環境感染
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22 巻, 3 号
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  • 白石 正, 仲川 義人
    2007 年 22 巻 3 号 p. 165-169
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    輸液内への細菌混入は, 薬剤混合時やライン交換時などで生じ, カテーテル関連血流感染の原因 となることが知られている. そこで, 輸液中に細菌が混入した場合の細菌の増殖動向を検討した. 輸液は電解質輸液2種類, アミノ酸輸液3種類, 脂肪乳剤配合アミノ酸輸液1種類および50%ブドウ糖液1種類の合計7種類を使用した. 被験菌はE. coil, S. marcescens, P. aeruginosa, S. aureus, およびS. epidermidisを使用し, これらの細菌を一定菌量に調整した菌液をそれぞれ各輸 液に添加し, 6, 12, 24時間後にサンプリングを行い, SCD寒天培地に接種し, 35℃24時間培養 後コロニー数を計測した. この結果, 脂肪乳剤配合アミノ酸輸液中では, いずれの被験菌も経時的に増殖が認められたが, 50%ブドウ糖液中では6時間以降, 増殖は認められず, pHおよび浸透圧が関与しているものと考えられた. その他の輸液中では, 菌種により異なりP. aeyuginosa, S. auyeus, およびS. epidermidisでは48時間後に増殖は認められず, E. coil, S. marcescensでは増殖が認められた. このことから, 輸液の組成, pH, 浸透圧に加え, 細菌種の性質も関与すると考えられた.
  • 戸島 洋一, 遠藤 洋子, 松田 俊之, 河井 良智, 服部 万里子
    2007 年 22 巻 3 号 p. 170-174
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    2001~2005年に多剤耐性緑膿菌 (MDRP) が検出された当院入院患者について, 属性となる危険因子を検討するため, 同時期に入院してイミペネム・アミカシン・シプロフロキサシンに感性の緑膿菌を検出した患者を対照とした症例対照研究を行った. 調査期間中の緑膿菌検出数は2,509株 (患者数1,712人) で, うちMDRPを検出した患者は44例 (2.57%) であった. 検討した危険因子16項目のうち, オッズ比 (OR) が1以上で有意 (χ2検定) となったものはカルバペネム薬使用歴, 経鼻胃管・胃瘻チューブ, MRSA陽性, アミノグリコシド薬使用歴, 検出までの入院期間30日以上, 気管切開・挿管, 中心静脈カテーテル留置, 尿路カテーテル留置の8項目であった. さらにロジスティック解析を行ったところカルバペネム系薬使用歴 (OR: 7.94, 95%信頼区間2.60-24.3, p<0.001) と経鼻胃管・胃瘻チューブ (OR: 4.51, 95%信頼区間1.35-15.1, p=0.014) の2因子が有意となったMMDRP感染対策として, 抗菌薬ことにカルバペネム系薬の適正使用, 経鼻胃管・胃瘻チューブ, 栄養剤注入に用いる器具等の衛生管理が重要であると考えられた.
  • 磯貝 恵美子, 西川 武志, 磯貝 浩, 磯貝 なゆた, 榑林 陽一, 林 俊治
    2007 年 22 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    手洗いは病原微生物の拡散をコントロールするだけでなく, 感染を防ぐ有効な手段である.本研究では, 家庭内での手洗いの除菌効果を小学生とその家族における日常的手洗い法と衛生学的手洗い法で比較した. 手洗い前の手指の細菌数は小学生 (153.6±36.3) では親 (1219.9±763.6) に比べて有意に少なかった (p<0.05). 児童と成人で水洗による菌数の減少はなかった. 成人では石けんによる手洗いで細菌数が減少した. 衛生学的手洗いは児童および成人で効果があった. 家庭内では風呂場, 調理台などから多数の細菌が検出された. 以上の結果から, 適切な手洗い法によって, 手の表面の細菌数をコントロールできることがわかった. 感染性疾患の家庭内伝播の防止に成人の手洗いおよび生活環境の改善は効果的である.
  • 佐多 照正, 岩下 佳敬, 石田 和久, 長谷川 直美, 鳴海 由希子, 末田 英志郎, 古賀 淳子, 常磐 光弘, 西園 敏幸, 立石 繁 ...
    2007 年 22 巻 3 号 p. 181-185
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    2004年4月より緑膿菌の耐性化を予防すべく, ICT (Infection Control Team) が院内での抗菌薬の使用状況や菌の抗菌薬感受性状況を定期的な回診により調査し, その結果をタイムリーに担当医に報告することで抗菌薬の適正使用に取り組んだ.
    その結果, 抗緑膿菌薬のimipenem/cilastatinの平均使用期間は使用割合の変動に関係せず, 年次ごとに低下し, 2003年度では11.2日であったものが, 2005年度では8.2日まで短縮した. また, 院内緑膿菌のimipenemに対する感性率は, 使用本数に影響されず年次ごとに上昇し, 2003年度では平均65M2% (75株/115株) であったものが, 2005年度で平均86.9% (113株/130株) を示した. また, 他の抗緑膿菌薬においても比較的高い感性率を維持できた.
    今回の結果から, ICTによる回診等を通じた抗菌薬の適正使用についての積極的な介入は耐性菌出現のコントロールにつながることが考えられた.
  • 小林 寅哲, 福井 康雄, 寺澤 優代, 小野 憲昭, 公文 登代, 岡崎 由紀, 伊藤 隆光
    2007 年 22 巻 3 号 p. 186-189
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    2005年5月から2006年4月の1年間の入院患者のうち, 当院で定める血液培養実施基準である白血球数が≧12,000/μL, CRP≧1mg/dL, 体温≧37℃ のいずれかを満たした125名を対象とし, infection control teamメンバーの医師より主治医に血液培養の実施を要請した. その結果, 血液培養が実施された例は49例で, そのうち培養陽性は15例 (31%) であった.
    陽性検体からの検出菌はいずれも1菌種で内訳はStaphylococcus aureus (MRSA) 4例, Escherichia coli3例, coagulase-negative Staphylococcus, Enterococcus faecalis, β-hemolytic Streptococcus, Klebsiella pneumoniae, Klebsiella oxytoca, Acinetobacter lwoffii, Clostridium perfringens, Candida glabrata各1例であった.
    血液培養陽性例と陰性例での比較では, 白血球数, CRP, 体温などに大差はなく, 臨床症状に特有の傾向は見られなかったが, 基礎疾患では陽性例に糖尿病患者が多かった. また採血までの入院日数は血液培養陽性例でやや長かった.
    以上の事から, 血液培養が実施されずに血流感染およびその兆候を見落とす可能性があることが明らかとなった. 院内感染対策の面からも患者状態を考慮した血液培養の実施とモニタリングが必要であると考えられた.
  • 平井 久美子, 中島 百合, 高橋 晶, 開道 貴信, 太田 勝美, 中川 栄二
    2007 年 22 巻 3 号 p. 190-192
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    クロイツフェルト・ヤコブ病 (Creutzfeldt-Jakob disease: 以下CJDと略す) が疑れる患者の脳外科手術を行うため, 手術室環境面への安全を重視した対応を行った. 全身麻酔下で慢性硬膜下血腫除去術を行ったが, 環境面への対策として, 手術室内全面にオイフを敷き, 使用する機器・器械類にも全て血液飛散の防止対策を行った. 手術器具はディスポ製品を優先的に使用し, バイポーラーや手回しドリルなどのリユース器械は廃棄した. 術中の器械出しでは, 血液汚染区域が最小限になるように工夫した. 麻酔科医や外回り看護師は手術室内で血液飛散の可能性があるためガウンやフェイスマスク等で防護し, 術者と器械出し看護師は更に厳重な装備を行った. また手術室内の汚染区域拡大を避けるために, 行動範囲と役割分担を明確にした. 手術室の中で出たゴミは全て感染性医療廃棄物とし, 全て焼却処分とした. 手術室の清掃は, 環境面全体にオイフを敷いて汚染の防止をはかったため, 通常の消毒液での清拭とした. 今回は, 環境面への汚染防止を厳重にし, 術中の使用器材は全て廃棄したため確実な感染防止を行えたが, 今後コスト面もふまえたより安全な感染管理の対応を考慮する必要がある.
  • MRSA検出患者を中心に
    丸山 久美子, 藤井 裕史, 高橋 利弘, 伊藤 清隆
    2007 年 22 巻 3 号 p. 193-196
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    近年, 院内感染対策の必要性が叫ばれており, 病院全体として取り組まなければならない問題である. そのための中心機関として感染対策委員会 (Infection Control Committee: 以下ICC) やInfection Control Team (以下ICT) を組織する必要がある. 当院においては2003年8月よりICTによる病棟巡視を開始し, 院内感染防止に取り組んでいる. 病棟巡視では院内感染の有無, 抗菌薬および消毒剤の適正使用等の監視を行っている. 今回, Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) による起炎菌率の調査及び検出材料別起炎菌率を調査した. また病棟巡視実施前後における入院患者数, MRSA検出患者数・検出件数, 抗MRSA薬使用患者数・投与日数, 抗MRSA薬使用量およびコストを比較した. その結果, 病棟巡視実施後は, 実施前に比べ, 抗MRSA薬の投与日数の有意な短縮がみられ, 適正使用にもつながっていると考える. また, 抗MRSA薬の使用量の減少により約270万円のコストダウンができたことからも, ICTでの病棟巡視は有益であると考えられた.
  • 須賀 万智, 吉田 勝美, 武澤 純
    2007 年 22 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    院内感染対策の活動の基本は院内感染サーベイランスにある. 院内感染サーベイランスシステムは日常的に継続的に運営されなければならず, 現状においてデータ収集/登録作業が現場のスタッフの負担になっている. 近年の情報技術の進歩により, 入退院管理データ, 医事会計データ, 検査データ, 画像診断データ, 薬剤処方データ, 患者カルテ情報などを電子的データとして管理する施設が増えている. このような病院情報システムを院内感染サーベイランスに活用できれば, データ収集/登録作業が省力化され, 現場のスタッフの負担が軽減されると期待される. 本稿では, 既存の文献のレビューから, 院内感染サーベイランスにおける病院情報システムの活用の事例をまとめた. 病院情報システムを活用した院内感染サーベイランスの実現にむけて解決すべき課題として, 1) 院内感染率の算出の方法を確立すること, 2) 病院情報システムに管理されているデータをどのように取り扱い, 院内感染率を算出するか, 具体的なルールを定めること, 3) データの収集, 解析, 報告の作業を日常的に継続的に実施できるような体制の整備を進めること, 4) 院内感染率の相対的評価 (施設間比較) を実現するためにデータの標準化をおこなうことが挙げられた.
  • 池田 恵, 堀 賢, 三澤 成毅, 小栗 豊子, 網中 真由美, 李澤 康雄, 坂田 梢, 伊藤 輝代, 平松 啓一
    2007 年 22 巻 3 号 p. 203-210
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    平成17年5月に当院において, バンコマイシン (VCM) の最小発育阻止濃度 (MIC) が培養後24時間では4μg/mLであるが, 48時間後では16μg/mLを示す腸球菌が入院患者1名の中間尿より検出された. この株は遺伝子検査でVanB型バンコマイシン耐性腸球菌 (vancomycin-resistant Enterococcusfaecium;VRE) と確定された. 我々は, 微生物検査室からこの報告を受けた時点で潜在的なVRE伝播拡散の可能性を想定し, 対応計画の立案, 実施を開始し, 同室患者1名及び初発患者と同時期に入院していた患者91名にVREスクリーニングを実施した.その結果, 同病棟内で新たに4名の患者の尿または便から同様の耐性パターンを示すVREが検出され, VREの局地的流行伝播が起こったと判断した. 以後, VRE拡散防止計画に基づいた予防策を迅速に実施し, 局地的流行伝播を早期に終息させることができた.
    本例はMicroScan WalkAwayで薬剤感受性検査を行うブドウ球菌属菌株及び腸球菌属菌株について, VCMの薬剤感受性を通常の判定法に加えて, 48時間後にも判定を行うことにより, 常法では検出されないVCM低感受性菌を検出し, 微生物検査室と感染対策室が密接な連携を図り, 更に医療安全管理室と協働して病院全体で適切な感染対策に取り組んだ結果, アウトブレイクへ進展する前に, 新たなVREの伝播を防止することができた事例である.
  • 野村 賢一, 本多 領子
    2007 年 22 巻 3 号 p. 211-213
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    滅菌工程を迅速に管理するため, 48時間判定の長時間判定用生物学的インジケータ (Attest® 1262, 3M社) から3時間判定の短時間判定用生物学的インジケータ (Attest® 1292, 3M社) に製品を変更したところ, 3件の陽性事例を経験した. 陽性を示した生物学的インジケータの調査の結果, 生物学的インジケータを包むタオルに含まれている蛍光物質が高圧蒸気滅菌処理によりタオルから染み出し, インジケータの表面に付着して, 培養判定装置 (Attest® 290オートリーダー, 3M社) の判定に影響を与えたと考えられた. 陽性事例の経験から, テストパックに用いるタオルは, 蛍光物質 (染料) を含まない無蛍光のものあるいは, 蛍光物質が転写しないタオルを厳選すること, そしてタオル洗濯用洗剤についても蛍光増白剤を含まないものを選ぶことが必要である.
  • 手指衛生遵守の観点から
    山内 勇人, 久世 由姫, 佐伯 真穂, 藤原 真由美, 名本 千由里, 勝間 敏子, 閏木 由美子, 藤堂 信子, 戸村 美名子, 遠藤 ...
    2007 年 22 巻 3 号 p. 214-218
    発行日: 2007/09/25
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    当院は743床の精神科病院である. 精神科病院においては, 施設構造上, 閉鎖的環境が多く, そのため接触・交差感染の温床となる「ドア」が数多く存在するなど, 特殊な環境下にある. そして, 日常業務の中で頻回に行う「鍵を用いドアを開閉する一連の動作」を1行為と捉えるべきである. 細部に行き届いた環境整備や速乾性アルコール製剤による手指消毒を併用すると同時に, 鍵自体の汚染を管理することは手指衛生の遵守を行う上で不可欠となる. そこで, 手指衛生遵守の観点から, ドア開閉の際に用いる「鍵」に焦点を当て, 当院職員の鍵に対する清潔意識や取り扱いの状況を調査した. 清掃業者を含む全職員457名を対象に開催された院内感染対策研修会に参加した369名 (80%) に対し, 無記名・選択形式で施行した. 回収率99.2% (366/369).
    「鍵」および「鍵を入れてあるポケット」を「不潔」と答えた職員は, それぞれ71.6%, 68%であった. 鍵の洗浄については, 「必ず及び大体毎日洗浄」している者は33.1%であった. 洗浄方法については, 回答が得られた143名の解析から, 「石鹸洗浄」などの推奨される洗浄有効が確認された職員は49%であり, 「速乾性アルコール製剤」と「アルコール綿清拭」をそれぞれ16.1%, 5.6%認めた.
    今回のアンケート結果から, 当院職員の「鍵」に対する院内感染対策上の意識は比較的高いと考えられた. しかし, 鍵洗浄の現状や洗浄内容の検討から, さらなる意識付けと洗浄方法の指導が必要と思われた.
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