間のデータを分析し具体的な対策として, 乳児室の特徴を考慮したスタンダードプリコーションの実行と病原体の特性を考慮した感染予防対策の2つの視点で取り組んだ結果, 感染予防に効果的であった. 視点1. 乳児病棟の特性を考慮したスタンダードプリコーションの徹底: 医療従事者に対し, 手指衛生や一患者毎のガウンテクニックを徹底した. 又手技の統一のため, ガウンの着脱方法, オムツ交換手技のマニュアルを作成した. 面会者に対し, 感染予防マニュアルを作成し統一した指導を行った. 結果, 手指衛生の回数の増加や確実なオムツ交換・ガウンテクニックが徹底された. 視点2. 病原体の特性を考慮した対策: RSウイルス・ロタウイルスに関しては, 感染兆候の早期発見, ウイルス抗原検出前の早期対応を徹底, 感染同時発生がなくなり, 感染者数は減少した. 無症状の保菌者に関する感染対策が中心となるESBL (extended spectrum βlactamase) 産生の病原性大腸菌O25について, パーティション隔離, 専用出入り口の設置, 医1師・看護師の専属チーム化を実施した. 結果新規陽性患者は減少した. 他の感染症への対策が徹底された結果, MRSAの新規陽性患者は減少した. 感染管理サイクルに基づいて実践し, 病棟だけでなく病院全体で取り組んだ事が有効であったと考える.
  • 在宅療養時の感染予防のためのパンフレットの試作
    三田 由美子, 藤田 由紀子, 高崎 晴子, 雨宮 みち, 竹村 弘
    2006 年 21 巻 2 号 p. 126-129
    発行日: 2006/06/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    癌化学療法を受けた患者は骨髄抑制などによって易感染状態にあり, 在宅療養のためには感染予防対策に関する綿密な指導が必要である. 今回我々は産婦人科病棟で癌化学療法を受けた患者を対象にして, 感染予防に関する指導内容を見直すとともにパンフレットを用いた指導を開始し, その効果を検討した. まず在宅での感染予防についての問題点を患者に面談することによって洗い出した.(1) 食事に関すること,(2) 清潔に関すること,(3) 外出に関することなどの問題点があげられ, これらを基にパンフレットを作成した. これを用いて感染予防の方法を具体的に説明するとともに, 手洗いの方法については実演指導を行った. その結果, 患者の行動に1) 外出から帰宅後, 調理の前後などに手を洗うようになった, 2) タオルを個人で専用化するようになった, 3) 毎日シャワー, 入浴, 清拭などを行えるようになった, 4) 外出時は必ずマスクを着用するようになったなどの変化がみられた. また, 家族についても, 1) 患者と同様に手洗いをするようになった, 2) 家事などで患者に協力するようになったなどの効果が見られた. また, パンフレットを作成したことによって, 医療従事者の感染防止指導法を標準化することができた. さらに個人にあわせた指導を追加する事によって, より効果的な指導が可能になり, 家族の理解や協力も得られ易いと考えられた.
  • 玉澤 佳純, 安倍 敏, 玉澤 かほる, 國島 広之, 金光 敬二
    2006 年 21 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2006/06/30
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    東北大学歯学部附属病院では, 院内感染対策を具体的に実践する組織として, 従来からある院内感染対策委員会, 院内感染対策専門委員会に加えて, 2003年3月にインフェクション・コントロール・チームを発足させた. そして, 同年9月より, 各治療室および関連部署の巡回を開始し, 翌年3月までの期間に月2回のペースで, 全ての治療室および関連部署, 計25箇所を巡回した. 当病院でのインフェクション・コントロール・チームによる巡回は, 国立大学歯学部附属病院としては最初であり, 今回, 巡回の概要と得られた成果について報告した. 巡回の結果, 改善された主な成果を下記に示す. 1. 車椅子患者が容易に出入りができるように, 治療室内の通路幅が確保された. 2. 滅菌後の器具を, 滅菌袋から出してテーブルの上に置いている治療室が多かったが, 使用直前に滅菌袋から取り出すように改善された. 3. 手洗い場の水の飛散防止用の遮蔽板が設置された. 4. 医療廃棄物容器が統一され, 感染性廃棄物は蓋付きの容器, 非感染性廃棄物は蓋なしの容器, 鋭利な物は耐貫通性容器となった. 5. 放射線室の手洗い方法が, ベースン法 (本院で唯一残っていた) から, ポンプ式消毒剤とペーパータオルに改善された. 6. 放射線技師, 臨床検査技師のゴム手袋の装着が励行されるようになった. 7. ごみ袋の変更により, 経費節減ができた. 8. ICT巡回のまとめを発行して, 治療室および関連部署に配布し, 情報の共有化を図った.
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